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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
二章 柊 紅葉
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1.無駄なこと

 柊 紅葉は、目の前で顔を赤くしている男子高生に対して何ら感情を持つことはなかった。

 ただ、どうこの場を乗り切ろうか、それだけ。

 ひどいことをいうわけにはいかない。それは、「この子」に悪い。

 だけど、だからと言ってどうすればいいんだ?

 適当なことをいうのも、双方に失礼だ。

 借り物の体で、自分はこの子の評価を上げることはしろ、この子の評価を下げるようなことをするわけにはいかない。

 だから、毎日念入りに肌の手入れをし、髪にくしをかける。

 その行為に、それ以上の意味はない。

 花には水をやるものだ。肥料をやると花はよく育つ。

 あれと同じ感覚だ。

 それ以上の感情を持つのは失礼ってものだし、気持ち悪いじゃないか。

 ‥いや。それよりも今は目の前の事だ。

 何とかしなくてはいけないとはいえ、毎度のことだが困る。どうするといっても相手は男だ。

 それが気持ちが悪い。考えれば考えるほど気持ち悪い。

 事実、状況だけ言えば、紅葉は女の子だから気持ち悪くはないのだろうが、俺はどうも割り切れない。

 だから、避けて通っているのに

「ごめんね。困らせちゃったね」

 黙っていたら、相手が気を使って言ってくれた。優しさなのか、単に沈黙に耐えられなくなったのかはわからない。

「いえ、そんな」

 紅葉は恥ずかしくて顔も上げられない。

 という風に見えているようだが、実際は

 どんな顔をすればいいのかわからず、顔を上げるわけにはいかない。

「せめて友達になってもらってもいいかな」

「‥」

 黙ってこくんとうなずく。

 ああ、「友達」これで何人目だ。

 友達といいながら、「二人きり」で映画に誘ってくるのはどういうわけだ。

 だが、紅葉は生憎忙しい。外国語にスイミング、剣術に弓、ピアノ。

「今日は、ピアノだから。‥ごめんなさいね」

 気弱そうに微かに笑って、新しい友達と別れた。

 お互いにとって時間の無駄をしてしまったなあ。

 俺はさっさと気持ちを切り替えることにした。


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