ねた、いち〜突発的ふぁんたじい
武道大会。
己こそが、と思う強者どもが集い、力自慢に明け暮れる大会。
いつからか、魔道や能力といった部門も作られた。
そして、栄えある五十回目を迎えた今回。
それは、起きた。
『強いヤツは、どこだ?』
―――魔王が、来た。
魔王、それは二ヶ月前に突然南の海上に現れた空に浮く城―――魔城の主。
『この大会には、強者が集まるんだろう。なら、ここに集まるやつを倒したら、俺の邪魔をするやつぁいない』
―――なぁ、そうだろう?
魔王は、引き連れてきた配下を振り返る。配下も、笑う。
「くそっ」
会場は、このときのために、各地から結界のエキスパートが呼ばれ、何重にも何重にも結界が張られているというのに。
人間は―――我々は、過信しすぎていたのか。
「殿下、落ち着いて」
マルグリアンが抱き締めてくれた。あやすように。ちきしょう、僕は子供じゃない。
「どうすりゃいい……!」
結界は破られた。
腕自慢の参加者たちは、みな魔王が放った石化の魔術で身動きがとれない。
残っているのは、何名だ?魔術を防げたのは、何名だ?何名、残っている。
「仕方ないの、か」
負けるのか?
圧倒的な力量の差を前に、屈せと?
しかし、屈してたまるか。
大切なものがある。
譲れないものがある。
だから足掻く。
僕は決意した。
守られるだけの、子供じゃない。
守る側に、まわる。
今度は僕が、守るんだ。
「無理しなくていい」
誰?
振り返った僕の視界に、信じられない光景が。
「ローサ?」
僕のクラスメート。
いつも窓際で分厚い本を読んでいる、栗色の髪をひっつめた、眼鏡のひょろっとした女の子。
魔法が使えない、能力も使えない、けど努力家で、結果学年一の学問の秀才で。
そんな彼女が、なぜ。
魔法が使えない彼女なら、他の魔法が使えない人たちと石化してしまったんじゃ……?
いくら秀才で優秀で頭が切れても、あまりにも突然すぎた魔術に、抗えないって、諦めたのに。
彼女が無事だったことが何よりも嬉しい。
けど、どうして。
けど、どうやって。
嬉しさ反面、湧いてつきない疑問。
どうして、どうやって、無事だったのだろう。
他の強者、猛者たちはやられたのに。
どうして、どうやって。
「貴方は今回は守られていて」
彼女がにこりと笑う。こんな状況なのに、穏やかに笑う彼女に惹かれる自分がいる。
「……何を根拠に」
マルグリアンが、いつでも術を放てるように杖を構える。
まて、というまでに彼女が口を開いた。
「我は、人に非ず」
彼女は歌うように言葉を紡ぐ。魔王を見やる。その髪が、生きているようにうねり、流れ、夜空の色に染まり、華奢な背を覆う。
変化は、一瞬だった。
ひとつ瞬いたら、もうそこには僕の知る彼女はいなかった。
小柄ではない、背の高い人がいた。
栗色の髪ではない、夜空の髪の人がいた。
色白ではない、琥珀のようにきらきらと輝く肌の人がいた。
榛ではない、吸い込まれそうな大空の瞳の人がいた。
見慣れた制服ではない、異国のお姫様の格好をした人がいた。
「我は、人に非ず。魔を極めし王よ、我が相手をしよう」
空に浮かぶ魔王にまで届く、凜とした絹の光沢のような艶やかな声。
「お前はなんだ?」
魔王が楽しそうに笑う。
「我は―――」
突発ねたすぎて、しかもなんだかいきなりクライマックス風味。やっちゃった感満載。
お粗末さまでした。
しかも続かない。