7-4.紅葉の敗北 跡取り選考会結果
四朗君。恐ろしすぎる。女の私より色っぽいとか、‥自信なくしちゃうなあ。勿論、女っぽいとかじゃない。麗人って実像にしたらきっとこう、っていう感じなんだ。
とまあ、ぼんやり「冷静に」感想を心の中で述べてたのは、私一人。気が付けば、周りは全員固まってその場で機能停止してた。‥もう一人の例外を除いて、だが。
四朗君は、何か特別な話をしたかな? 天気やごく普通の世間話をすこししただけな気がするんだけどなあ。
やっぱり、私もそんなに覚えてないや。
そんな中ただ、一人「く、不覚! 」と、悔しそうな顔で四朗君を睨んでいた、西遠寺の分家の少年だけは、ちょっと印象に残った。
西遠寺 春彦さんって言ったっけ? 桐江さんが「連れてきた」少年。まだ小学生らしい。
西遠寺の本家は、全員名前が植物の名前で、季節を名前に入れるのは、先代の兄弟の子供ならしい。本来なら私も「春江」とかになっていたんだろうか。いや、母が跡取りになっていた場合、桜様の子供である四朗君が春夫だとか夏彦だったんだろうか。‥似合わない。
まあ、それは余談だ。
彼は、私と一緒で、四朗君の質問に答えていない。私が、周りの様子を静観して発言しなかったのとは違って、彼はただ四朗君を睨み続けていたんだ。歯を食いしばってただ、睨み付けていた。
私が有利だったのは、ただ四朗君に耐性があった、その一言に尽きる。
初めて会った時、四朗君があんなに「好戦的」に話してたら、私だって視線を合わせらえていたかどうかは分からない。あの時、四朗君はとても穏やかに会話していたから。
今の、春彦少年とは状況が違う。
きっと、彼はここの皆の中で頭一つ分抜きんでていた。彼が、跡取りになるだろう。
普通に、負けを認めるしかない。
跡取りになりたくないからいうんじゃない。私には、自信があったんだ。‥跡取りになろうとなるまいと、候補生の中で一番実力があるのは自分だって。断るのは自分の意志で、って。実際、武生さんと一緒なら断る必要もないわけだし。
でも、結果は違った。
頭の回転もいい。発想力もある。それに加えて、集中力が違う。根性が違う。度胸もある。物怖じしない、明るい性格。彼には、華もある。
彼はきっと、いい当主になる。
‥正直、悔しい。
そして、思いあがってきた自分が恥ずかしい。
四朗君にしてもそうだ。
彼は、あんなに話すんだ。話せるんだ。
たぶん彼なら、百円均一のツボを国宝級の値段で売れるよ。
そういえば、四家の仕事は所謂商社だって言ってた。でも、相生家はその中で顧客にあった商品を選ぶ‥つまり提案のプロフェッショナルだって聞いた。四朗君は「要するに、下見係だね」って言ってたっけ。
でも、顧客にセールスも出来るんじゃなかろうか? 少なくとも、四朗君なら相崎より上手に出来そう。(相崎家が、四家の中では通常『営業』の役割を担ってるんだ)‥相馬は、そのマネージメントをしているらしい。規模が大きい一族会社なんだね、つまりは。相模は、弁護士等法律的なサポートをしているらしい。表向きには(実際のところはどうなんだろう)
顧客の要望を探るプロフェッサー。
ああして何気なく話している間に、彼らは桜様の欲しい様な情報をすっかり四朗君によって吐かされていた。
で、
「そうなのですね。貴重なお話ありがとうございました」
の四朗君の笑顔で、完全に機能停止。
自分がさっきまで何を話していたかすら、あんまり覚えていないだろう。
耐性のおかげで、私には、その魔法「自白劇場」は利かなかったんだけど‥。見ているしかできなかった。
春彦少年の凄さは、そのうえで反論(? 反撃かな? )の余地を狙っていたというところだ。結局、一言も四朗君に話しかけられさえできなくて、「く! 不覚」と悔しがる結果となったんだけど。
それは、四朗君の「自白劇場」に巻き込まれたわけではなく、純粋にトークで負けただけなんだ。いっても、場数が違うからね。四朗君とは。
「くそ、あの忍術が解けなかった! 」
なんて小学生の子供らしいことを言って悔しがっていた。(忍術ってなんだよ)‥凄いよ。
完璧なプロ意識だよ。
桜様も、「思わぬ拾い物ねえ」なんて、ニンマリしてたし。
‥もしかして、子供だから色仕掛けが効かなかったのかな? 。なんて思うのも、私の負け惜しみかなあ。




