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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
四章 入れ替わり
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8.紅葉至上主義の二人

ちょっと、重複部分があります。主に、紅葉目線です。

「これからは、日焼けにも気をつけてね」

 そんなことを何となく紅葉に言った四朗に、紅葉至上主義のお洒落な女の子の臣霊・鮮花は、大きく頷き、同じく紅葉至上主義の男の臣霊・月桂は、「男のくせに女々しい」と顔をしかめた。

「人間、元気が一番です。紅葉様はそのままでいいんです。健康的で。まだ若いんだから今は日焼けしていても、冬になったら戻ります」

 という月桂。それに対し、

「何言ってるのよ。油断は大敵。将来、シミにでもなったらどうするの」

 という鮮花。

 なんせ、どちらも紅葉至上主義で、しかも人間ではないので、常識とかはあんまり関係ない。一に紅葉、二に紅葉だ。今まではそれでも、桜の任務を先行させていたが、それもこの度のすり替わりで終わった。しかしながら、すっかり紅葉になついてしまった臣霊は今でも紅葉のそばにいる。それには、桜も諦めたようだ。そして

「臣霊がマスターと認めてしまったようね。仕方がないわ、いいわ」

 と、あっさり譲ってくれた。

 臣霊は、自分の意志というのをはっきり持っている。桜の作った臣霊ではあるが、マスターは臣霊が認めた人がなるらしい。だから、術者は臣霊を作ることより、信頼関係構築に苦労する。

 桜には臣霊が、月桂と、鮮花、華鳥ともう一人いるらしいが、紅葉は会ったことがない。月桂や鮮花もあったことがないらしい。古さでいえば、月桂や鮮花より華鳥の方が古いらしいが、その華鳥もあまりよくは知らないと言っていた。


 さて、月桂と鮮花について、桜様は

「もともとそのつもりだったのよ。だけど、貴方が臣霊に認められなかったら返してもらうつもりだった。それくらいのものよ」

 と付け加えた。

 認められてよかったんだろう。みかぎられるとこだった‥。

 さて、臣霊に認められるというのは、凄いことだった。もう溺愛に近い愛情に忠誠心だ。そういうことに慣れない紅葉はただただ赤面してしまう。

 しかも、一緒に、という感じではないのだ。両方が両方、「自分が」「自分の方が」を主張しあうのだ。

 今までは、何とかうまくいっていたのだろうに(多分だけど)。どうなってしまったんだろ。

 ‥仲良くしてほしい。

 紅葉はため息をついた。

 真相は、なんてことはない。紅葉の見えないところで、ケンカをしていただけの話だ。この二人は性格が全く違うので、ケンカが絶えない。

 ‥でもちょっと楽しそう。兄妹みたい。

 ほほえましく思えるのは、この二人には内緒だ。


 あの後、紅葉は見慣れない部屋で目が覚めた。

 ‥ここはどこだろう。

 紅葉はぼんやりと周りを見た。

 どうやら、ホテルの一室の様だ。窓際の一室だけがフローリングになっており、そこにテーブルセットが置いてある。そこで二人の男女がゆったりと座ってコーヒーを飲んでいる。

 誘拐犯‥?

 旅館の仲居さんの様な柄のない桃色の着物を着た若い女の人と、高校生くらいの男の子。その顔を見て、紅葉ははっとなった。

 ええ?!

 と、その視界を遮るように四つの目が紅葉のすぐ近くまで近づいて来た。

「わああ?! 」

 驚いて、目が一気に覚めた。

 寝ている紅葉を覗き込むように二人の『人間の様ななにか』が枕もとに座ている。

薄っすらと後ろの景色が透けて見える状況から、二人が人間ではないことはすぐわかったが、それでもそれ程驚きもしなかったのは、女の子の方の臣霊に見覚えがあったからだろう。男の方の臣霊は初めて見た。月桂という名前だということもこの時知った。

 急な出現には驚いたものの、

 ‥ああ、今まで私の中でなにやらごちゃごちゃ言っていたのは、この二人だったか。

 と、特に驚きはなかった。

 紅葉が起きたらしいことに気付いたコーヒーを飲んでいた男女が紅葉の元に来た。

 と、それと交代するように二人の影も消えた。

「ええと。貴方は‥? 」

 ゆるゆると起き上がろうとすると、着物の女の人が紅葉に手を貸した。

 紅葉は、反射的に男の子に背を向けた。

 知らない男の子に寝顔を見られるなんて恥ずかしい‥。

 その男の子は、さっきの事を謝り、自己紹介をした。

 その名前に驚いて、思わず思いっきり振り向いてしまった。

「相生 四朗‥」

 すっごい綺麗な男の子! 。この人が桜様の息子さんなんだよね‥。私は今までこの人の代わりに暮らして来たんだよね。すっかり、忘れてたけど。じゃあ、この人が私の代わりに‥。

 動揺はしたものの、それは隠して

「ああ、貴方が桜様の息子さんだったんですね」

 と、言った。たぶん、変な感じにはなっていなかっただろう。

 しかし、顔が時々熱くなるのは、止められなかった。

 と、それが顔色に出ていたのだろう。四朗君が慌てて弁明しようとしたときに、あきれたような声が二人の間を割って入った。

「何考えてるのよ。四朗様はそんな変態ではないし、別に女には飢えてませんわ」

 そう言ったのが、華鳥。四朗君付きの臣霊だった。(と、彼女自身が自己紹介した)

「姿を見せるのは初めてですわね、四朗様」

 と言った華鳥に、四朗君は

「ああ。君が‥」

  と言ったっきりだった。

‥初めて見たのに驚かないものなのかしら。

と紅葉は驚いた。

そして、華鳥は紅葉の方をゆらりと向いて

「貴方、四朗様がいやらしい感情でもって貴方の体を見ただとか、触っただとか、そんなこと考えてません? そんな考え、四朗様に失礼だからちょっっとも持たないで下さいませ! 」

 びしっと言った。

 急にそんなこと言われて赤面する四朗君。かわいそうに‥。

 ‥いやらしい感情でって‥

「‥やめてくれ‥」

 赤面したまま顔を伏せる四朗。本当に、気の毒になった。

‥これは、絶対面白がっている。四朗君の反応と、私の反応を。

そんなことを紅葉は思った。あんまり四朗君が気の毒だったので、紅葉は

「すみません、そこまでは‥思ってません。大丈夫です」

 と、フォローを入れたつもりだったのだけど、四朗の顔はますます真っ赤になっていた。

「あら、ごめんなさいね」

 ふふっと華鳥が笑う。

 ‥絶対わざとだろ‥

 四朗も紅葉も赤面して俯いた。

「まったく、華鳥ったら。紅葉様を困らせないで下さる? 」

 ツーンと鮮花が華鳥を睨んだ。

 あれ? なにかこの二人、違和感がある。

 鮮花の方は、顔が分かるのに、華鳥の顔が分からない? 

 紅葉は首を傾げたが、それ以上は気にならなかった。


「あの」

 少し落ち着いてから、紅葉が四朗を呼んだ。

「なに? 」

 振り向いて、ふわり、と笑顔を向ける。その鮮やかなこと。これ、相生の父さんのスマイルだ! すごいな。やっぱり本物は違う。キラキラが違う。

 そして、気付いた。四朗が目線を自分にぴったりと合わせていないことに。これって‥

 紅葉は、しっかりと四朗に視線を合わせて

「私、柊 紅葉です、相生 四朗さんですか? 」

 一瞬、四朗が驚いた顔をする。しかし、すぐに笑顔に戻すと、紅葉にしっかり視線を合わせる。

「ええ。相生 四朗です」

 鮮やかな笑顔にくらくらする。恋とは違う。ただ、意識が全部そっちに持っていかれそうな気持になる。‥魔性の笑みだ‥。

 澄んだ茶色の瞳が、もっと淡くシトリントパーズみたいに見える。

 綺麗‥。

「ああ。沢山言葉を学ばれたんですね。苦労を掛けさせてしまって」

 ふふっと笑う。ああ‥良かったですね、相生のおじい様‥。この人こそ相生の求める相生の跡継ぎですよ‥。

 と、はっと意識が戻る。

 私の意識を乗っ取らないで下さい! 

 ぎん、っと意識して四朗を睨み返すと、四朗がまたちょっと驚いた顔をした。

「さすが、母さんが認める紅葉さん。自力で意識を自分に戻した人は初めてです」

 面白そうに笑う。もう、何なのよこのキラキラした人。心臓が持たないよ。今まで記憶がなくってよかったよ。

「あら、四朗様紅葉様をたらしこまないで下さる? 」

 ふふっと鮮花が笑ったが、目は笑っていない。確実に睨んでいる。月桂に至っては、四朗との間に割って入ってきている。

‥一体何なんだろう。‥愛されてる、のかなあ?

「どうでもいいから、帰りましょう。四朗様は、タクシーをお呼びしますわ」

 と、桜の女中さんが話を切り上げなかったら、どうなっていたことやら。

 その前に、お互いの臣霊を取り替えたりと、手短に支持したのも彼女だった。本当にできる秘書、って感じだ。ただ、月桂には思いっきり恨まれてたけど。

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