祖父と私
日間ランキング、
ジャンル別ランキング1位ありがとうございます。
まだ、恋愛の「れ」の字も出ていませんが、
これからも日々精進していきますので
拙作をよろしくお願いいたします。
今日の私は、兄のところではなく執務の休憩中の祖父のところへいる。
「ライカ、最近どうだ? 楽しいか?」
「あいっ!」
「そうか、それはよかった」
「じいしゃまは、たのちい?」
「そうだな。ライカといると楽しいな」
「たのちい!? ライカもたのちい! じいしゃましゅき!」
祖父よ、私といると楽しいと言われると私のテンションもハイになりますよ! 祖父よ、好きだ。
というわけで、普段あまり会えない分、甘えさせてください! ………あ、でも今日は祖父は仕事ないのかな。
「今日は仕事を先に詰めたからな。たまにはライカと遊びたかったんだ」
「じいしゃましゅき!」
今日一日を私と遊んでくれるために開けてくれるなんて、嬉しすぎる! それを表現するために、祖父に思いきり抱き着いた。まあ、体が小さい分、飛びつくに近いけど。
ちなみに、私が笑顔で飛びつくと、祖父も笑顔で頭を撫でてくれた。気持ちいいぜ。
「ライカは、しばらく見ない間に大きくなったな」
「おーきくなった? ライカ、おとな?」
「さすがにそれはないな。ライカはまだまだ、小さな子供だ。爺様の、可愛い可愛い孫だ」
「ライカ、いくつになったらおとな?」
「十九だが、焦らなくていい。ゆっくり大人になりなさい」
「ライカ、今みっちゅだから、後なんかいねたらおとな?」
「…………あー、いっぱい、だな」
「いっぱい?」
「そうだ、いっぱい寝たら大人だ」
「にいしゃまは、後なんかいねたらおとな?」
「フォルトか? フォルトは今十一歳だから、八年――――いっぱいだな!」
と、そんなことをしつつ、たわいない話に花を咲かせる。だって、祖父と話してると楽しいんだもん。祖父は私の前ではいつも笑顔だもん。楽しいもん。
「さて、ライカ? 最近何があったか教えてもらえるか?」
「うん! あのね、にいしゃまとね…………」
そして、ここ最近あったことを尋ねられるのもいつものこと。ちなみに私の最近あったことは、基本的に兄の話となる。―――根回しはばっちりです。私は兄を気にしています。兄が大好きです。というわけで、兄を嫌う貴族をけん制してください、祖父よ。
ついでに言うと、目をキラキラ輝かせながら言うのがコツ。転生して、目を輝かせる方法は覚えました。てへ。
「ライカは本当にフォルトが好きだな。いいことだ」
「いーこと?」
「ああ。兄弟、仲がいいに越したことはないからな。これからもずっと、フォルトと仲良しでいなさい」
「あい!」
祖父よ、孫をバカにするでない。私は結婚して離れるまではずっと、兄とともにあるのだ。兄から離れるつもりなんてないのだ。
「いい子だ。さあ、お話もしたし、外にでも行くか? 厩舎で、馬にご飯をあげようか」
そして、それを聞いた祖父は満足そうに再び私の頭を撫でてくれる。あ、そこそこ。気持ちいいです祖父よ。
「おんましゃん!!」
「そうだ、お馬さんだ。爺様のお馬さんにご飯をあげようか」
「あい!」
そして祖父に抱っこされたまま厩舎へ向かうと、そこにいる馬たちに、一斉に出迎えられた。かわいいぞ、馬よー。あ、でもグルーミングだって分かってはいるけど、髪の毛噛むのはやめて。
「しりうしゅ、るしうしゅ、噛むのやめてー」
ちなみに今、私の髪を噛んでいるのはシリウスとルシウスと言って、前者は祖父の馬、後者は父の馬である。二匹とも、祖父や父と一緒に来ては遊んだりするので、いつの日か子供認定されたらしい。しょぼん。
「シリウス、ルシウス。お前たちの可愛いライカが困っているぞ」
そうやって必死に足掻いていると、そこでようやく祖父が助け船を出してくれる。祖父が言うとすぐにシリウスもルシウスも、私の髪を噛むのをやめたよ。そして私はその後で祖父に髪を手で梳かれた。ぐっちゃぐちゃだった髪も、おかげでだいぶマシになりました。でも、まだちょっとぐちゃってしてるから、部屋に戻ったらメイラに梳きなおしてもらう。
「久しぶりだな、シリウス。元気にしていたか?」
そう思いつつ、自分でもちまちまと髪を梳いていると、祖父がシリウスに話しかけていた。話しかけられたシリウスも何を言っているのか理解しているのか、ぶるるっと返事をしている。祖父も満足そうだ。
うむ、シリウスは可愛いな。撫で撫で。祖父に抱きかかえられつつ、シリウスを撫でる。嬉しそうに鼻を鳴らすあたりが超可愛い。
「しりうしゅ、いーこいーこ」
「さあライカ、シリウスにご飯をあげようか」
祖父がそう言って、ニンジンを私の手に持たせてくれる。………が、その瞬間にシリウスにばっくり食べられた。
「ふにゃっ!?」
「シリウス、待てだ。さ、準備しようなライカ」
「あい」
そしてシリウスを待たせて祖父と共にしっかりと手にニンジンを持ち、準備ができたところでようやくシリウスにニンジンをあげるために、手を向けた。
――――ばくっ。
…………シリウス、食べるの早い。あっという間に手のニンジンがなくなったぞ。
次のニンジンをセットしても、すぐにシリウスにバクバクと食べられる。早い。早すぎる。
「しりうしゅ、はやいおー」
「お腹が空いてたんだろうな。ほら、もっと食べさせてあげなさい」
「あい」
祖父からニンジンを受け取り、どんどんとシリウスに食べさせていく。シリウスは本当にいっぱい食べるなぁ。見ていて清々しい。
「もっとたべう?」
問いかけると、シリウスはぶるると鼻を鳴らす。よしよし、もっとお食べ。
「もーないよー。いっぱいたべたね」
そうやってしばらく食べさせ続けると、あっという間に準備しておいたニンジンがなくなってしまった。
「はわぅっ!?」
も、もうないよ! だから、私の髪を食べないでっ!!
「しりうしゅやめて~」
情けない声を出しつつも、必死に足掻く。が、シリウスは何故かなかなか離してくれない。何で。
うむう、せっかく梳いた髪がまたぐちゃぐちゃになってしまうぞ。
「しりうしゅ~」
「懇願するも、シリウスは知ったことかとばかりに食み続ける。―――と言ったところか。さあ、シリウス。もういいだろう?」
そうしていると、冷静に現状を説明していた祖父がようやくシリウスを止めてくれた。でも、止めるの遅い。
「じいしゃまのばかー! お部屋かえるー!」
その怒りを示すためにも、思いっきり泣いてやった。祖父のあほー! うわーん!
「めーらーぁ」
「ライカ様!? どうなさったのです、髪の毛がぼさぼさになっていますよ」
「じいしゃまがぁ~」
「陛下がどうなさったのです?」
「うああーん!」
「ああ! 落ち着いてください、ライカ様。さ、まずはその髪の毛をきれいに拭いて、また梳きましょうね」
そして、部屋に戻って思いっきりメイラに泣きついた。祖父のばーかばーか。ぐっすん。
その後、メイラに抱き着いて目いっぱい泣いて、気が付いたらぐっすりと眠っていた。
「あー、その、メイラ? ライカは………」
「ライカ様はお休みになられております、陛下。ところで、何をなさったのです? 随分と大泣きしておられましたが」
ちなみに、私が泣き疲れて眠った後、祖父がこの部屋を訪れて、メイラにけんもほろろな対応をされたのは、私の知る由のないことだった。
ついでに、思った以上に疲れていたのか、次の日に私は高熱を出した。
「じーしゃまきらい~」
覚えていないが、高熱に苦しむ私は何度もその言葉を発していたらしい。そしてちょうど様子を見に来ていた祖父を前に、その言葉を呟いていたそうだ。
もちろん、それを聞いた祖父は悲しみ、それからしばらくしょぼんとしていたとのこと。
着々と味方を増やしていくライカ。
でも、兄を攻略するにはまだまだまだまだ。