表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
四章 入れ替わり
25/165

2.紅葉を探して

 と、そんな二人の遣り取りを柱の陰で聞いていた、見かけ紅葉の四朗もまた、感動のあまり泣きそうになっていた。

 聞いた? 「紅葉ちゃん」。君の妹はなんていい子なんだ!

 俺の弟もいい奴だけど。(多分。うん、悪い奴じゃない。)でも、ここまで、いい子かどうかはわからない。どうだろ。

 ‥博史元気かな。

 そもそも、あいつも俺が「変わった」って気づいているんだろうか。

 千佳たちは、やっぱり気付いていたんだ。それなりに、うまくやって来たつもりだったけど、この頃は特に自分のしたいことを優先してきたしな。

 この頃、で済まないか。

 ふと、自分の体じゃない紅葉ちゃんに自分は気を遣わなさ過ぎたことに気づいた。

 肌の手入れは充分している。髪もとかしている。成績だっていつも首位で紅葉ちゃんにとって悪いことは何もしていない。

 だけど、何もいいこともしていない。

 紅葉が紅葉の体で体験したであろう、楽しいことをまったくしていない。

 そのことに、今まで気づかなかった。

 まあ、確かに俺がしても仕方がないから、それはいいだろうが、紅葉ちゃんとの思い出が誰の心にも残っていない。それが、問題なんだ。

 そもそも、自分には学生時代をエンジョイするなんて気持ちが、端からなかった‥。

 紅葉ちゃんの幼いころのアルバムを見たが、みんな親の愛情を感じるものだった。日々の何気ない写真は、小学校になってからはさすがに減ったが、それでも運動会の写真は毎年撮られていた。

 それは、自分が紅葉としてここに来た後も続いた。

「笑って」

 楽しそうにカメラを構える父親に、どう笑っていいのか分からなかった。今ここで求められているであろう笑顔。楽しそうに笑うことなんて、したことがなかった。

 笑顔と言えば、条件反射で出る営業用スマイル位だ。

 紅葉ちゃんみたいに、はにかむようで、優し気な微笑みは自分にはできそうにない。根っからのひねくれものには、無理な話だ。

 だけど、そんな素振りを他で見せてしまうなんてへまもしたことがない。そつなくこなせてきたという自信はある。

 さっきの話を聞いたところ、紅葉ちゃんもそういったタイプだったんだろう。

 あのはにかむような眩しい笑顔の向こうに本当の紅葉ちゃんがちらり、と見えた気がした。

 紅葉ちゃんの厳しさや決意。ストイックに、ただ自分を高める為に。そして、それは自分のためじゃない。

 たぶん、妹にとっていい姉でありたいとか、両親にとっていい子でありたいとかいった理由なんだろう。

 俺にも覚えがある。

 でも、これは今ではむしろ自分のためだ。だらしない自分なんて考えらえないし、相生の家をないがしろにする自分もまた然り。

 だけどそれは別問題だ。自分のことと、他人の‥紅葉ちゃんのことを一緒にしちゃだめだな。

 紅葉ちゃんには、千佳ちゃんが言ったように、自分の幸せについて考えて欲しいよ。本当に声を出して笑って欲しいよ。友達と馬鹿笑いしたり、時々は騒いで大人に注意されたり。(は、ダメだけどね)

 紅葉ちゃんには、幸せになってもらいたい。

 俺のために犠牲とか、かわいそすぎるし、何より俺が俺を許せない。

 早く、早く戻れるようにならなければ‥。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ