明日の為にアレが必要なのでお金ください。買ってきます。
王馬は家に帰宅すると、すぐにリビングに向かった。明日の為に必要な物を買う為に。
「お袋様、魔力循復促進剤を買う為、お金を下さいます」
リビングには王馬の母がソファに座ってワイドショーを見ていた。王馬の言葉を聞いて顔を向ける。
「蓮、日本語おかしいわよ。それで今日は何本使ったの?」
「1と3千が2」
「そ。魔養ドリンクのストックはまだあるし、促進剤買ったらすぐ飲むのよ?」
「了解であります!」
王馬は敬礼をして返事を返した。王馬母は立ち上がり隣のダイニングへ向かい、ショルダーバッグから財布を取り出し、そこから二葉さんを取って王馬に渡した。
「お釣りはお小遣いにしていいわよ」
「お袋、5千円からでは5百円しかお釣りが無いんだけど?」
「促進剤は均一なのよねー。魔養ドリンクみたいにセールしてくれないかしらねー?」
「あのさ、学校の奴らはさ、カラオケやらボーリングやら魔導擬似決闘やら1時間世界旅行やらで遊んでるんだぜ?いったいどっからお金が湧いているんだろうな?」
「バイトしなさいな」
「魔法使わない系のバイトで近くには無かった」
「魔力石に魔力を込める仕事。出来なくはないでしょ?」
「すぐに倒れてもいいならやってやるよ」
「魔力変換の訓練はちゃんとしてるの?」
「…別に学校でやってるし」
「学校の勉強の時間だけで上手くなるなら今頃困ってないでしょう?」
「っ!うるせぇよ!促進剤買ってくる!」
王馬母に怒鳴ってそのまま外に出て行く王馬。部屋の中はテレビの音しか聞こえない。
「…年頃の男の子は難しいわね…蓮が帰ってくる前にご飯準備しなくちゃね」
王馬母は料理の下拵えを魔法で済まし、自らの手で料理をする。王馬がいる時には魔法は使わず、全て自分自身の手で料理をする。
どういう意味なのか…その答えは王馬母の心の中にしかない。
王馬は薬局の中にいた。お目当ての魔力循復促進剤を購入する為だ。薬剤師にお願いすると「魔力循復促進剤は魔法管理局と医師の許可証が無ければ売れませんよ?」と言ってきたので、学生証の中に入っている許可証を見せた。
「えっ!?君があの『魔力の持ち腐れ』の王馬蓮?」と聞かれたので「はい、そうです」と普通に答えた。
普段は家から近い薬局に魔養ドリンクやらを大量買いして顔を覚えられているのだが、今は違う薬局に来ていた。
写真とサインをお願いされたので、サインを書いてツーショットで写真を撮った。
ちょっとしたアイドル…いや、客寄せパンダであった。
王馬は産まれた時から強大な魔力で世間を騒がせた。魔法管理局は強大な魔力が暴走して被害を出さないようにと、産まれてまもない王馬を引き取り、監視下のもと厳重な建物…被害防止という名の監獄の中で育った。
だが、物心がついた時には魔力効率変換が欠陥という事が分かり、それを世間に発表。それから次第に人々は王馬への関心が無くなっていった。
王馬が12歳の時に、危険はほぼ皆無という判断を下し、魔法管理局の建物から出ることを許されたのだった。
(子役時代で活躍したけど、成長して人気が落ちた芸能人みたいだな)
そんな事を思いながら購入した魔力循復促進剤をすぐに飲んだ。魔力循復促進剤は一定の管理状況から離すと1時間以内には効果が無くなってしまう。
その効果とは体内にある魔力の製造を速めるものだ。
(怒って家から飛び出してしまって遠出しちまったなぁ。別にお袋が悪い訳じゃねぇのに…いや、お小遣いくれないからお袋が悪いんじゃね?けどお金欲しいならバイトしろって言ってたし…)
帰宅しながら母を思いながら考えていた。
王馬が母親と暮らしてまだ3年くらいしか経ってない。
微妙に距離感が掴めないでいる。両親と再会した時、この人が「母」という存在を初めて認識し、「家族」という関係をその時知った。
王馬の父は、それなりの魔法技術がある為、あちこち出張して普段は家に帰って来ないが、日曜日には必ず帰ってきて、かまってちゃんになる。
正直、父親というより友達という感覚だった。
(あ〜もうメンドイ!早く帰ってメシ食ってさっさと寝よう!促進剤も飲んだし早く寝た分、魔力回復するだろ!)
家に帰宅すると、王馬母は普通にいつも通りに「ご飯出来たから食べようか」と言って王馬親子はテレビを見ながら、王馬が「犯人はヤス」という言葉に王馬母は「あからさまじゃないかしら?引っ掛けでミキモトよ」とミステリードラマを見ながら夕食を済ませ、犯人が黒ずくめの男と解り、王馬は部屋に戻りベットに潜って夢の世界に旅立ったのだった。
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