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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十章 赤い水
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7.恒例・臣霊報告会

「四朗様のあの姿‥」

 恒例となりつつある臣霊報告会。

 華鳥がぽつり、と呟くように言った。

 きょうの議題は、これだ。

「俺は見たことはない。誰なの? 紅葉様に似てたけど」

 と、これは月桂。

「私も見たことはありませんが、たしか‥桜様は楓様だと。桜様の妹君らしいですわね」

 気持ちを落ち着けるためか、華鳥は、ほう、とため息をつく。

「楓様? 妹君? 」

 一番古参の華鳥すら知らないのだ、月桂が存在すら知らないのも無理はない。

「私も存在は知っておりましたが、お顔は拝見したことはなかったです」

 華鳥が頷くと、鮮花が「ふうん」と頷いた。きっちりと床に座っている二人とは違い、鮮花は、ゴロリと横になって、退屈そうに二人の話を聞いていた。

 鮮花にとって四朗は興味がないことなんだから仕方ない。

 しかし、「あの顔」にはちょっと興味が持てた。

「四朗に、というより紅葉そのものって感じだったわね。あの顔」

「おそらく、紅葉様は楓様の生まれ変わりだと桜様が。そして、四朗様‥臣霊の楓のモデルは勿論、楓様。四朗様は、楓様の代わりに作られた臣霊だったんですわ」

 鮮花にちいさく頷くと、華鳥が言った。

「偽物、か」

 ぼそり、と鮮花が呟く。

「え? 」

「四朗、よく言ってたじゃない。自分は偽物だって。紅葉の」「だけど、それはちがくて‥」

「楓様の偽物だったってわけだな」

 月桂がぼそりといい、華鳥が深いため息をついた。

「たとえそうであったとしても、‥そろそろ四朗様は‥」

「そうよね、四朗は暗すぎるわよね」

 鮮花が呆れた様な声を出す。そして、むくりと起き上がる。

「楓様ってどんな人だったか知ってる? 」

 紅葉が楓の生まれ変わり、という言葉に興味をもったらしい鮮花が、ようやく話に入ろうと思ったらしい。

 そんな鮮花の様子に、華鳥は苦笑するが、まあ臣霊なんて程度の多少はあるものの、皆そんなもんだ。

「ええ、他のご兄弟の方とは、歳が離れた妹君で、桜様も蕗子様も‥紫苑様もそれはそれは可愛がっておられたらしいですね」

「紫苑って、桜様の失踪した弟? 」

「ええ、そうよ。紫苑様は「今まで楓がいたからこの家にいたけど、楓が死んでしまったらこんなところにいる意味なんて何もない」と楓様がなくなられてからはおっしゃられてたわ」

「失踪するの分かってたなら止めなさいよ! 」

 さらり、と華鳥が漏らした、紫苑失踪の謎に鮮花が驚いた声を出す。

「桜たちも心配してたじゃない」

 いくら今は紅葉の臣霊で紅葉一筋とは言え、桜は生みの親だ。恩義がある。だから今まで協力してきたのではないか? それを‥

「あら、だって紫苑様は関係ないですもの」

 紫苑が出て行ったから桜が実家に帰されたのだから、関係ないわけはない。だけど、当時の華鳥は桜一筋で「(桜は)西遠寺に帰って後継者になった方が幸せかも」と割と本気に思っていた。まさかその後、四朗の御守を任され、そして守護臣霊になりたいと思う程、自分が四朗に執着する様になるとは、あの頃の華鳥は思いもしなかったのだ。

「過ぎたことはいいか」

「‥まあ、そうね」

 そして、月桂達にとってもどうでもいいことなのだった。

「四朗はどうなるのかな。あのまま、その楓さんになっちゃうのかな。思い出したってことは」

 鮮花の言葉に、華鳥が首を振る。

「わからない」

 それは真実だ。

 全く分からない。前例がない。

 臣霊が、子供として生まれたこと自体(昔から「そうであろう」とは言われてきたが)実例は四朗だけなわけで‥。

「私が、見守っていくしかないわ」

 もとより、そのつもりだ。

 これまでもそうだった。そしてこれからもずっと‥。

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