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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十一章 それぞれの「幸せ」
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5.似た者同士

「悲観は‥していませんが」

 案の定、目の前の四朗はポカンとした顔をしている。

 本当に恥ずかしいからやめてほしい。せめて、笑いとばしてほしい。紘子は恥ずかしくって顔を伏せたくなるのをかろうじて堪えた。

「しなさいよ。そして、前を向いて、出会いを楽しみなさいな。恋愛は楽しいものよ」

 もう、自分で何を言っているのかすらわからないが、ここで投げちゃいけない。表情も崩しちゃいけない。

 鉄の心臓、鉄の心臓。平常心、平常心。

 自分に言い聞かせる。

「楽しい‥ですか」

 四朗が苦笑いする。

 その表情にまた折れそうになるが、ここは我慢。

 ええい、吹かせるわ! 年上風。

「恋愛は一つの形じゃないのよ。結婚して、子供を産んで‥だけじゃ、ね」

 説得してみても、目の前の四朗はまだちょっとポカンとしたまま、何とも微妙な顔をしている。

 でも、ちょっと笑って目を伏せた。

「そう思っていいんでしょうか」

 ぼそり、と呟く。

 その表情が少し悲しそうで、寂しそうで、はっとする。

 伏せた目にかかる睫毛はびっくりするほど長くって、その憂いを帯びた表情は儚げで綺麗で、普段、「高校生暑苦しい」としか思えない息子と同じ生き物だとは思えない位だ。

 自分に似ている、と思っている長男や菊子だってこんなに女性的ではない。

 全く、自分とは「カテゴリー」が違う。自分にはこんな繊細さはない。そういえば、どちらかというと女性的な顔でもない。

 いや、四朗の顔も、女性的とは違う。所謂中性的な美しさというものなのだろう。人間として美しい顔なのだろう。神様とかの美しさだ。

 だけど神様と違うところは、四朗には流石相生だけあって、色気がある。でも、それは妖艶や蠱惑的とは違う。

 人を惹きつけてやまない色気だ。

「四朗君って、案外暗いわよね。真面目だし。そこらへんは、うちの武生と似てるわよね」

 だけど、その色気で誤魔化されないわよ。私は、若い娘じゃない。高校生の親、それも、息子の幼馴染の母親なのだ。

 四朗君、可哀そうになんて言わない。そんな言葉に逃がしてあげない。

 相生の目力攻撃も、幼いころから(※四朗の父親)慣れされてるしね! 

 ‥この子の方が、二倍増しって感じはするけど。

「似てますか? 」

 四朗が眉間にしわを寄せて怪訝な顔をして、首をコテン、と傾ける。

 こんな表情は、ちょっと年相応の子供っぽい。

そういえば、武生が昔「四朗は、子供だのに、子供らしくない」と、怒っていたっけ。そんな言い方、子供らしくないのはどっちだって思ったんだけど。

 あの頃から、似てたのね。つまり。二人は。

「似てるわ」

 紘子は、大きく頷いて断言した。

 全く似ていないようで、根っこのところがそっくり。

「だから、菊子も好きになったのかもしれないわね。安心するんじゃない? 」

 自分で言いながら、自分で納得。

 そうだ。武生よりも菊子は、ある意味大人なところがある。女の子の方がものをシビアに考えるじゃない? そんな菊子が顔だけで人を好きになるかなあって思ってたんだけど、そうか、そういうことか。

 兄に似てるから、この人は信用できる。安心。間違いない。

 菊子って、割とブラコンっぽいところあるしね。

「俺はもう一人の兄ですね」

 ふふ、と四朗が笑った。

 そう、その笑い! それも、高校生っぽくない。

 もっと、「兄って、なくない? 」みたいな嫌そうな顔しないと! (※紘子、高校生像)

「少なくともはじめはそうだったのかもね」

 まあ、そんな表情、表には出さないけどね。

 流石、石の相馬(相生が水の相生と呼ばれるように、相馬は石の相馬と呼ばれている) 

 つまり、石のように動じない、だ。‥表情筋の鍛え方が半端じゃないわぁ。

 でも、武生にこそ、ピッタリよね。このテンプレ。

「でも今はきっと違うわよ」

 にやりと笑って紘子は言った。「覚悟なさいね」って悪戯っぽく付け加える。「女の子は強いわよ」

 と、これも本当。

 菊子の目を見たらわかる。あれは、恋する女子の目だ。

「反対じゃないんですか? 」

 って、また身体的なことを引っ張っている。

「あら? 反対するのは相生サイドだけだと思っているわよ。私、四朗君が義理の息子なら大歓迎よ。うちの息子たちは皆無口でつまらないもの」

 ふふ、と笑って紘子は言った。

 言いながら、やっぱり納得。そう、そうなのよ。単純にそうなったら面白いなあって思ったのよねえ。

 武生と紅葉ちゃんの子供を‥ってそれは無理でしょ‥って思うけど、そうなったらいいのになあ。

 四朗君の未来が、もう少し楽に、楽しいものになれば、って思う。

「俺も、そう変わらないですよ」

 四朗が今日何度目かのポカンとした顔で言った。

 ‥確かに。

 四朗は、「相生」という家のイメージ(というか、幼馴染の四朗(父)のイメージ)と、その華やかな容姿から派手なイメージを持ってしまうが、本人ははっきり言って地味だ。武生と大差ない。

「‥意外とそうなのよね。顔は華やかなのに。丁度いいわよね。義母としては、娘婿がモテすぎるのも心配だものね」

 あ、違うわね。中身は固いけど、モテることには変わりないわね。

 武生の母親は、小声で言って少し笑った。

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