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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
三章 意識と無意識
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3.二人の心配

 色々とショックなことをいっぺんに聞かされた。

 俺と武生が噂になっていたりという、母さんにとってはどうでもいいような小さいこと‥から、紅葉が記憶喪失になっているという母さんにとっては一大事までびっくり情報満載だ。

 聞けば、紅葉は入れ替わりの際の事故によって記憶喪失になっていたようなのだ。

よくも今まで放っておいたと憤る母さんに、月桂は

『知らせるタイミングが合わなかったし、記憶喪失で自分が男だと思ってくれているほうが都合がよかった』

 と、けろりとして言った。

 本当にそう思っているのだろう。

 人間に似ているけれど、彼は人間ではないから、ちょっと、そこらへん普通の人間の感覚とは違うのかもしれない。

 だけど、この頃なんとなく紅葉の記憶が戻りそうな兆しがあるらしい。

 その時、自分が見た目だけ男だったら紅葉はどう思うか。

 主にサポート側の都合だけで今まで暮らしてきたけれど、月桂は「その時」の紅葉の気持ちを考えると居ても立ってもいられなくなったという。

 今は反省している。と、紅葉を思って声を震わせる月桂は、目の前にそのすり替えによって同じく困っているであろう人間がいることはどうでもいいらしい。

 あくまで、母さんも月桂も紅葉が心配なのだ。

 まあ、いい。女の子を心配することは大事だ。俺だってそうする。

 だが、月桂よ。自分がたてた計画が失敗して、ここにいる本体にも迷惑が現に掛かっているのだから、一言くらい謝ろうよ‥。

「四朗。そんな目で月桂を見ない。あんたって、ちょっと女々しいところあるのね」

 さらに、追い打ちを掛ける母さんの言葉。

 俺は、目を伏せてうつむいた。

 考えるな、四朗。あきらめろ。

 心の中で自分に言い聞かせた。

「とにかくは、まだ記憶が戻らないように気をつけてあげて。10歳のころならまだしも、17歳の乙女が急に男の体を見てしまったら、ショックが大きいわ」

 悪かったな。

 しかも、10歳のころならまだしもって、10歳でも十分驚くと思うぞ。

 現に俺は、10歳のころから一度もこの体を見ていない。鏡を見ても、髪の毛がはねていないかを確かめる程度だ。

 触ったところで、自分の体なわけだから風呂もトイレも関係ないし。気をつけると言ったら、女性用の個室に入るのを忘れないようにするくらいのことだ。

 銭湯なんていかないし、旅行も休んできたから大浴場でほかの女子と風呂に入る機会も回避してきた。

 しかしながら、そんな俺に母さんは、ことある毎に、もうくどいほど、道徳だとか騎士道精神だとか切々と説いていたな。

 そんなこと心配されなくても、俺は紳士だ。紅葉さんに恥をかかせるようなことなんてしないというのに。本当に不本意だ。

「そうですね。全力でお守りします」

 力強くうなずく月桂。

 なんだろう。この二人のずれまくった会話。

 四朗はいろいろあきらめて、二人の会話を俯いたままぼんやり聞いていた。

「私はこれから色々準備に忙しいから、貴方のことはかまってられない。だから、貴方が自分のことはしっかりしなさい。さっさと西遠寺の力をマスターしちゃいなさい」

 急に、桜が四朗を振り向いて強い口調で言った。

 四朗が顔を上げる。

「え!?  はい! 」

 とっさに、姿勢を正して叫んでいた。

 俺も、記憶を取り戻した紅葉さんに自分の裸を見られたりするのも、それでドン引きされるのも嫌だ。

 自分の体だと思って、無意識で見るのと、他人の体だと知って見てしまうのでは大きな違いがある。しかも、それが異性の体だとしたらその意味は全く違うだろう。

 ‥何とも思わない人ってのも、嫌だけどね。

 なんとか、紅葉が記憶を取り戻す前に‥、

 自分が女の子だって思い出す前に、入れ替わりを行わなければ!

 頑張ろう!

 決意を新たにする四朗だった。


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