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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
四章 入れ替わり
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5.強行

「そうなの。紅葉は修学旅行に行きたいの」

 月桂の報告に桜は腕を組んだ。

「自分の意思を聞いたのは初めてです」

 月桂が付け加える。月桂だって、そんな紅葉の願いを叶えてあげたいのだろう。

「強行しましょうか」

 しばらく黙っていた桜が意を決して顔を上げる。

「四朗を呼んで頂戴」

 障子を開けると、廊下に向かって支持を出す。

「泊まり掛けで出かけるから、柊の家にはそう伝えておいて」

「はい」

 女中が何人か音もなく桜の前に跪いた。

 それからの女中の動きは速かったし、それに対応する四朗の動きも早かった。

「何、母さん。突然泊まりで出かけるなんて」

「四朗に、いえ、紅葉に会いに行きます。そして、紅葉が思い出しだ瞬間すり替わります」

「そんな、タイミングで思い出す? 」

 訝しがる四朗の言葉に、桜はにやり、と笑う。

「ええ。もう、そう遠い話ではないわ。今は兆しはないけど、思い出したらすぐ、って感じね」

「ええ?? 」

 四朗は、まだ納得しない顔で、桜の女中と一緒に車に乗り四朗の住む町に向かった。

 四朗の学校前、下校時で皆が一斉に校門に向かう。

 四朗は‥でも、別に目立つでもなく武生と一緒に何か話しながら下校している。

 多分、あれは武生だろう。昔より背は伸びたが、ちっとも顔が変わっていない。

 四朗はなんだか、懐かさと面白さで、思わずふふっと笑った。

 紅葉はもともと、すごい美少女だ。

見覚えのない子がいるだけでも、四朗の住むど田舎では目立つのに、それがすごい美少女ともなれば、目立つことこの上ない。

「誰だろう、あの子、すっごい奇麗な子。四朗の方見てるけど」

 案の定、一瞬のうちに大変なことになった。

「四朗のファンだろ? もしかしたら、恋人かも! 」

 ちょっとやっかむような声も出る。

「でも、なんか‥ちょっと、似てるね」

 と言ったのは、四朗のファンの女の子だ。

「きっと親戚よ」

 恋人とかそういうのは、認めたくないらしい。恋人発言した男子を冷たい目で睨んだ。

「親戚?? 」

 反応したのは、相崎だった。ばっと、みんなの視線の先を見る。

 すごい美少女!

 だけど、確かに四朗に似ている! あの子が、四朗の身代わりだ! 間違いない。

 何のつもりだ! 出てきちゃ駄目だろ! しかも、女の子の恰好なんてして! 

 待てよ。じゃあ、つまり教室でさっき武生に殴られてたのはやっぱり四朗の方か!


相崎にそんな心配をされているとは露も知らない、見かけ紅葉の四朗。

‥さっきから、視線がやたら気になる。みんなの、「誰だろ」という視線じゃない。もっとこう、なんか違う視線が‥。

ちらり

恐る恐る視線の先をたどる。

「わあ! 」

 ええ‥と、なんか見たことあるな。整った顔だけど、見るからにこう‥チャラそうな男。こいつ‥! ええと! 相崎か!

 なんで、相崎が初対面の女の子の紅葉を睨んでいる?! 睨んでいるというより、なんかジェスチャー送ってきているぞ? 何? 隠れろ? なんで隠れる?? 何から隠れろ??

 四朗は「え? 」という顔をした。

「相崎? 誰その‥! 」

 不審な相崎に気づいた相生君が訝しそうに相崎と、相崎の視線の先を見る。

 と、その瞳が瞬間信じられないものを見たように見開かれる。

「今ですわ! 」

 女中の叫び声に四朗は、とっさに見掛けが四朗の紅葉に思いっきり飛び蹴りをした。蹴りは、四朗の頭に直撃して四朗は一瞬でバランスを崩す。いつもなら、四朗をかばって動くであろう武生はなぜか、金縛りにでもあったように微動だにしない。ただ、信じられないような顔をしてそれを見ていた。

「きゃああ?! 」

 周りが一瞬で騒然とする中、四朗は、ゆっくりと倒れる見かけが四朗の紅葉を横抱きで持ち上げると女中と一緒に、止めていた車に押し込んだ。

「ええ!? 」

 余りのことに唖然とする周囲、そこでやっと武生が動いた。正確には、動けるようになった。

 金縛りにあった‥。

 一番に思った感想はそれだった。四朗が白昼堂々誘拐されたことより、むしろ。

 だって、男だし。相手は親戚だろ? むしろ、女の子に一撃とか、かっこわりいな、って位の感想だ。

 洗脳されていない武生は、相崎の四朗に対する扱いと特に何ら変わらないような扱いでしか四朗を扱わない。

 これから、月桂の洗脳がすっかり解けたら、四朗との噂も消えるだろう。まあ、一部の根強いファンには、「破局説」とか「ツンデレ説」とか新たな噂を立てられちゃうんだけど。


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