マスク姿の女の怪 2
等間隔に並ぶ僅かな灯りを頼りに早足に歩くミナは、ふと、自分の足音の他に後ろから別の足音が着いてきていることに気がついた。
不自然なほど静かな夜道に二人分の足音。
流石のミナでも、これは怪異だろうが生きている人間だろうが怖い。むしろ生きている人間の方が怖い。
そしてこういうのは走っても曲がりくねった道を行こうとも、何としてでも追いかけてくるのだ。
むしろ撒こうとして、撒いたと思った瞬間に上から…なんていうのがホラーの定番だろう。
けれど、そのまま歩いても気付けば肩に手を置かれたりするのだ。
そして、ゲームならきっと置かれた時点で視界は暗転し、『GAME OVER』の文字が画面上に出るのだろう。
でも所詮、それはゲームの話だ。この世界に『To Be Continued』は存在しない。
ミナは歩く速度を早めた。
早く。早く。と焦る心を落ち着かせ、怪異だろうが化け物だろうが幽霊だろうが人間だろうが何とかして後ろにいるそいつを倒さなければと考える。
ミナの考える安全とは相手を完全に排除するまで訪れないのである。
こつ、こつ、とわざとらしく足音をさせて近付いてくるモノに、ミナが焦りから段々と苛立ちに変わってくるのはそう遅くはなかった。
「(というか、なんでわざと足音立てて歩いて来るんだ。怖いだろうが!)」
いざとなったら殴ろうと、ミナは後ろを振り返った。そこに居たのはマスクをした長い髪の女が一人。赤いコートを来て付かず離れずの距離でミナを見ていた。
コツコツと鳴っていたのはヒールの音だ。
その女はこちらが気付いたことに気が付くとマスクをしたままニヤリと笑った。
「私、綺麗…?」
「(口裂け女?!べっこう飴なんて持ってねぇぞ?来るなら来るって一言言っとけ!!)」
【口裂け女】
口元を完全に隠すほどのマスクをした若い女性が、学校帰りの子どもに「私、綺麗?」と訊ねてくる。
「きれい」と答えると、「これでも?」と言いながらマスクを外す。「きれいじゃない」と答えると包丁や鋏で斬り殺される。べっこう飴が好物でそれを投げることによって回避できるともいう。
絶句するミナに口裂け女は更に問いかける。
「ねぇ。私、綺麗?」
ミナは考える。どうにかしてこれを回避しなければと。
とりあえず「綺麗じゃない」と答えるのは一発でアウトだ。
「…………綺麗、です」
つまり、絞り出した答えはもう「綺麗」の一択しかなかった。




