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4人目 蝶々

「怖い話をしたら・・・」第5話、はじまりはじまり~。

 当時はそれが何なのか理解できませんでした。

 唯々子供ながらの好奇心で後をついて回っていました。


 わたしは生まれながらにして1人ぼっちでした。

 親からは望まれた出産じゃ無かった事から疎まれ、学校でも誰とも仲良くなれず孤立し、先生からも見向きされず、世間から見捨てられていました。

 唯一虐められるような事が無かったのは良かったけれど、もしかしたら存在自体認識されていなかったんじゃないでしょうか?

 そう考えると虐められてた方が何倍もマシだった気がします。


 そんなわたしがそれ(・・)を見付けたのは、本当に偶然でした。


 林間学校で有名なキャンプ場に行った時、キャンプ場まで行く道の途中でわたしは同じ班の子達とはぐれ、1人迷子になりました。

 きっと班の子達は、いえ、その子達に限らず誰もわたしが居ない事になんて気付いていないでしょう。

 わたしは荷物(粗悪品の詰め合わせ)を背負ったまま、当てもなくふらふらと道から外れ、森の中を彷徨います。


 しおりに書かれていた持って行く物を、親が用意してくれるとは正直思っていませんでした。

 いくらリュックがボロボロだったり、水漏れのする水筒だったり、汚れるけど汗を拭き取るというタオルなど、必要最低限な機能の物しか入ってなかったとしても、用意してくれたのが嬉しかったです。


 もういっそ、このままみんなの前から居なくなろうかと思いながらしばらく歩いていると、ひらりと瞳の前を何かが横切って行ったのが見えました。

 反射的に瞳で追いかけると、横切ったのは自由に空を舞う1匹の蝶でした。

 蝶にそれほど詳しいわけでも無いけれど、その蝶は今まで見たどんな蝶達よりも美しかったのです。

 わたしもあんな風になれれば、見向きされるのかな。


 あても無いのでその綺麗な蝶についていきます。

 蝶は目的地でもあるのかと思えるほど、澱み無く真っ直ぐ飛んでいく上、まるでわたしを導くかのように一定の距離を保っていました。

 この時は疑問にすら思いませんでした。


 しばらくついて歩いていると、みんなの居るキャンプ場に到着しました。

 森の中から現れたわたしには誰も見向きもしません。

 思い思いに楽しそうに過ごし、笑い合っています。


 いつもの事なので気にせずに蝶を見ていると、1人の先生の周りを何周か回った後、空へと消えていきました。

 飛んで居なくなってしまった事に残念に思いながら隅の方に腰を下ろし、ぼーっと時間が過ぎるのを待ってからみんなと一緒に帰りました。


 林間学校から帰ってから数日後、その先生が亡くなったという連絡を受けました。

 見向きもされなかった相手なので、正直何の感傷も湧いて来ませんでした。


 それからというもの、度々あの時の蝶を見かけるようになり、その度ついて回りました。

 最後には決まって何かの周りを回ってから空に消えていきます。

 何かというのは、人だったり動物だったり鳥だったり、総じて生き物でした。


 回られた生き物達は、皆次々と息を引き取っていきました。

 それでもわたしは、その蝶がなんであったのか解りませんでした。

 本当は解ってて気付かないふりをしていただけだったのかもしれませんが、今のわたしには些細な事です。


 ついて回るのを何度も繰り返したある日、その日がやって来ました。


 学校の教室で1人居ると、いつものように綺麗な蝶が舞って来ました。

 その日はいつもと違い、最初にわたしの周りを回ってから先導し始めました。

 もしかして懐いてくれたのかもと無邪気に考え、いつも通りついて行きました。


 その蝶にのみ視線を合わせ、誘われるままについていくと、ふっと身体が軽くなる感覚がありました。

 その感覚に身を任せたわたしは、あぁ、これで自由に空を舞い飛ぶ蝶の仲間入りができるんだと、しあわせな気持ちのままこの世からさよならしたのです。

いかがでしたか?


蝶は色々な作品でも導き手としての印象が多い気がします。

やはりひらひら舞う姿が幻想的に映り、ここではないどこかに飛んで行く様に視えるからでしょうか?

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