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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十二章 固執する理由
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2.前途多難

「誰」

 稍あって紅葉が顔を上げた。

「前にくれちゃんの部屋にいた‥。ちょっとくれちゃんと似てて、前髪垂れてる無駄に顔の整った男子」

 あんまりな言い草に、がくっと来そうになる。

「‥もしかして、四朗君? 私と四朗君はそんなでは、絶対ないし、根暗で重くて‥ストーカーになりそう、なんて酷いな。あの人は、いい人だよ」

 それは、いくら何でも‥。

 確かに明るくはない、けど‥。千佳、何気によく分析してるな。

「好きなの? 」

 四朗をかばう発言をした紅葉に、千佳はコテンと首を傾げる。

「私には、他に好きな人がいるわ」

 思わず「まさか! 」と叫びそうなくらいきっぱりと否定してしまった。

 ‥ごめん、四朗君。四朗君が嫌、とかじゃ‥ないよ。うん。

「え? 誰? 私の知っている人? 」

 千佳にとって、それは余程予想外の答えだったんだろう。驚いた顔で、千佳が紅葉を見た。

 紅葉は首を振る。

「知らない人」

「顔がいい人? 」

 眉根を寄せて首を傾げる千佳に、紅葉もちょっと首を傾げる。

 ‥悪くはないと思うけど。四朗君とか、相崎と比べると‥まあ、落ちるよね‥。しゅっとした三郎さん(※武生の兄。相馬の長男)とも武生さんは違った顔だったな。(※あのあと一緒に晩御飯を食べた)。武生さんは、ホントに相馬のお父さんにそっくり、っていうか。見るからに誠実としか言えない‥悪く言えば面白みの無い顔なんだよね‥。

「それは、いいわ。顔のいい人って私苦手。何考えてるかわからないから」

「それは、偏見だわ‥」

 何考えてるかわからない美形は、相崎。いや、相崎は単純だから、「ろくなこと考えて無いだろうなあ」とは思うけど、悪いこと考えてるわけでもない。同じ美形でも四朗君の方が、深みがあるけど、「何考えてるかわからない」とかそんな感じじゃない。

 悪いこととか考えてないんだろうな、って感じ。

 どっちかというと、武生さん寄りの好感度が持てる顔。だけど、美形。好感度が持てる美形だ。

 ってナンダソリャ。

 ‥でも、時々見せる『悪い顔』は、ちょっと‥怖いけど。怖いって言うか、色気半端ないっていうか。(しかもそれを自覚してる)

 色々ぐるぐる考えて、無言になる紅葉に、千佳は眉を寄せる。

「まあいいわ。そのくれちゃんの好きな人、どんな人? 優しい人? 」

 と。いつも通り保護者の発言。千佳はホントに心配性だ。

「優しいわ。それに頭がよくって、剣術が強いの」

 と、紅葉はにっこり断言する。

 顔云々は個人の意見だけど、これだけは自信持って言えます。

「何それ。それで顔も良かったら漫画ね」

 千佳が、ぷっと吹き出す。

「その漫画なのが四朗君よ」

 でも、これも自信持って言えるな。剣術は、武生さんの方が上かも、だけどね。私と手合わせしても、私の方が勝つかも、だけど、私はちょっとズルしてるところがある。単純に技術だけだったら、確実に四朗君の方が上だ。体力もあるし。

 体力が一番あるのは、武生さん。剣も重い。速さと技術は、四朗君。センスとリズム感は多分、私が一番だ。それは、絶対譲れない。

「あの根暗な人が? 」

 千佳が眉根を寄せる。

 何、その嫌そうな顔‥。

「なんでそんなマイナス先入観持っちゃうかなあ‥」

 紅葉は、小さくため息をつく。

 千佳と四朗をくっつけよう作戦は、前途多難なようです。



「まあ、あの人は顔はいいけど「俺様」タイプではなさそうよね」

 うんうん。と頷きながら千佳が言う。

 ‥ホント、千佳はなんで四朗君の事そんなに知ってるの??

 思わず首を傾げそうになるが、ここはスルーの方向で‥。

「そうね。決してそんなタイプではないわね。同じく顔がいい相崎の方がそんな感じはある、かなあ。いや、ちょっと俺様とは違うかな」

「どんなタイプ? 」

 興味をひかれたらしい千佳が面白そうに聞き返してくる。

「とにかくタラシ」

 と、ここは断言で。

 ええ、もう。その一言に尽きます。

「うわ。私はないな」

 千佳は目に見えて、ドン引きしている。

 ごめんね。相崎。ここは、悪者を一手に引き受けて下さい。

 悪い奴じゃ‥ないんだよねえ。ただ、私的に「ない」だけで。

 と、それは千佳にも伝わっちゃったみたい。

「悪い奴ではないわよ? 優しいし」

 取り敢えず、ちょっとはフォローしとくけど。「女タラシだけど」が消えない程度に。

「下心あるのはちょっとね‥」

 そうそう。この反応。正解。

「千佳は、変な男には引っかからない様な気がする。安心したわ」

 紅葉が、にっこり笑って言った。

 ちょっとお姉ちゃんっぽくない? 心の中はうきうきです。

「変などころか、男になんて引っかからないわよ」

 千佳がうんざりした顔をする。

 ‥そうなんだよねえ、千佳ってそうなんだよねえ‥。

「恋も悪くないわよ」

 苦笑いして紅葉が言った。そして、

「『貴方さえいればいいっていう恋』いいと思うけどなあ」

 付け加える。

「根暗に聞いたの? うわ、最低。口の軽い男って嫌い」

 千佳が、不機嫌な表情になって、紅葉から顔をそむけた。

 あああ、また悪印象。違う、そうじゃあ、ない。

 口では言い表せないんだよなあ、こう、実際に会って話せばきっとわかってもらえるんだけどなあ。

 四朗君が、凄くいい人だって。

 本物になりたがってる四朗君の寂しさや、戸惑い。でも、それでも一生懸命自分と向き合ってる。

 それだけは‥わかってほしい。

「‥四朗君の事、悪くいわれるのは嫌だな。四朗君は‥頑張ってる」

 伝わらないもどかしさで、胸がいっぱいになる。苦しくなる。

「くれちゃん? 」

 紅葉を見る千佳の視線に、心配した様な表情が浮かぶ。

「ごめんね。友達の事、悪く言われちゃ嫌だよね。ごめんね。くれちゃん」

 ああ、またこんな顔をさせてしまった‥。

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