3人目 鋏
怖い話本編4弾目!
スタートです!
最近近所で通り魔事件が起こっている。
若い女性が相次いで刃物でめった刺しにされ殺されているという、何とも惨たらしい事件だ。
犯人の手掛かりは一切掴めておらず、被害者に共通しているのが髪がバッサリと切り取られているということだけ。
髪の毛に異常な興奮を覚える異常者の線で、捜査を続けているらしい。
同じ女としては、不安だから早く解決して欲しいと心の底から思う。
恐怖でおちおち出掛けられもしない。
まぁ私の髪は、よく秘書さんがやってるような片耳掛けの首にかかるぐらいのショートヘアーで、長くないから狙われないとは思うんだけど。
それでも完全に安心するほど神経は図太くないから、はやく解決して!
そんな馬鹿な考えをしている私は、仕事が終わらず残業する羽目になっている。
何もこんな物騒な時にまで残業させなくたっていいじゃない!
会社から家まで近いのが裏目に出ちゃったか・・・。
うんうん唸りながらもなんとか仕事を片づけ終わり、ちらりと時計を見やると23時前。2時間近く掛かっていたみたいだ。
あ~、しんどい。このまま会社に泊まっちゃおうかな?でもお風呂入りたいしな~。
近いんだから帰れ!って追い出されそうだから、おとなしく帰りますか。
私はちゃっちゃと帰り支度を終え、夜の街へと繰り出す。
・・・家に真っ直ぐ帰るんだけどね。
家までの道を歩いていると、道の脇に街灯に照らされキラッと光るものが落ちていた。
お!おっ金っかな?
弾んだ気持ちのままに、私は光の元へと駆け寄って肩を落とした。それはもう、盛大に。
落ちていたのは銀色の鋏だった。
一般的な鋏ではなく、安直な感想だけどアンティークっぽい感じの鋏。
うるさいな!どうせ言語ボキャブラリーは乏しいよ!
落胆しつつもよく見てみると、ずいぶんと細かい意匠が凝らされている。
結構なお値段するんじゃないかな?交番届ければ持ち主からお礼が貰えるかも。
そう思った私は、テンションを上げながら鋏を取ろうと手を伸ばす。
その時、私の頬の真横を何かが掠めて行った。
突然の事だったので、びくっと身体を強張らせる。
そして数舜遅れて、鋭い痛みが私の頬を襲う。
「いったっ!」
咄嗟に痛みが走った所に手を置き指先で確認すると、深く裂けていた。
え・・・?なに、これ・・・?
あまりの傷に私の思考は止まりかけたが、痛みにより現実に引き戻され、同時に1つの可能性に思い当たる。
ま、まさか通り魔!?
私は慌てて周囲を視回すが、人っ子1人、影も形も見当たらない。
代わりに、さっき拾おうとした鋏が宙に浮いているのが目に入った。
あまりの非現実な光景に、思わず呆然としてしまった。
宙に浮いていた鋏は刃先をこちらに向けると、凄い勢いで私に向かって飛んで来た。
「ひっ!」
私は反射的に手を前に翳し防ごうとする。
飛んできた鋏は翳した私の手に、ずぶりと深々と突き刺さり、勝手に抜けた。
「いやあああぁぁぁああーーーーー!!!」
私は痛む手を抱えながら地面に倒れこむ。
そんな私に関係無く、鋏は私を襲い続ける。
腕が、足が、身体が、顔が切り刻まれていく。
私は恐怖と怪我で動かない身体で、必死に這うように逃げようとする。
そんな私を嘲笑うかのように、鋏は私の前にゆっくりと回り込み、刃先をこちらへ向けた・・・。
翌日、新たな通り魔被害者である会社員の女性の遺体が見つかったと報道された。
被害者の女性の髪は根元から断ち切られ、辺りに散乱していたという。
いかがでしたか?
終わりまで毎日更新しますので、お暇な時にでもチラ見してみてください♪