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プロローグ




 ─────繰り返した。





 ──────繰り返しだ。





 ───────何度も。





 ──────────何度でも。






 それが、この世界の生き方だった。

 それが、この世界のルールだった。

 それが、この世界での常識だった。


 この世界での死は終わり(ゲームオーバー)だ。

 だからこそ、この世界で死は終わり(最期)ではなかった。


 死んでも、二回目が始まる世界。


 それがこの世界。ホラーゲームの世界の常識だった。


 何も知らないままリセットされて、一定の時間まで巻き戻って、死を回避する。

 死んでは巻き戻ってを繰り返して、繰り返して、繰り返して、プレイヤーが思うままに動いて、死を回避して、ゴールを目指す。


 そうして、何度目かの生で迎えたエンディング。


 お母さんがいる。お母さんが様子の可笑しい私を心配して声をかけてくれる。

 『私』はようやく長い夢が終わったことに安堵して、「なんでもないよ。少し、長い夢を見てただけ」と返して、これから何も起こらない、平和な日常を甘受する。


 …………ことはない。


 それは、一瞬の幸福だった。


 エンドロールが流れて、プレイヤーはぶつりとゲームの電源を落とした。


 その瞬間、真っ暗な空間が『私』から全てを奪う。


 時間も、母も、記憶も、平和も、日常も、取り返したものを全て奪って長い夢に閉じ込める準備を始めるのだ。


 エンディングを見ても『私』は終われない。

 エンディングは、『私』にとって始まりに過ぎない。


 『私』はまた全てを忘れて、振り出しに戻る。

 一人きりの教室で、窓側の一番後ろの席に座って、『私』は始まりを待つのだ。





 …………………………………………あぁ。





 意識が完全に落ちる前、『私』は、思った。






 ──────飽きちゃった…。







 それは、キャラクターには持ちえない感情だった。


 プレイヤーの意に沿うキャラクターが自己を持つなど、あってはならないことだ。そもそも、ゲームのキャラクターが自我を持つなど有り得ない。


 それでも、彼女は何度も繰り返す中で自我をもった。


 その自我は、この世界の生き方を覆す。

 そのバグは、この世界のルールを破る。

 その奇跡は、この世界の常識を壊す。


 漆黒の世界に明かりが灯る。

 明かりが広がるにつれて教室の背景が構築される。


 始まりの教室で、いつもと同じように記憶をリセットされた彼女は目覚めた。



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