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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十三章 未来を想う
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1.角さんなら、まあいいか

「‥ホント、驚いたわ‥。紅葉ちゃんのお友達」

 次の日の話題と言えば、一日中これだった。

 曰く、「紅葉ちゃんの好きな人は、イケメン王子のお供」で、「四朗君」は魔性の笑みを持った魔王だ。彼らは、あたかも、水戸黄門とお供達のようだった。と。

 因みに、水戸黄門は相崎でイケメンキャラ助さんが四朗、頼れる兄さんキャラ角さんが武生という配役になっている、‥らしい。‥四朗君たちが聞いたら目を向いて怒りそうだ。

「でも、‥まあ、角さんでよかった。黄門様や助さんだったら、ジェラシー半端なかった」

「‥まあ、美男美女でいいわね。って感じなんだろうけど、‥ちょっと「まんま」って感じだし」

「何となく、紅葉ちゃんのイメージじゃないし」

「そうだね、相崎さんはちょっと紅葉ちゃんとイメージ違うね。四朗君は‥兄弟? って感じだし」

「‥私もあんな兄欲しい‥」

「‥兄でも、毎日緊張しそうだよ」

 と、まあそんな感じ。で、「何の話? 」って声をかけてきた男子生徒の顔を見て「はあ、所詮普通に周りにいる男子なんてこんなもん」とため息をついたりして。ため息をつかれた男子は、意味も分からず居心地悪かったりして。

「おはよー。あ、紅葉ちゃん、根付け付けたの? 可愛いね」

「ガラス細工? 」

 相崎たちに会わなかった小西と野上は、いつも通りだ。特に、クラス中を賑わしている水戸黄門の話題についても興味もないようだ。

「水戸黄門? 時代劇の話? 」

 と小西が「要らない」発言もしないところを見ると、ちょっとは空気を読んでいるのかもしれない。

 あれから話すことも増えて、実は野上が面白い人だってことも分かったし、小西が意外とおっちょこちょいで、「ああ。そこでそれを言っちゃうんだ」な『残念さん』だってことも分かった。小西も「自分はちょっと要らん事言いだ」という自覚はあるので、クラスの女子と積極的に話すことはしないのだ。「‥そんなに、得意でもないし。緊張したら、また「言っちゃった」ってこと言っちゃうしね」と微かに笑う小西は、でもお話をすることは好きなんだろうって言うことは分かる。そういえば、心を許している野上とは以前から笑顔で話しているのを見かけていた。

 その反面、気遣いが出来る面もある。紅葉のちょっとした変化にもすぐ気が付いて、今みたいに褒めてくれたりする。野上は、そういう変化にはあんまり気付かないようで、小西が言って初めて「ああそういえば」と気付くくらい。

「貰ったんだ」

 紅葉が嬉しそうに微笑むと

「よかったね」

 友人二人が微笑み返す。

 何とも、ほのぼのとした友人関係を築いている。今まで、四朗として相崎や武生といった(離れてみると)ハイスペックで特別な人間としか付き合っていなかった。その時では感じ得なかった、安らぎや安心感がここにはある。

 しっかりしなきゃって、肩ひじ張らなくてもいい。失敗できないから、準備して稽古して。あの頃は「やらねば」ばかりで、「やりたい」はなかった。

 もっとも、それは紅葉の性格もある。「長女として」「西遠寺を継ぐと親孝行が出来る? 」と入れ替わりまでだって頑張ってきた。今だって変わってはいないだろし、これからも変わらないだろう。

 そんな紅葉だから、こんなに穏やかな時間が来て、そしてそれを居心地いいと感じる時が自分に来るなんて今まで思いもしなかった。

 今までだったら、穏やかな時間は「自分には持ってはいけない無駄な時間」と捉えてしまっていたかもしれない。

「私も根付け持ってるよ。これ、トンボ玉の。体験で作ったんだ」

 小西がリュックにつけている、飾り紐のついたトンボ玉の根付けを見せながら言った。

「いいね、それ綺麗。体験も面白そう」

 これも、そう。素直にそう思える。迎合してではない。元々紅葉は他人の意見に迎合することはしない。するのが嫌だから、他人と必要最小限しか話さない。あんまり人の事を信用していないな。という自覚は、でもある。幼少期に虐められた時の記憶が消えることがないからなんだろう。

話す時間もまあ、無いわけなんだけど。

部活動に所属していない紅葉だったが、放課後は習い事や桜からの頼まれごとで忙しい。

今もそれは変わらず、二人と話すのは休み時間の今だけ。放課後は授業が終了したらすぐに帰宅する生活は変わらない。

「旅行先で‥、どこだっけ」

 小西が首を傾げる。これは、おっちょこちょいとかではなく、単純に忘れたんだろう。普段から小西は、おっちょこちょいでミスをしては「ん? なんでこうなった? 」とこうして首を傾げている。

 落ち込むことは、ない。次の瞬間「まあいいか」とケロッとしている。彼女のそういうところは、紅葉にはないところで、紅葉は「ああなりたい」と思う反面「でも、きっと一生無理」とも思っている。

 彼女はそれで、いい。人を傷つけるようなことでも、人に迷惑をかけることでもない。そんなちょっとしたことのちょっとしたずれ。それくらい、「まあいいか」でいい。

「北海道でも、そういうのしてもいいね。何とか体験。私実は、何かをぼ~と見るのって苦手でさ」

 と、野上。スポーティな彼女らしい暴露に、残りの二人が笑う。

「楽しみだね。修学旅行」

 微笑んでそういうと、頷く友人たちを見て「私も変わらなきゃ。今までみたいに没個性なロボットじゃ嫌だ」と、自分の中に生まれた変化に戸惑いながらも、高揚に似た感情を持つ紅葉だった。

 ‥変わりたい。変われそう。武生さんや友人がいる。私は、もっと変わっていきたい。


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