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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
補充の章それぞれの『克服』
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5.恋愛は別として、結婚に一番縁遠い人 (上)

「ひろぷー」

「博文やろ。なんだよ、ひろぷーって」

 あはは、軽い笑い声の突っ込みが入る。

「は? 俺、博文っていいましたけど! 」

 突っ込みを入れられた方が真っ赤になって突っかかる。

「舌足らずか! 」

 この二人は、中川と小林。「漫才師? 」って位よくつるんでる。いいコンビなんだ。いつも一緒にいるから、博文は「中こば」って二人のことを呼んでいる。

 ひろぷーって言った方が、中川。突っ込みを入れた方が、小林だ。

 くすくすって軽い笑い声が聞こえて、

「でも、ひろぷーってかわいいかも~」

 って甘ったるい声を出したのは河合。

 「ぶりっこ」って、陰で言われててあんまり評判は良くない。

 まあ、でも確かに河合のこのキャラは作ってる。河合も一応は「作ってないです~」って言ってるけど‥。まあ、作ってる自覚あるよね。(まあ、ないとか、ないでしょう。だとしたら、ホントにヤバい)

 作ってる自覚もあるし、バレてるのも知ってるけど、それがどうしたのって心意気がいっそすがすがしい。

 そうやってぶりっこしてるけど、時々、黒い顔でぼそっと毒を吐くのが、ちょっと癖になる程面白い。顔が可愛いから余計だ。

 ‥これで、ホントにダダの可愛いだけの女の子だったら、多分つるんでなんていなかったね。

 博文はそんなこと思ってるんだけど、多分、それは中川や小林も同じだろう。

「河合って、見た目甘いのに、中に何が入ってるかわからん。ホンマ、チョコエッグみたいな女やなっ! 」

 とは、小林。

「え~。ウイスキーボンボンのがいいなぁ。周りは甘くってぇ、食べたら酔っぱらっちゃう大人の女♡ 」

 河合がぷうって顔を膨らませて言った。

 その仕草は可愛いんだけど、言ってることはあんまり可愛くない‥。

 ‥ホント、キャラ設定中途半端なとことか、マジ面白い。

 博文は「なんだそりゃ」って笑った。

「ま、その路線は、もうすこし大人になってから狙ってくれ。今は、チョコボールキャラメル味で十分でしょ」

 と、中川。

 外も甘くて、中も甘い。

 だけど、ちょっと口にひっかかる。偶に銀歯を取って行ったりする。

 一筋縄ではいかない、ちょっと癖のある女の子、的な?

「あたしぃ、ピーナッツ派。キャラメルはぁ歯にくっつくもの」

 ああいう、甘んまあい感じではないんだけど! 

 河合の目がそう、抗議している。

「まったく、河合は‥。博文も大笑いしないの。また悪目立ちしてるよ? 」

 ボーイッシュな女子、松原が呆れた様な顔で言った。

「あの‥博文君、ちょっといいかな‥」

 と、さっきまで教室の後ろの戸のところで中を‥博文たちの様子を伺っていた女子が、意を決してって感じで教室に入って来て博文の前に立った。

「え? うん。今から職員室行くから行きながら話聞こうか? それでいい? 」

 博文が、にこっと笑って愛想よく言った。

「え‥、ええと‥、出来れば二人で話したいんだけど‥」

 女子が、ちょっと言いにくそうに、中こばたちの方を見る。

 中こばは、「別に見てないぞ」という顔をする。

 二人は、こういうことに慣れてて、今更冷やかしたりとか、しない。(そんな性格悪くもないしね)

「じゃあ放課後」

 博文が、言って、その子も頷いて教室を出ていく。

 ふうん、って中こばが言ったのが聞こえた。

「さっきの子って隣の組の子だったっけ。確か、七尾? 相変わらず博文はモテるね」

 中川がこそ、っと言った。

「でも、付き合ったりとかしないよね~。まあ、皆が居る前で、ああいう話するような~、無神経な女どうかと思う~」

 河合がまた、さらっと毒を吐く。

「河合は、博文の事好きとかってそういう気持ちあるの? けっこう、「河合って博文君狙い」って言われてるけど」

 松原が何気ないって風に言った言葉に、どきっとした。

 言ってる内容‥「河合って博文狙い」にじゃない。

 松原がこんな話をしたことに、だ。

「ないわよ~。あったら、こんなに慣れあったりとか、有り得ないし~」

 河合が、さも興味なさそうに、だけどいつも通り可愛い表情で言った。

「そういうもの? 」

 松原が首を傾げる。

「恋愛って、日常生活とは別のところにあるものだしぃ~? 」

 ふうん? 

 松原はあんまり納得していないようだ。否、理解できていない。

 ‥そういうものなのか。

 と、博文も、なのだが。

「まあ、よくわかんないけど、ちょっと職員室行ってくる」

「あ、行ってらっしゃい。委員会の分? 」

「うん」



 河合ってああいうとこ、きっぱりしてるから、分かりやすい。

 分からないのは、松原。

 松原が、自分の事話しているの見たことって、ない。

 兄ちゃんもだけど、兄ちゃんは見てたら、何となくわかる。

 いやなこと、とか特に。

 だけど、松原は分かんない。

 中学に入って以来ずっと一緒だったのに。だ。



 髪の毛をベリーショートに切って、俺とおんなじテニス部に入って、真っ黒に日焼けして、馬鹿みたいに練習して、はしゃいて、時々姉貴面して。

「悩んでいるなら、言ってよ」

 って怒るし、泣くし。

「一人で苦しむなよ」

 って泣きながら、怒るし。

 でも普段は中こばや河合とバカばっかりやって、

 一緒にいて楽で、面白くって。

 女っぽくなくって。

 でも、笑ったら、すっごい可愛くって。

 ‥俺だっている。可愛いって思う子くらい。

 この前兄ちゃんと、「ずっと「一緒にいたい」になる感覚は、よくまだ分からない」って話した。

 その時は、確かに、そうかもって思った。

「あ~。確かに。今何してるかな~? とかってのは、無いよね。俺もそれはそう‥」

 って言った。

 確かにあの時は。

 だけど、「こんな時、松原ならどう思うだろ」とは思うって、気付いたのは結構最近。

 だけど、それって恋愛とは違うから、まあ、関係ない。

「面白いもの、綺麗なもの見てて、一緒に見たいなって」

 そういうのが恋じゃない? って兄ちゃん。それは、きっと間違いじゃない。

「松原なら、これみたらなんていうだろ。なんかめっちゃくちゃ面白いこといいそう」

 は、きっと恋じゃない。

 そんな色気がない‥。

「こういうことしたいなって」

 松原とというか、皆での方が楽しいに決まってる。

「出来れば二人で話したい‥」

 が、恋‥。

 やっぱり、松原と俺は恋にはならない。松原に俺は恋愛感情を持っていない。

 でも、さっきのあの子より、俺はきっと(どっちか選べって聞かれたら)松原を選ぶ。

 


 これって、一種の恋じゃない?



「ごめん」

 放課後、七尾と会った博文は、七尾の言葉を待たずに言った。

 直角? っていうくらい、腰を曲げて誠心誠意謝った。

「いいの、今は、博文君がそういうことに興味ない人だってわかってるから、だから、今すぐって感じじゃなくって‥」

 七尾が焦ったみたいに、博文を止める。

 博文が謝る事と、告白を‥断ることを。

 博文が首を振って、七尾の言葉を遮る。

「‥好きな子、っていうか、気になる子‥いるから、ごめん」

 そういって、もう一かい直角に腰を曲げて謝る。

 七尾は聞いていたんだろう。

 博文が、まだ恋愛はよくわからないって今までの告白を断って来ていたことを。

 だから、友達からでいいからって思ったんだろう。

 だけど、これ、だ。

「‥!! 」

 七尾は何も言えず立ち尽くすほかなかった。

「ごめん」

 そして、博文も謝る他なかった。

「うん‥」

 七尾は、辛うじてそう返事をすると、博文を残してその場を離れた。

 ‥誰? やっぱり噂通り、あの顔だけぶりっ子女?! (河合のことらしい)博文君趣味悪い!!

 


「じゃあね~! また~」

 校門前で、博文は相崎に会った。

 相崎は、今日はジムに行くらしく、翔に車で迎えに来させていた。

 だから、いつもは引き連れている女の子たちは、ここでお別れだ。

 相崎は愛想よく手を振っていた。

 そのバカ面に、イラっと来た。

「あ、博くん。お帰り~。相変わらず一人? 君も四朗もあいっ変わらず女っけないね。相生の男子だのに」

 そして、そのバカなセリフにまたイラっと来た。

「でも、俺、兄ちゃんも俺も相崎さんより早く結婚しそうな気がします」

 むすっとした顔で、博文が言った。こんな口調、こんな表情、博文がしているのを見たことはない。

「? なにそれ」

 しかも、「どうかしたの? 」きょとん、っとして相崎が首を傾げる。

「相崎さん、気が多いから女の子同士がそのうち修羅場起こしそう」

 更に、しらっとした視線で相崎を見上げた。

 中学生の博文と、高校生の相崎は、ちょっと身長差がある。

 いっても、まだ博文は成長途中だ。

「そんなヘマしないよ~」

 相崎が苦笑いする。

 一応相崎も訓練を受けている。こんなこと位で怒ったりはしない。

「遊んでて、婚期逃しそう」

 なおも、博文は攻撃の手を緩めない。

「‥何、今日の博くん何。失恋でもしたの? 俺で良かったら話聞こうか? 四朗だったら、そんな話出来ないでしょ? 」

 と、ここで相崎は博文が明らかにいつもと違うことに気付いた。

 こんなこと言い出す、それもおかしいが、それよりもっとその表情が、おかしい。

 怒ってるような、白けているような顔をしているのに、どこか泣きそうな顔をしている。

「いいです‥。自分の問題ですから」

 そう気づいたら、もう「強がりを言っている」ようにしか見えない。

 何ていっても、しっかりしていると言えまだ中学生だ。

 悩んだり、うまくいかなくって悔しい思いをすることもあるだろう。

 ‥四朗みたいに何でもできる奴には、そんな気持ちはわから無いだろうが、普通の人間には、あるんだ。

「まあまあ。年長者の意見も聞いてみるもんだよ? 」

 ‥年長者。

 博文はついいつもの癖で反論しようと思ったが、‥まあ、恋愛については、確かに年長者かもな、とも思った。

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