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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
四章 入れ替わり
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3.修学旅行のお知らせ

 小中高一貫の、紅葉姉妹が通う学校は、中学校の修学旅行がない。そのかわり、高校の修学旅行は海外に行くのだという。小学校の時にはあったのだが、事故の後間もなかったので欠席した。

 だから、この高校の修学旅行が紅葉ちゃんの初めての修学旅行になる。

 学生生活最後の修学旅行にはぜひ参加させてあげたい。

 なので、入れ替わりはそれより先に行わなければいけない。

 入れ替わらないと、旅行自体欠席するしかないしね。

 俺は‥。修学旅行なんてどうでもいいけど、年を取った時に、無性に寂しくなるかもな。そんな気がする。母さんに相談したら、少し考えたあと「それもそうね」といった。あの人もほぼほぼ、都合第一主義だから、思い出つくりみたいなものが多分二の次になってしまうんだろう。

 遺伝だろうか。

「柊さん」

 と、後ろから誰かの呼ぶ声に気が付いた。

 確か同じクラスの小西さんだ。吹奏楽部に入っている大人しめの女子。よく放課後、部活が始まる前に音楽室に入って練習しているのを見る。小さな体には不似合いな大きなホルンを一生懸命に吹いている。

「小西さん」

 と、つい相生スマイル。相崎のいうところの「女たらしスマイル」だ。

 小学生だった頃‥まだ普通に四朗だった頃‥、癖で営業スマイルを浮かべた俺に「しんちゃんの笑顔って、あれだね。女タラシスマイルって感じだよね」って相崎が言ってきたんだ。相崎はあの頃、自分よりモテるものには容赦なかった。‥俺はそういうのじゃなかったんだけど、妙にモテようとしている様に思われたのかもしれない。そういえばあのころから、相崎は女の子の目とかやたら気にしていた。ませてたんだろうね。

 注※小学5年生位の事だから、普通です。四朗が特別淡泊過ぎただけです。

「! 」

 小西さんは、ちょっと顔を赤くして口ごもった。

「どうしたの? 」

「もうすぐ‥修学旅行だね」

 ちょっと首を傾げて続く言葉を促す。小西さんは、はっとここに来た目的をおもいだしたらしく、しかし、言いにくそうに話し始めた。

 少し話すだけだのにこんなに緊張されている‥。俺は、よっぽど話しにくい雰囲気を出しているのだろう。

 思えば、ほとんど誰とも話してこなかった。

 これは、反省しなければいけないな。

「そうだね」

 なるべくにこやかに相槌を打つ。

 笑顔を心掛けたからか、小西さんも、少しリラックスしてきたようだ。

 笑顔は大事だ。

「もし、よかったら、一緒に自由時間回らない? 」

 ちょっと、間を空けて小西さんは何かを決意したように言った。

「え? 」

 考えてもいなかった言葉に、つい固まってしまった。

 自由時間。

 そういえば、そういうものもあるな。それは、重要だな。

 ごくり、とつい唾を飲み込んでしまった。

「あ、誰かと約束してたらとかだったら、いいんだよ? ごめんね」

 わたわたと焦る小西さんに、思わず大きく首を振ってしまった。

「そんなの、ないよ! 一緒に回ろう! 」

 思わず、即決しちゃったよ。なんだろ、この子。かわいい。

 千佳ちゃんとか母さんのメイドさんとか、癖のある子しか見てこなかったから、こういう素朴な子に悲しい顔されると、焦ってしまう。

「あ! 私も一緒でいい? 私も柊さんと話してみたいって思ってたんだ」

 今まで遠巻きに見ていた、クラスメートが走り寄ってきて言った。名前は、確か‥なんだっけ、陸上をやっているのを見たことがあるような気がする‥で、クラスのリレーの選手に選ばれた子だよな‥。

 小西さんとは違って、いかにも活発そうな感じの子だ。

「美恵ちゃん」

 小西さんがにこり、と笑う。友達なんだろうか。

「じゃあ、三人でね」

 美恵ちゃん(たしか、野上さんだ)が楽しそうに笑った。

 そんなこんなで、美恵ちゃん‥野上さん、小西さん、そして紅葉の三人で班を組むことになってしまった。勝手に決めちゃったりして悪かったなあ。でも、いい子そうな子たちだから、きっと紅葉ちゃんも気に入るよ。

 多分。わからないけど。

 そういえば、学校での紅葉ちゃんってどんなだったんだろう。家とは違うってこともあり得るよな‥。こんななのに、よく今まで皆に気づかれなかったな。それほど、皆の中の紅葉ちゃんの印象が薄かったのかな? どうしよう‥確かめようがない。

 家族は、「変わった」って言ってたな。そう言えば。

 ひやり、とした。

「あと二か月後だね。楽しみだね」

 そんな事を四朗が考えているなんてもちろん知りもせず、小西さんたち二人はにこにこと手を取り合っていた。

 二か月‥。

 つまり、入れ替えのタイムリミットも二か月後。


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