表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄が私を認めるまで  作者: 神埼未来
三歳児編
4/28

僕とあれ


とことんライカを否定する兄の気持ち。



 僕の名は、フォルティス・シエラ・ゴルティア。第一王子である父と、農民だった母の間に生まれた子だ。

 僕は、王子の子供というだけで城に住まわせてもらっている。僕に流れる血の半分は農民だというのに、父は僕を可愛がってくれる。そして、父の正妃である義母上も、僕を邪険にはしない。それを考えると、お二人とも好きではある。

 だが。だが、あれは僕の妹とは認めない。僕とあれは他人だ。たとえ父は同じかもしれないが、あれの母君は隣国の姫。僕の母は農民。それだけで、身分にかなりの差がある。

 あれは、今はまだ何もわからないから僕に寄ってくるのだろう。大きくなれば、僕に近寄らなくなるはずだ。

 事実、あいつを僕の部屋に連れてくる侍女は、僕をよく思っていない。城で働くのは、大体が貴族の子女だ。かつては、父の寵愛を求めていたのだろう。

 だが母は、父が偶然町に視察に出た際に知り合い、城へと迎え入れられた。そして、僕が生まれた。


 だが、母は僕を産まず、父に出会わない方がよかったのだろう。


 母は城に来て、父の寵愛を奪ったとして、かなりの貴族の令嬢から嫌がらせを受けていたらしい。

 それに、僕が正妃である義母上の子よりも早く生まれたのも、母への嫌がらせに拍車をかけたのだと思う。

 義母上は、気にしないと言ってくださっていた。むしろ母に、元気な子が生まれるといい、と笑顔で言ってくださっていたらしい。

 そして、僕が生まれた時も自分のことのように喜んでくださったそうだ。


 ―――そして、母が心労で亡くなった後は、義母として僕と接してくださった。


 そんな、義母上と父上の間に生まれた子供、ライキアーナ。

 僕の大切なお二人の子供。それを考えると、可愛がるべきだったのかもしれない。

 でも、僕はその子と関わってはいけない。冷たい目を向けてでも、冷たい言葉を投げてでも、僕からあの子を離さなければならない。

 ライキアーナ。お前は、この国の第一王子である父と、隣国の姫であった義母上の子供。正統なる、王家の姫。

 そんな高貴なものが、農民の血の混ざる僕に関わろうとするな。関われば関わるだけ、お前の評判が落ちるだけだ。

 お前は、将来この国を率いて行かなくてはならない。それには、僕は邪魔なんだ。


 だから、関わるな。

 お前は、僕を嫌う貴族たちに守られていろ。そうすればお前の身は安全だ。そうすれば、父上も、義母上も悲しまなくて済む。僕は、父上の義母上を悲しませたくない。

 だからね、ライカ(・・・)。僕は、お二人を悲しませないためならば鬼にでもなる。お前をいくら悲しませても、構わない。父上と義母上が笑ってくださるのならば。


 ――――そのためならば、僕は何にだってなる。


 ライキアーナ、分かったら僕に近寄るな。僕の近くにある物は、毒が仕掛けられている物も多々ある。大半は捨てているが、たまに残っているんだ。

 僕は、その毒にお前をあたらせるわけにはいかない。あの二人を悲しませるわけにはいかない。


 ライキアーナ。実は僕は、お前が生まれた時、嬉しかったんだ。妹が出来た、と。でも、周りの貴族の声を聞いて、その考えは変わった。いや、根本的なことは変わっていない。でも、表面上はお前を嫌う必要があった。そうすれば、貴族たちはお前を可愛がってくれるだろう、守ってくれるだろう。僕についている貴族なんてほとんどいないから、お前の敵はほぼ無いに等しい。

 無事で、いてくれライキアーナ。死ぬな。傷つくな。

 ―――泣くな、とは僕は言えない。何度も泣かせているから。


 だからね? 泣くくらいなら、近寄るな。それが、お前のためだから。


 ライキアーナ。ライカ。――――本当は、愛しているよ。



兄のライカ拒否は、ライカを想ってのことですが、

ライカは逆に傷ついているので、

ぶっちゃけ有難迷惑というものです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ