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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十二章 固執する理由
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8.四朗の修学旅行 準備編

「写真、撮っといてね」

「田中君。四朗君が一人にならない様に見張っててね。絶対」

「そう、それは絶対。あと、女子が話しかけられるようなスキや雰囲気も出ない様にね」

 ‥逆にどんな雰囲気だ。女子が話しかけたくないような雰囲気‥。

 僕は今、「四朗君ファンクラブ」の女子の皆さん(親衛隊だっけ? 忘れた)に囲まれている。僕の人生史上、かってない人数の女の子に囲まれているのだが、楽しさはゼロだ。

 皆の目が、マジだ。

 女子どもの話は、僕が四朗君と修学旅行の班が同じという情報の事実確認から始まった。‥クラスどころか、学年も違う人達が混じってるけど、一体その情報どこから??

 普通の人、田中にはその情報源なんてもちろん予想がつかないのだった。

「あ、あと、田中君。まさかだと思うけど、四朗君に邪まな感情をもってないでしょうね」

 ひいい。今日一番の悪いオーラ出た!

「まさか! 四朗君はいいお友達だよ」

 邪まな感情って、何! ‥女子の考えてることって、怖いよ。真顔でそんなこと考えるんだもん。ホント‥。

 と、そんな時

「ん? あ、田中君。班の観光希望ルート出してって先生が言ってたよ。‥あ、ごめんね。お話し中だったね」

 廊下の向こうから声が掛かった。

 そこからは、ちょうど死角になっていたらしく、田中しか見えなかったらしい声の主は、ちょうど正面に来た時、田中が大勢の女子と話しているらしいことが分かり、焦った様な声に代わった。

 この声は!

 田中を含めた全員の視線が、声の主をとらえる。

 四朗様!

 四朗君!

「いや! もうお話終わったから! 」

 田中は四朗の方に走り寄る。

 ‥女子の皆さんのいたあ~い視線を背に受けながら。

「でも‥」

 ついでに、四朗の背中を押して女子の皆さんからさりげなく遠ざける。

「いいの! ホントに! 」

 ‥田中、お前‥

 女子の皆さんの心の声が聞こえる。おかしいな、僕エスパーじゃないんだけどな。

 ‥そうか! じゃあ、気のせいだ!

「? うん。‥なんか大変だね」

 渡り廊下、四朗君をさりげなく押しながらずんずん進む。行きかう人が皆振り返る。

「あ、四朗君」

 ‥何連行されてるんだ? 

 くすくすと面白そうな視線、確実にジェラシーばしばしの視線。

 実に様々な人間観察が出来る。

「あ、田中あ。早く先生に出しとけって言っただろ~」

 ひょっこりと顔を出したのは、悪友・池谷だ。池谷も、修学旅行の班が同じなんだ。‥池谷も女子の皆さんに捕まったのか? 後日さりげなく聞いたら、捕まってないとのこと。逆に面白いから捕まってみたい、と笑われた。‥なんで俺※だけ。(※ みかん事件のことがあるから。田中は、まさかあれがかなり大きな事件として一部の皆様に周知されていることをしらない。更に、「田中‥敵」と認識されていることも、勿論)

「池谷。言っとくけど、あの紙持ってるのお前なんだけど」

 悪友に、田中はため息をつきながら言う。

 不本意だけど、池谷とはなんの遠慮もなく話せる。四朗君と話すのは、まだちょっと緊張する。

「はあ? そんなわけ‥ああ、あるな。俺だ」

「全く。池谷はそういうとこ、あるよな。お調子者のおっちょこちょいだな。考えが及ばず、時々場を凍らすくらいのチョンボをしでかましたりもするしな」

 いつの間にか、佐藤も揃っていた。なんだかんだいって、僕ら三人は腐れ縁だ。だからと言って、四朗君だけ置いてけぼりにはしない様に気を付けねば。

「佐藤は人を分析するのが癖なんだよ。四朗君」

「佐藤。俺を分析するのは、ヤメロ。そして、田中は変な解説をヤメロ」

 と、ぶすっとした顔をする池谷。そんないつもの光景。それに、目を細めて麗しい微笑みを向ける四朗君。

 ‥に、また固まる池谷・佐藤。そろそろ慣れるか、目を逸らすことを覚えればいいのに。

 僕は、視線の端に入れる位に逸らすという技を手に入れたよ!

 ああ、修学旅行。不安だなあ。四朗君、ガイドさんまでフリーズさせちゃったりしないだろうなあ。耐性がなかったら、ホントに結構な時間、フリーズ解除しないからなあ。四朗君ってば、無自覚※だから困る。※時々意図して使うこともあるから、すべて無自覚というわけではない。

 ‥まあ、いいかあ。面白い気もする。

「は! なんだ。なんか、固まってた。‥そうそう。紙の提出」

「ついでに、今から皆で出しに行くか」

 暫くして、こうして池谷達みたいに何事もなかったように復活するわけだしね。そういえば、復活する時間が池谷達、若干早くなった気がする。これも、耐性っていえるか。

で、そんなこんなで何となく、でぞろぞろと職員室まで移動。

 その間の会話も、自然と修学旅行の話題だ。

「‥新幹線で食べるおやつ買いに行かなきゃな。四朗君はどんなのが好き? 煎餅とか食べなさそう。ばりばり齧ってるのが想像できない。‥ん? でも、チョコってイメージでもないな。ポッキー‥違うな」

 また佐藤が分析している。

 ん。でも、確かに四朗君と煎餅はイメージない。でも、チョコレートはちょっとありそうな気がするぞ。ダー〇とかを指でつまんで食べるとか似合いそう。

 って、美形はどんなことしてても似合いそうだなあ。

「‥俺ってどんなイメージなの。佐藤君」

 四朗が苦笑いをする。

「着物着て和菓子食べてそう」

 って、即答だな池谷。

「あ、それ似合いそう」

 佐藤も、うんうん、とか満足げだ。

「間違っても、ポテトチップスじゃない」

 池谷がにやっと笑い、佐藤も同意する。

「そうそう」

「‥食べるよ。ポテトチップス」

  言ってはみたが、確かに食べないな。というか、菓子全般。四朗は首を傾げた。道場なり稽古なりで、帰ったら直ぐ夕食で三時のおやつの習慣がそういえば、相生兄弟にはない。因みに、博史はテニス部とテニススクールだ。博史は、昔からテニス一筋なんだ。

「‥だよね」

 はは、と池谷と佐藤が苦笑いする。

「だよ。別に四朗君は普通の人だよ」

 と、何故か田中がちょっと怒ったみたいな口調で池谷達に断言する。

「そだな」

 池谷と佐藤が「悪い」と田中に謝りながら納得して、

「じゃ、俺適当に買ってくるから一緒に食べような! 」

 池谷が輝くような笑顔で言った。

「じゃ、俺トランプ持ってこよっと。新幹線は長いからねえ」

 と言ったのは佐藤だ。四朗は、そんな普通の会話が嬉しくて思わず全力で微笑んでしまい、佐藤と池谷どころか、うっかりと四朗を見ていた田中までもをフリーズさせてしまったことには、気付いていない。

 ‥長いかな。ちょっとうたた寝してたら着く距離だぞ? 

 そんなことも考えていた。

 四朗は、海外も含め、長旅に慣れている。

 ‥でも、友達と一緒って初めてだから凄い楽しみだ。

 四朗の微笑みは途絶えることはなく、田中達(と、周りの巻き添えを食らった生徒達)のフリーズも暫く解けないのだった。

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