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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
補充の章それぞれの『克服』
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2.相崎が四朗を苦手なのは、どうやら順番の法則に従っているらしい。

 相崎がチャラい、だから、チャラくない四朗は相崎が苦手。

 どうも、それは、今に始まったことではない。

 二代前は、四朗がチャラかったので。相崎は、そんな四朗を苦手に思っていた。

 つまり、四朗のおじいさんの代だ。

 なんてことはない。その次の代はそんな父親を見て「ああはなるまい」って思って堅実傾向になる。

 チャラくない方だったら、反対に「あんな面白みの無い人生送って嬉しいか? 」ってなる傾向があるらしい。

 だから、チャラいおじい様をみて、四朗父は「これは、あかん」とちょっとだけ、そうちょっとだけ自重したんだ。

 その微妙さがダメだった。

 ちょっとチャラい四朗父と相崎は別に仲が悪くなることもなく、反対に仲が良くなって、ちょっとチャラい相崎が出来た。

 これじゃあ、誰も顔をしかめたりしないレベルだ。

 歴代のチャラい方の四朗も相崎も

「時代だなあ」

 としか言えない。

 だから、まあそのちょっとチャラい相崎父を見て育った相崎もやっぱりちょっとチャラくなったんだけど、ここで変化が起こった。

 四朗だ。

 四朗は、その微妙なチャラさを見て

「真面目が一番いい」

 って最高潮に真面目になったんだ。そりゃあもう、すごく。そして、父親同様ちょっとチャラい相崎にその非難の目は向けられた。

 あまり家にいない父親より、ずっと近くに居る幼馴染の方が目に付くのは必定。

 よって、相崎に四朗の非難の目が集中したのは何も不思議なことではなかっただろう。

 それに、もっと相崎にとって運の悪いことに、真面目な武生までが居る。

「これくらい、普通だろ? 」

 が通用しない、悲劇。



 一方、相崎は四朗にコンプレックスを持っていた。

 四家で筆頭なのは、一郎の名を持つ長男「相崎」だ。

 でも、一番初めに襲名したのは、末席と自分が見下していた相生。(相生は「四朗」と、四番目だからね)次男「相模 藤二郎」様なら年も上だから、ちっとも悔しいとは思わなかっただろうけど、よりによって、四朗。しかも、五歳でって! 相生、基準が甘すぎるだろ! 

 ※この家は、大昔、四人の兄弟がそれぞれ独立したらしく、それ以降、長男が継いだ「相崎」は長男らしく「総一郎」、次男が作った相模は「藤二郎」、三男が作った相馬は「三郎」、四男の作った相生は「四朗」という名前を跡取りである長男が襲名することが決まっていた。襲名するためには、前当主が「よし」と認めることが決まっており、まあ、基準はないが、そう甘くはない。甘い基準で襲名させると他の家からの批判も凄いし。

 つまり、口は出さないと言っているものの、実際は、四家会議で「そろそろ、お前のところよくね? 」って話が出たりもするんだ。四朗は、四歳の地点で、皆も認める実力者だったわけだ。

「よし、俺が見極めてやる」

 そう思って今まで遊びにも行ったことなかった相生の家に敵情視察に行った。

 物陰から、こっそり中を伺う。(きっとばれているだろうが、どうでもいいのできっと四朗は無視していたのだろう)

 そこにいたのは、恐ろしく賢そうな子供だった。

 黒髪で、表情のない冷たい薄茶色の目。整った顔。

 日本人形みたいで、一瞬女の子かと思った。

 自分と同じ年らしい。

 だけど、英語や剣術。与えられた課題を次々にこなす、まさに神童という言葉がぴったりって感じの完璧な子供だったんだ。

(なんてことはない。四朗は臣霊でそこらの子供より当たり前の事ながら賢いし、桜仕込みのハイスペックさだからね)

 しかも、美男と名高い相生の現ご当主様にそっくり。って、噂の美貌。

 ってか、‥相生なんてみんな同じ顔してるだろ!!

 顔だったら、幼い日の相崎だって負けないと自負していた。

 栗色の地毛はどうしたって、癖良くさらっと顔の両サイドに分かれて流れてくれたし、睫毛は長いけど、別にうっとおしいって程でもない。くりっとして、愛らしい大きめの瞳。すべすべの肌。

 はっきり言って、美少年だ。

 同じ年の女の子だけにとどまらず、年上のお姉さんも、俺を見て

「可愛い! 」

「カッコいい! 」

 って言わないコはいなかったね。

 


「相生四朗。ライバルとして認めてやってもいい! 光栄に思え! 」

 でも、相生四朗(五歳の地点で!! )は、しらっとした顔で、ライバル視どころか、俺を見ることすらなかった。

 三男・相馬の次男である武生も、そんな感じだった。

 剣術道場、語学学校、書道。スイミング。

 やたら忙しそうだった。

 悔しいから習ってみた道場は、だけど、運動神経抜群な俺にとって、難しいものじゃなかった。

 だけど、別に面白いものでもなかった。

 前に前に、って相生四朗や武生が熱心に取り組むのを見てると、「なんか泥臭い‥」ってしらけちゃった。

 奴らに勝てない、っていうのも面白くなかった。

 奴らに、勝つのはこれじゃない。

 ‥女の子にきゃあきゃあ言われないし。

 だから、俺は、テニスに鞍替えした。

 スマートで紳士のスポーツって感じするじゃない。あと、乗馬もだけど‥まあ、これは披露する場面が少ない、じゃない?

 でも、今思えば、同じ土俵で戦いたくなかったんだろうね。でも、逃げてるとも思わないし、いいと思うんだ。わざわざ嫌な思いして戦わなくっても、避けられる争いなら避ければいいんだ。現在人だもの。



 護身術の必要性を感じたのは、でもそれからしばらくしてのことだった。

 相生の家は、そんなに大きくないし、相馬も、そう。

 でも、相崎と相模の家は、もう見るからに大きい。

 見るからに金持ちなんだ。

 だから、子供は誘拐とかに気を付けなければいけない。

 登下校とか、ボディーガードがさりげなくついてる。

 でも、100%ってないし、デートにおっさんが付いてくるとかって有り得ない。だから、護身術って必要なんだ。

 でもいまどき‥

 ってどこか心の奥で思ってたんだ。

 そんな時、あの事件が起こった。

 まあ、簡単に言えば誘拐未遂事件だ。

 未遂。

 そう、一瞬でも誘拐されていない。

 


 もう、ほんと瞬殺って感じで、その場に居合わせた小学4年生の相生四朗と武生が誘拐犯二人を伸しちゃったんだ。一人ずつ二人がかりでちゃちゃっと。

 コンビネーション半端なかった。

 ‥普段から、慣れてるの? って感じだった。

(後から聞くと、慣れていたらしい。家の怨恨やら、変態に至るまで四朗はホント大人気だったんだ。そういった人たちに)

 まあ、武生は巻き添えだね。

「実戦経験」

 って本人たちは、気にすらしてないみたいだけど。

 ‥どうかと思う。

 


 それからだな。

 俺が空手を習い始めたのは。

 あくまで、奴らと同じことなんてしたくなかったから。

 今では、それにプラスしてボクシングとかも加えてるよ。トレーニングになるやつね。ボクシングは‥護身術にすると危険だよ(注 格闘技は全部危険)



 俺の人知れない努力なんて奴らは知らないだろうし、知られたくない。

 何故って、俺は長男「相崎」でみんなの憧れ「相崎様」なんだから。



「なっちゃん、ちょっとここ教えてよ」

「え? 相崎様♡ はい♡ 」

 人の出来る部分を見つけられるって、だけど、初めから出来る人にはあんまり出来ないことだと思う。自分の出来ない、苦手なことを認めて、人に助けを求めることもね。

 それを出来るのって、生きていく上で大事だ。

 相生四朗には、きっとそれが出来ない。

 出来ないことなんてきっとないし。人に頼るなんてしない。

 そんな人間って人間的に魅力ないし、将来絶対、ちょっと失敗しただけで挫折する。



 そんな風に四朗を見てた相崎は、四朗が西遠寺の家で、実の母である桜にぼろくそ言われながら日々ボロボロになる近い将来のことはもちろん知らない。



「大人げないから、俺から歩み寄ってやろう」

 って、今では四朗達と話すことはあるけど、(あんまりあからさまに避けてたら女の子に不審がられるから)でも、四朗って呼びたくなくって

「しんちゃん」

 って呼んでる。

 初めて

「四朗だから、しんちゃんね」

 って宣言した時の四朗の間抜け面は今でも覚えてる。

 は? 

 ではない。

 なんで?

 でもない。

 変な顔。



「あいつ、誰だっけ? 」

 武生が、あの後、四朗に聞かれて

「ほら、道場にちょっとだけ来てたことあっただろ? 相崎の長男だよ」

 と答えていた。

 ということは、相崎は知らない。

 言った本人の四朗や武生はもう忘れているだろう。

 そんな些細なこと。



 つまり、あの「間抜け面」の正体は

「誰? 」

 だったんだ。

 


 まあ。それは、今後も分かることはないであろう衝撃の事実だ。

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