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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
七章 覚悟
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8.あなたはホントに酷い人。

 あの子はどんな子だっただろう。

 ふと、さっき帰っていった「紅葉」の顔をした四朗がいた場所を見つめながら考えた。

 顔は、そうね十歳くらいの頃の四朗と同じ顔だったわ。女の子なら紅葉だろうと思うけど、不思議ねあの面影は四朗だったわ。ここに四朗が来たのがちょうどそのころだった。

 


私より金に近い‥いシトリントパーズの瞳と、真っ白な肌、は、病気で外に出られないせいだったわね。髪は明るい栗色で。その髪を長く伸ばしてた。

 端正な容姿はザ、西遠寺って感じだったわね。

 四朗は、自分の顔が相生の顔そのものって思ってるだろうけど、本来の西遠寺の顔そのものなのよ。

 先祖返りってやつね。

 ああ、今はあの子のことだった。あんまりそっくりだから、私の中のあの子の記憶が四朗によって上書きされていたわ。

 ‥あの子は、女の子だのに不思議ね、紅葉より四朗に似てる気がするわ。たぶん、性別の問題じゃなくて、性格の問題ね。

 出会った頃の四朗の、意志の強さが現れたような目、ぎゅっと噤まれた口。だけど、頬には健康的な赤味なんてなくって、いつも緊張しているようにこわばっていた。紅葉はいつも健康な肌色で、穏やかに笑っている印象があったから、そこらへんが見た目の印象を変えたんだろう。

 四朗と唯一違う、長い髪。あの子は、その髪がお気に入りで、いつも綺麗にとかしてたわね。

 家から外に出るどころか、布団から出ることも少ないほど病弱。だけど、ちっとも悲観的じゃなくって、いつも前向きで、話好きで、本が好きで。あと、時代劇も好きで「元気になったら、剣の稽古してみたい」って。勧善懲悪のストーリーが好きなのは、正義感が強かったからだろうか。

 元気になったら

 だけどその願いはかなわなかった。

 残された私と姉さんは、あの子のいなくなった部屋に座って毎日泣きじゃくった。

 その時、私か姉さんが何気なく口にした

「転生」

 って言葉。

 私たちははっとしたわ。

 そして、私たちなら出来るかもしれない。って。

 別に何の根拠もないんだけど。

「あの子を産んで‥産み直して、今度こそは幸せにする。でもそれは西遠寺で、ではないわ」

 姉さんはその日のうちに黙って家を出たわ。

 そして、それから3年後結婚して子供が生まれたらしいことを知った。旦那さんは、血縁はないのに、どことなく西遠寺の顔に近かった。

 あの子に似た子供を産むため、ってわかった。

(それが、たまたまで偶然だったと聞かされたのは、もっとずっと後になってからだけど)

 そして生まれたその子が、紅葉だった。

 私は、情報を操作して、西遠寺から姉さんを隠した。

 本来なら、二人で一人の西遠寺の当主が当代だけ私一人なのはそのため。私は、信用の持てるパートナーを見つけている余裕や時間がなかったから。

 でも、ダメだった。

 西遠寺の人間には気づかれたくなかったのに、紅葉は少し目立ちすぎだったわ。

 だから、今度は私から紅葉に接触した。紅葉のことを、西遠寺に自由にさせるわけにはいかない。そう思ったから。

 それこそ、今度こそ「生まれ変わった」あの子を西遠寺に関わらせたくなかったから。だけど、あの子の幸せのために私は何でもしたかった。

 私があの子を産みたかったけれど、それは無理だったから。

 だけど、久しぶりに会った姉さんは

「紅葉の人生は紅葉のもので、あの子のものではない‥。悲しいけれど、紅葉をあの子の代わりには思えない」

 って言った。確かに悲しかったけど、でも嬉しかった。

 私も四朗をあの子の代わりには思えなかったから。

 だのに、四朗は言うんだ。

 私は嫌なのに、本当に嫌なのに。

 四朗が四朗でなくなるかもしれない。そんなの嫌なのに。



「だけど、俺は知りたい」

「俺の本当の名前を呼んでください」

 って。

 ああ、なんで。

 あなたはホントに酷い人。

 かって、私たちを置いて消えちゃったあの子のように、あなたも消えてしまうんだろうか? あなたは‥

 本当に酷い人。

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