トンネルの怪 1
ミナがくねくねを無意識に回避している間にも、ミナの視線の先にトンネルが見えてきた。ここを通り抜けた先にミナの家がある。
トンネルはそれなりに長く、入口に差し掛かった時から電気が壊れているのか中の様子は伺えない程に暗かった。
「これじゃあ先に進めない…」
ミナが困惑混じりに呟いた。
トンネルを通らずに迂回するルートもあるのだが、それだとかなり遠回りになる。
一刻も早く帰りたいミナはスマートフォンを懐中電灯代わりに進むことにした。
もちろん、何も起こらないなんて思っていない。
こつこつとミナのローファーが地面を踏む音がトンネルの中に響く。
頼りになるのは足元を照らすスマートフォンの光のみの状態で、ミナは警戒しながらも早くトンネルを抜けようと早足で歩く。
しばらく歩いていると、ミナはあることに気が付いて足を止めた。
「“あれ?なんで…“」
一本道のはずなトンネルに何故か分かれ道が存在していたのだ。
「“可笑しい。昨日までこんな分かれ道なんてなかったのに…“」
どちらの道にもライトを照らしてみるが足元ばかりで奥の様子は全く伺えなかった。
─────ねぇ、
ふと、どこからが声がした。
トンネル内で反響するソレはどこから聞こえてくるのか分からない。
それでもミナは声が聞こえた瞬間により一層警戒態勢を強めた。
────────こっちだよ…
その声は子供の声のように聞こえた。女の子とも男の子とも判別のつかないソレは、しきりにミナを呼んだ。
─────────こっちに来て、
声に悪意は感じられなかった。それでも、ソレが罠でないとは限らない。
ミナの足は止まったまま動かない。
それをどう思ったのか、声はますます大きくなる。
──────────はやく、はやく
ドクドクと逸る心臓が、ミナの足を一本前に進めた。
何か嫌な予感がして、進みたくないのに早く進まなければと思う。
じりじりとした足取りでミナは前に進んだ。
それでも、左右どちらの道に行けばいいのかが全く分からない。
どくり、どくり、と心臓が鳴る。
早く、早く、とミナを急かす。
────────はやくしないと、
───────うしろから、きてるよ…




