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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十二章 固執する理由
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5.ちょっと復習させてもらえます? 博史の困惑

「ちょっと、復習させてもらえます? 」

 今まで目を白黒させてた博史が、授業中みたいにちょっと挙手して発言した。

「俺、頭がついて行かないんですけど‥」

 で、まず四朗を見る。

「兄ちゃん、ひいじいちゃんに会ったんだよね。で、じいちゃんのこと話してたって言った? 」

 四朗が頷いて

「いつも彼女をとっかえひっかえだった。あの頃から、あれはチャラかったってひいじいちゃんは言ってたけど」

 こともなげにさらっと言った。

「え! 」

 目を見開いてるのは、博史、そして母さん。清さんやおばあ様は「うんうん」というように頷いている。

「流石にそこまで酷いとは思わなかった」

 は、父さん。

 そののんきな顔を見てると、なんか‥ちょっと意地悪をしたくなってきた。

 四朗は父さんをちらり、と見ると

「父さんのこともちょっと言ってた」

 にこり、と笑う。

 まあ、条件反射で清さんと博史が視線を逸らす。そう、つまり「あかんやつ」の微笑みだ。耐性がある、というかもっと年季が入ってる父さんと、それに慣らされた母さんは、勿論通常運転だ。

 それにしても博史。目を見開いたまま、視線を逸らすって、器用だね。

 父さんが四朗を勢いよく振り返った。

 その目が「え? 何。余計なこと言わないで? 」と語っているが、

「明宏もモテてたけど、明宏はそんな感じじゃなかった。あれ、程チャラくはなかった、とも」

 まあ。丸っと無視だ。

「え! 明宏って、父さんだよね? 」

 目を見開いたままの博史の視線は、今度は父さんに向けられた。

「やめて、とばっちり‥」

 その父さんは、今は母さんにも見られている。

 頭を抱える様に俯いて額に手をやっている父さんの目は完全に泳いでて‥、母さんのその視線に父さんが気付いているかはどうかはわからないけど。

「え! ホントなの! 」

 父さんのその顔は、しかし図らずともその言葉が真実であることを語っていて‥。

 博史は、もう父さんをガン見している。

「それは、‥聞いてませんね」

 母さんは、にやりとちょっと、黒い笑顔だ。

 わあ、こんな母さんの顔見たことない。面白いわあ。

「相変わらずお義父様にかかれば四朗も形無しね」

 くすくすともっと面白がってるのは、おばあ様。こんなに機嫌がいい顔、見たことありません。ほら、清さんもそんなおばあ様を見て嬉しそうだ。

「紳士って奴だ。女性には優しくするべき、ってのがモットーだったんだろうな。彼女を作ったりはしていなかったみたいだ。ただ、浅く広く。バレンタインなんかは色んなところからチョコレートを紙袋一杯にもらってたし。それも一つじゃなかったな! 家にも女の子が詰め寄せてたぞとも言ってた」

 四朗は、ここぞとばかりに畳みかける。

「‥」

 俯いた、父さんの顔はいつも以上に真っ白だ。

 


 もう、やめて‥。四朗、お前はいつの間に‥。

「へええ。それは、結構なプレーボーイね」

 静さんまで。‥視線がイタイ。

 母さんと、清さんの笑顔が生温かい。ホント、やめてください。

 四朗父は、完全に顔を上げるタイミングをなくしていた。

「‥」

 ‥もう、穴があったら入りたいってこんな時のことを言うんだろうね? 



 なんか、俺、父さんが結婚早くても、別におかしくない気がしてきた。寧ろ、兄ちゃんと父さんやらおじい様が血が繋がってるのかが不思議な感じ。兄ちゃんが人間じゃないってのは認めないけど、ちっとも血が繋がってないかもってのは、あるかもだなあ。っていうか、‥俺も、もう少し大人になったらチャラくなったりするんだろうか。

 心配。



 色々と人生や家族について考えさせられた博史だった。

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