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相生様が偽物だということは誰も気づいていない。  作者: 大野 大樹
十三章 未来を想う
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3-2.何でも私に話してよ!

「紅葉。話があるの」

 『覚悟が決まったら』と猶予を貰ったのは、昨日。で、今日の呼び出しだ。「もう覚悟は決まったかしら」と言われるのだろうか。紅葉は、今までにない緊張した面持ちで、桜の前に座った。

 しかし、桜の言葉は全く違ったものだった。

「貴女は、貴女の臣霊たちと一度、ゆっくり話をする必要があるわ」

 紅葉は目を見開いて桜を見る。

「え? 臣霊たちと‥ですか? 」

「華鳥が、私に鮮花が悩んでいるらしいと伝えに来てくれたの。そのことについては‥私も含めて、話した方がいいと思って来てもらったの。修学旅行前の忙しい時期だとは、分かっているのだけど‥」

「桜様も含めて? 」

 桜の気遣いに「いいんです」とだけ断って、しかし、話の本筋に会話を戻す。

「ええ」

「むしろ、私が居なければ意味がないかもしれないわ」

 と、そこで桜が昨日、華鳥から聞いた話をかいつまんで話す。

 一に、鮮花と月桂は、今は紅葉の守護臣霊である。

 二に、鮮花は、「自分たちが紅葉の中に居たら、紅葉は、好きな人と一緒に子供を呼ぶことが出来ない。‥好きな人との子供を産むことが出来ない」と悩んでいる。

 心の奥、月桂と鮮花がいる辺りがざわざわとなって、胸が苦しくなる。

 ‥やめて、紅葉に聞かせないで‥、紅葉聞かないで‥

 鮮花の苦しそうな声が聞こえてくる。

 だけど、紅葉は

 『聞かなければならない事だ』と、強い心を持って、苦しそうな鮮花の声を切り捨てた。

 三に、紅葉が呼ぶ魂を退けないためには、自分たちが守護臣霊でなくならなければならない。その為に、自分たちを守護臣霊としている『紅葉への愛(=執着)を除かなければならないと考えている。

 ‥止めて。やめて、やめて!

 鮮花の声は最後には、悲鳴の様に響いた。

「執着を封印されて、四朗君はずっと苦しんできたんでしょう? 桜様から聞いたわ。‥貴方たちをそんな目に合わせられるわけないじゃない! 」

 桜の前であることを、一瞬忘れて、紅葉は鮮花に叫んだ。

 鮮花は、何も言わない。ただ、泣いているのが分かった。

 月桂も何も言わない。

 ただ、歯を食いしばっているのが分かった。

 そんな二人が急に、幼い子供のように思えてきた。

 ああ、私の子供‥。

 そんなこと思った瞬間、胸がいっぱいになった。

「なんでそんな大事なこと自分たちだけで決めようと思うの? 私たちのことじゃない! それに‥私、鮮花たちのこと家族だと思ってるんだから‥。何でも私に話してよ‥っ! 」

 もどかしくって悔しくって、でも、それだけじゃなくって‥。

「私、いっぱい子供を産むわ。鮮花と月桂を産んで、そしたら心は空っぽになるんじゃない? それで、魂をいっぱい呼んで、いっぱい子供を産むわ」

 言ってるうちに、そんなこと何でもなくって出来るような気がしてきた。

 悩むようなことじゃない。そんなこと。

 そんな気がしてきた。

 紅葉は、相変わらず泣きそうで、でも精一杯満面の笑みを浮かべた。

「私は、貴方たちとも一緒に生きていきたいの! 」

 鮮花と月桂の心に直接話しかけるみたいに、優しく楽しそうに、言った。

 紅葉

 紅葉様‥

 泣きながら、月桂と鮮花が何度も頷くのが分かった。

「紅葉‥。ええ、そうね。きっとできるわ。きっと素敵でしょうね」

 向かい合って座っている桜も泣いているようだった。

「ええ。ええ。きっと出来ます‥」

 紅葉も気が付けば泣いていた。

 いつの間に横に来ていたのか、小菊が、ハンカチで紅葉の涙を優しくぬぐってくれた。

 桐江が、優しい微笑むを浮かべてお茶を入れてくれた。

 ぬるめのお茶が心にしみていくようだった。



 泣きすぎて目が真っ赤になっている。そのまま帰宅すると、きっと千佳が心配(心配というか‥怒る?? )するので、久しぶりに紅葉は桜に鏡の秘術を掛けてもらった。

 『紅葉』の顔。

 いつも通りの、紅葉の顔。

 そして、気付いた。

 ああ、そうか。

 泣きたいとき、苦しい時、それをそのまま表情に出しちゃ駄目だから、桜様はずっと『仮面』を被って生活されているんだ。

 って。

 ホントは、悲しいことだって、つらいことだってあったんだって。

 仕方ないことかもしれない。でも、それはなんて悲しいことだろう。‥せめて、誰かがその悲しみを聞いてあげられたらいいのに。それを、‥私は出来るだろうか? 桜は、それを自分に許すだろうか? ‥許さないなら、気付かないでいた方がいい。

 きっと、そんな優しさだってある。

 『家族』だから、って土足で踏み入ってはいけない領域はある。

 それを埋めるのが、桜様にとっての『臣霊』だった?

 私にとっての、『臣霊』、四朗君、桜様にとっての『臣霊』

 桜様にとっての『臣霊』は、多分今、四朗君だけだ。その、四朗君が自分の手から離れて、考えて悩んで、でも前に進もうと懸命にあがいている。それを見つめる桜様は、一人の親である以外何も、ない。

 そして、四朗君も桜様の息子であることは、間違いない。何にも変わらない。



 ‥子供かあ。咄嗟にあんなこと言っちゃったけど。‥考えてみたら、凄い発言しちゃった‥。恥ずかしい‥。

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