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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十三章 未来を想う
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8-2.四朗のお泊り。 ~かって知ったる家~

「何、兄ちゃんお泊り? どこで? 」

 電話が四朗からだったらしいことが、母親・静の話しぶりから分かった博史が、静に聞いた。

 博史の声がきこえているのか、静は眉を寄せて考え込む様にちょっと首を傾げている。

「また、ひいじいちゃん家? 」

 その様子から、「違うな」と思いながらも、一応一番ありそうな可能性を挙げてみた。

「なんでも、紅葉さんのお家にって」

 そこでやっと静が博史を見る。

「紅葉ちゃん? 」

 博史がきょとんとした顔になる。

 それは流石に予想になかった。


 明日は日曜日だ。確かに、今日泊って明日帰ってきても問題は無かろうが、問題は宿泊先だ。

 女の子の家はまずいだろう。

 しかも、彼女はよりによって幼馴染の婚約者だ。

 ‥そりゃあ、まあ今までだってそこに住んでたわけだけど‥。

 そんなこと思って、「あ、そうなんだなあ」

 って今更のことなんだけど気が付いた。

 ‥紅葉ちゃんがここに、兄ちゃんとして住んでた時、兄ちゃんは紅葉ちゃんの家で、紅葉ちゃんとして暮らしていたんだ。

 なんか、不思議な感じ。

 紅葉ちゃんにも妹がいるって言ってた。じゃあその妹は、兄ちゃんのことを姉だと思ってて。

 うわああ、姉とかってない。

 考えただけで、ない。どんな顔して、兄ちゃん、「姉」してたんだろ!

 いや、落ち着け落ち着け。どうせ、今とほぼ同じ感じだ。姉でも兄でも特に変わらない安定の無性別生活してるんだ。考えてみろ、兄ちゃんだぞ。

 そんなことより。

 ‥じゃあ、兄ちゃん今日、紅葉ちゃんのとこに行ってたのか??

「ちょっと行ってくる」

 ってぶらっと出かける距離じゃないでしょ!

 ‥これからは、どこに行くか確認しよう‥。

 と、まるで気分は保護者だ。

「どういうことかしら、幼馴染の武生さんと婚約もされたお嬢さんのお家にお泊りなんて‥」

 静もやっぱりそれを気にしている。

 そうそう。多分それを気にしないの兄ちゃんと紅葉ちゃんだけだよ。

「間違えても、『間違え』なんて起こらないと思うけど‥」

「え! 」

 間違え!

 静が恐らくな何気なく言った言葉に、博史は盛大に赤面した。

 狼狽える博史に、静が驚いて「いや、あらごめんなさい」とつい謝る。

「ないとは思うけどね」

「ないでしょう! 」

 博史は断言し直す。


 心臓をバクバクさせながら

「気になるなら、武生さんに知らせて置こうか? 」

 と、取り敢えず口を出た言葉に、我ながら名案だ。と一人で納得した。

「‥そんなことして、喧嘩にならない? 」

 静が心配そうな顔をする。

 それはそうかも‥。

「兄ちゃんに相談してみる」

 そう、最初に兄ちゃんに電話して聞いてみればよかったんだ。

 ‥紅葉さんとのことではない。

 なんで、俺に言わずにふらっと出かけたんだ、ってことを。

 俺はちょっと怒ってるぞ!

 いやいや、違う。「武生さんに言っといた方があとあと良くない? 」だ。あとでぽろっとそんな事実が露見したら「なんで黙ってたんだ」って話になって、そういうのってなんか誤解を与えて‥。

 まあ。あんまり良くないって話。

「そうね」

 静は、納得して頷いた。

 で、今の電話に至ってる。

「へ? 武生に? 何で? 」

 電話口、やっぱり何も考えていない四朗の声。

 でも、暫くして「ああ」と一人で納得した様な声を出す。

「ああ、そうね。まあ、一応そうかもね‥」

 博史に「武生に一応言っておく」と約束して四朗は電話を切った。


 四朗から電話で、今回の事情を知らされた武生は驚くほどあっさり「わかった」と頷いて了承した。そして

「紅葉さんにご迷惑を掛けないようにな」「あとでお礼をするように」

 と、まるで保護者の様な事を言った。

 ‥そんなこと言われなくても分かっている。

 ため息で四朗が通話終了ボタンを押そうとすると

「四朗。‥無理するなよ」

 電話口から、武生のため息交じりの声が聞こえた。「呆れた」と言う様な口調。

「武生が俺の事心配するなんて珍しいね」

 くす、っと笑って四朗が返事をすると

「別に心配なんてしてないけどな」

 ちょっと機嫌が悪くなったらしい声が返ってくる。

「はいはい」

 このツンデレ。ホントに千佳ちゃんに似てるな~。

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