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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十一章 それぞれの「幸せ」
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1.四朗の週末の予定 

何も人様の恋愛を見てる趣味はない。スマホは後で受け取ろう、とその場を離れかけた四朗は、武生に襟首を掴まれた。

「待て」

 スマホに拾わないような小声で武生が四朗を呼び止める。

「へ? 」

 四朗はあからさまに嫌そうな顔で武生を見た。

 だから、人様の恋愛なんて興味ないんだって。

「四朗も一緒に来い」

 ぼそぼそと武生が言う。

「なんで」

 この時の、四朗のそれはそれは嫌そうな顔は、想像に難くないだろう。

「お願いします」

 しかも、何故かスマホ越しに紅葉の声(聞こえていたんだ)

「えええ~。ちょっと、そういうの‥」

 襟首を掴んだ武生の手を引っぺがしながら、四朗がまた顔をしかめる。

 嫌だ。絶対。巻き込まれるのだけは、嫌だ。巻き込まれて、嫌な展開になるパターンしか想定できない。

 絶対に、嫌だ。

 四朗は、その無駄にいい頭をフルに回転してこの事態を避ける方法を考えようとした。

 と

「え! 俺も行きたい! 面白そう! 」

 中等部の博史が何故か通りかかる不思議。

 「ついていない時」というのは、確かにある。

「委員会の報告。俺、会計委員長だから」

 と、行きたい光線を目から出しながら、自分がここにいる説明をする、ちょっとブラコン気味な好奇心旺盛気味の中学3年生。怒鳴り追い払いたいが、博史は後輩だか何だかを後ろに何人か引き連れているから、それも叶わない。

「博史‥」

 しかも悪いことに、四朗も博史には、甘い。それは自覚がある。

 今も、ことが事じゃなかったら、迷わずOKをだしていただろう。

 ‥だけど、今回は流されないぞ。気を強く持て、四朗。

 四朗は自分に言い聞かせた。

「委員長。行かないと遅くなりますよ」

 メガネの子が、無の極致みたいな顔した四朗を見かねてか、さりげなく助け船を出してくれる。

「ん! じゃ、兄ちゃんそういうことで決まりだね! 」

「‥‥」

 ‥なんでそんなことに。

 助け舟を出してくれた子も、目で「すみません」と謝っている。

 ‥君は何も悪くないよ‥。「大変ですね」‥ありがとう。二言三言、目で話す。

 笑顔で四朗に手を振る武生を呆然とした顔で見送ったが、心の中では

 ‥絶対、帰ったら撤回させる。

 四朗の想いは強く、決意は固い。

「決まりだな」

 うるさい。武生。俺は絶対嫌だ。

 誰が何と言おうとも、嫌だ。人様の事情には関わりたくないし、まして、恋愛事情になんて関わらないぞ! 

「ありがとな」

 その間に電話が終わったらしい武生が、スマホを四朗の手に渡しながら、ぽんと四朗の肩に手を置いた。

 四朗は武生を軽く睨みながらスマホを受け取る。

「‥俺は何もしゃべらないからな」

 それでもいい。と武生が頷く。

「‥ちょっと、緊張しそうな気がしてな‥」

 緊張。武生が緊張! 

 四朗が、ぎょっとした顔で武生を見る。一体どんな顔でそんなこと言っているんだ。

 だけど、武生の顔はいつも通りやっぱり無表情で、顔色ひとつ変わっていなかった。

「大丈夫そうだけど‥。俺いなくても、大丈夫じゃない? 俺部外者だし」

「紅葉さんと知り合うきっかけになったのは、四朗だ」

 いや、あんた、その前からずっと紅葉ちゃんと知り合ってたし。

 とは言えない。

「‥それは、まあ」

 ええい。何とでもなれ。

 と、そんなこんなで四朗の週末の予定は決まった。

 桜の母さんまで一緒に来るとか言い出さないだろうな! 

 と、今はそれだけが不安。

 ‥でも、紅葉ちゃんは西遠寺の後継者候補なわけで、将来は後継者になるかもしれない、で、なったら、どうなるんだろう。

 武生との結婚が反対されちゃったりするのかな。

 武生は、普通の人なわけだし。

 四朗はため息をつく。

 幸せそうな幼馴染たち(紅葉は確かに昔からの馴染みなのだ。面識はなかったが)の将来が幸あらんことを、と願う。

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