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ねた、ご〜Re、くろこ。(わたしはくろこ。りめいく)

今年三月に投稿したわたしはくろこ。をリメイク。加筆しまくり。

主な変更点は三人称から一人称に。

わたし〜で始まるのって一人称ですよね違ってたらすみませんです。

なお、リメイクにあたり元作はさげました。

二重投稿になるやもなので、お気に入り登録、評価していただいた方すみませんでした。


 わたしはテッラ、テッラ・リンガン。

 わたしの役目、それは補佐役。舞台の上にたつ主人公達を影から支える、いてもいないものと暗黙の了解と見なされるもの。

 わたしはまるで舞台のくろこ。目立ってはいけない、目にとまってはいけない。誰にも見つかることなく、誰にも知られることもなく。今日も淡々と日々の業務に精を出す。


「あ、足らなくなった! 大変! 厨房の方、発注の日を間違えたなんて、何をしていますの?!」


 わたしたちがお仕えする王子さまはお茶にうるさい。お茶係りの侍女さんが、お茶っぱが足りないどうしましょうと青ざめれば、


「こちらに」

 ぱぱっと調達、ぱぱっと手渡す。わたしの広く深いコネを使えばぱぱっと解決。


「いつもありがとう! あら、もういない」


 影から、そして目立たない、これ鉄則。だからわたしを目撃してもそれは一回瞬きする間だけ。くろこは目についてはいけない。


「何、あの方が王子さまに会いにいらっしゃると?! ご予定はなかったはず――動けるもの、みんな動いてすぐに対応を!」


 急な来客、それもお任せあれ。


「侍従長さま、これを。侍従、侍女、メイド下働きで現在動けるもののおおまかなリストです」


 わたしはくろこ。舞台にたつ役者から背後で動く係りもみんな覚えている。立ち位置も、もちろん。今誰がどこで何をしている、その把握を出来ていなければくろこはつとまらない。


「おお、リンガン助かるぞ!」


 わたしはくろこ。必ずお役に立ちます。それがわたしのお役目。


「侍従長! 材料がたりません!」


 厨房から悲鳴。

 それは大変だ。侍従長が動くまでに、厨房へブツを渡す。少ない情報でも、空気と流れを読み取り、勘と経験で埋め合わす。何が足らないか、即座に判断し調達し、上司の手は煩わせてはいけない。


「助かった! あの方はあるハーブを隠し味に入れたものでないといけないんだ! よくわかったな、やはりリンガンはすごい!」


 いや、それほどです。

 急な来客、急な問題発生。それに冷静に対処し、きちんと応える。くろこならば、これ出来て当たり前。



 そういう感じに、わたしは周囲に空気として埋没し、陰で日々業務を過ごす。

 だから――昨日も、今日も明日も、まだ少し先の未来も、王子さまの世話係、侍女さんや侍従さんの補佐役だと、思っていた。

 わたしテッラ・リンガンに課せられた役目、それは王子さま付き侍女侍従補佐役だ。

 文字通り、第二王子さまセバスチャンにつく侍女侍従の方々の補佐が仕事だ。

 補佐役とは何ぞや?と問われることがあるなら、わたしはこう答える。


「補佐役とは、王子さまにお仕えする侍女侍従さまがたの、手となり足となるものです。

 侍女侍従さまがたがあれが足りない、これがいま手元にあったならと心のなかで思えば、わたくしは参じて影よりお渡しするのみでしょう。

 侍女侍従さまがたは王子さまを補佐するかた。仕える方が尊き御方ゆえに、補佐のかたがたは常に完璧を求められます。

 しかし侍女侍従さまがたも人です。ゆえに補佐専用の補佐が必要になります」


 ――ってね。

 わたしはようするに侍女侍従に仕える彼ら専属の使い走り。しかし、仮にも王族に仕える彼らに使い走りがいるなど、表向きにはあまりよくはなかったりする。

 彼らは王族をお世話する立場、お世話する側にお世話する立場が堂々といるなんておかしいから。見た目が悪い悪い。

 だからわたしテッラ・リンガンはくろこ。目立たない、空気のような存在に徹する。



 今日もわたしは侍女さんと同じお仕着せで、気配を殺して業務を忠実に行っていた。くろこだからって黒い衣装じゃない。

 そしてくろこたるもの、気配を殺すのは必須中の必須技術。これができなくば意味がない。気配を殺し空気に埋没できなくば、陰に徹せないから。

 ――息づかい、足運びは無音、わたしはここにいるけど、いないものだから。


 今は王子さまの侍女侍従控え室にて、出番の待機。耳を象のように大きくし、壁にぴたっ。よし、侍女さん方の悲鳴やらSOSはないな。

 これは決して立ち聞きではない。うん、盗み聞きじゃない。

 壁の向こうの気配と音を読み取り、聞き取ることできてこそくろこ。何時如何なる時とて、侍女侍従さん方が何を欲するかを知るため。

 ――だからこそ、わたしは気づいてしまったの。耳が無駄にいいとダメだね。


(え、天井裏? 何で)


 わたしはいつものように、耳を象のようにどばーんとそばだて、壁にぴたって密着させて気配を読んでいた。

 すると、違和感を感じたわけで。発信源は天井。王子さまの、室内の、天井。

 侍女、侍従、下働きそしてわたし含め王子さまにお仕えするものは、この立場に配置される前に王子さまの室内の家具の配置とかを、徹底的に頭に叩き込まれる。何かあったときのために。

 その記憶によれば、うん、まさか、ね。まさかじゃないけど、まさかと思いたい。

 ――何で、王子さまのプライベートルームの寝台の上の天井から、殺気が放たれてんのさ。しかも気配でかいよ。肥えてんの? ……初・緊急事態発生。やだ嬉しくない。



 わたしはすぐに答えを弾き出し、気配を殺したまま流れる足運びで控え室を退出した――ここには廊下に続く専用の出入口があって、目と鼻の先には正式な王子さまの居室への扉がある。

 その扉には今日も二人一組で近衛さんが左右に立っていた。


「もし」


 声をかけた。気付かれない。シーンと静かなだけ。いけない、忘れていた。

 わたしは消していた気配を調節して、存在感を少しだしてみた。だって誰も気付かないからだ。なのでリピート、リピート。


「もし」

「ぎょわっ」


 ぎょわって失礼だな、乙女に向かって。

 最初声をかけた彼は、まだかわいそうなぐらいびくついていた。いや、すまんすまん。

 わたしがかくかくしかじかと状況を説明すれば、彼はすぐさま緊張感を取り戻し、指示を出し始めた。さすがプロです。そしてわたしの今まで築き上げてきた業務への態度が功を奏した。

 わたし、騎士さん近衛さんに、暗殺者にほしいとか諜報にほしいとかいわれてたりスカウトされたりする。つまり気配殺して空気になって仕事に励んでいたら、そんな引き抜き? されるはめになった。素晴らしいらしい、気配殺すのとか。何でだ。かなり嬉しくない。本職はくろこだくろこ。まかり間違っても裏の職種じゃない。

 まあとにかく。


「補佐役は、気配を殺すのが得意だな?」


 ――はい当たり前に得意です。くろことしてできて当たり前です。くろこですから。


 近衛兵Aが確認するように問うてきた。ちなみにぎょわっていわなかった方だ。心中で返答し頷いてみた。 そんなわたしに近衛兵Aは耳打ちした。うわ、耳に来るなこの声。


「なら、相手に気付かれずに近付くこともできるよな?」


 わたしはこれにはすぐに頷けなかった。

 話の流れ的に、王子さまを狙うネズミが天井裏に潜んでいるらしかった。そこでわたしの出番らしい。わたしなら気付かれないと。

 でも、相手がプロかもしれないのだ。というか王子さまのプライベートルームに潜むのだから、十中八九プロだ。そんな道のプロに、素人に近いわたしの気配殺しが通用するか不安なのだ。わたしの気配殺しは、自己流に習得したもの、プロに対して通じるかかと言われれば無理無理。

 それにわたしはくろこ。諜報とかじゃない。だから無理だったら無理。


「なにも、補佐役にネズミをどうにかしろとはいわない。ネズミの近くまで、魔導の心得のある僕とともにいくだけでいいんだ。

 どのあたりにいるか、僕を案内するだけだ――気配を殺したまま、僕の補佐をする。どうだい、いつもとあまり変わらないだろう?」


 ――と、近衛兵Aは安心させるためか極上の笑みを浮かべてきた。

 く、うう。どうやら近衛兵A、フツメンなのに笑うと破壊力半端ないイケメンになるらしい。どういう仕様だ、Aのくせに。


「………」


 顔を真っ赤にして言葉に一瞬つまり(くろことして恥だ失格だ)、縦にこくこくと頷いてしまった。 いかん、負けてしまった! フツメンに負けてしまった! く、くろことしたことが! う、なんか変な湯気が出てきた。


「じゃあ、いこうか」


 ああ、もう煮るなり焼くなり蒸すなり何なりと。

 居室の扉を明け、先に入室を促す近衛兵Aは、またもや耳打ちを開始した。あんた好きだな耳打ち。無駄に耳に来る声だから、変な声出してしまいそうだヤバイくろことしてヤバイ。煩悩退散フツメン退散来る声退散。


「それとね、僕は近衛兵だけどAじゃなくて、リカルドという名前がちゃんとあるからね?」


 大きさを押さえた囁き声を耳元でまたもや囁かれた。うわ、囁くな囁くなぁあ。

 結果、わたしは更に赤くってしまい、うっかり気配を殺し損ねたのだった。




 王子さまのプライベートルーム内では、窓付近にて我らが王子さまが優雅に茶を飲んでいた。

 きっらきらな金髪に金の目、無駄に優雅な王子さまは、こちらを見るなりさりげなく天井裏に目をやった――その天井裏は、寝台のあたり。いるぞ、と目が語っていた。しかし何で楽しそうでいらっしゃるんだ王子さま。


(王子さまもお気づき、か)


 ――でも、侍女侍従さん方は違う。気付いてない。


 わたしが気付けたのは、やっぱ職業病ゆえか。それとも、護られるべき王子さまよりも真っ先に気づくべき彼らが鈍いのか。前者を期待します。正答は求めまい。


(まあ、どうでもいいや)


 わたしはすいすいと音をたてずに絨毯の上を滑り歩く。朝飯前です。そんなわたしを見てほう、と楽しげな顔を王子さまが浮かべてる。やはりこの方楽しんでいらっしゃる……! 楽しまないでください。これも業務ですから。てかあなた様狙われてますよね。

 寝台まであと数歩のところではわたしは立ち止まり、視線であとに続いていたリカルドに教えた――ネズミは、寝台の枕の真上と。やっぱ的中、殺気がむんむん違和感ぴんぴん。あんた、それでもプロか。

 リカルドは満面の笑みで答え、視線で下がるように伝えてきた。

 わたしは頷き返し、すすすと後方へ下がる。うわあ、うわあ、顔が顔が。またあの笑顔だ、破壊力半端ないよ、うわ目逸らしたいけど逸らせない。

 わたしが彼の前方からさがると、リカルドは蛙をにらむ蛇のような形相を浮かべた。ひい、怖い。見えちゃった、くろこスキルで見えちゃった。その顔怖い。笑顔破壊力半端ない人ってその顔も怖い。迫力半端ない。

 リカルドは天井を見据え、手で一閃。ただそれだけだった。

 天井が四角に切り取られ、下着一丁になったネズミが落ちてきた。え、何が起きたの。

 ネズミは股を押さえたまま寝台でバウンドし、呆然とした顔でお縄についた。


(はっ、はぇぇえ! つぇえよ!)


 手振っただけであれか?!


「ご苦労、リカルド。天井の修理、今月の給料から天引きだからね。もちろん、ネズミの退治報酬を上乗せするから」


 ――差し引きゼロだよ、とにこにこする王子さまに、なんだか腹黒いものを垣間見てしまったような気もするが、すぐに忘れることにした。うん、忘れる。ワタシミテナイ。


「差し引きゼロでは働き甲斐がありませんよ、王子さま。特別報奨で、もひとつつけてください」


 にこにこと笑い返すリカルドはもっと腹黒かった。あんた何様だ。俺様か。


「なんだい?内容にもよるねぇ」

「ありがとうございます」


 笑顔なのに、二人がとってもおっかなく見えたのは気のせいだろうか。

 なんだか、お二人がきときつに見える。うん、ふさふさだけどぎとぎとのしっぽがあるにちがいない。


「補佐役テッラ・リンガンを、僕の婚約者にしても構いません?」


 ――ナンテイイマシタカコノヒト?


「補佐役を?」

「ええ、構いませんか」

「それぐらい、構わんよ」


 ――構ってよ!


 わたしはおもいっきり口を開けたまま放心してしまった。このあと、リカルドに話しかけられるまで、固まったままだった。くろことして情けない。

 そんなわたしにリカルドはささやいた。


「僕ね、ずっと見てたんだよ、君をね」


 ――影ながら支える君を、見ていたんだ。見ているうちに、ちょこちょこ動き回る君がかわいく思えてね、欲しくなったんだ。だから、遅かれ早かれ、君を手に入れたと思うよ?








 ――わたしは、くろこ。いや、くろこだった、になるか。


 いつの間にか表舞台にたたされて、次期近衛兵長であり、実は魔法使いだった(あの手の一閃が魔法だった)リカルド・ダッテンの婚約者になってしまった。わたしが舞台裏へ戻ることは、もうないだろう。





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