父と私Ⅱ
町におりて怪我をしたあの日から、なぜか母や祖母、父、時折祖父が一緒にいるようになった。そして今日は、父の番だ。
とは言っても、父はどうしてもやらなければならない執務があるらしく、私は父の執務室のソファで、のんびりとミルクを入れたお茶を飲みつつ、待機中だ。
父曰く、父の仕事が終わった時点で遊んでくれるそうだ。何で遊んでくれるかは分からないが、楽しみだ。
「ライカ、もう少し待っていてくれ。もう少しで終わるからね」
「あい」
「大丈夫ですよ、殿下。ライキアーナ殿下には、僭越ながら私が絵本を呼んで差し上げておりますので。シュバルツ殿下は、焦ってミスなどなさらないでくださいね?」
「う! 分かった……」
「よろしい。………お待たせして申し訳ございません、ライキアーナ殿下。続きを読みますね」
「あい」
ちなみに今、父付きの宰相が待っている間退屈だろうからと絵本を読んでくれている。この宰相の名は、ガリオン・クイン・フィルティシアといい、何と、父の弟らしい。つまり、私の叔父。
今日、この部屋に来て父から私の叔父と言うことで紹介されたときはびっくりしたよ。こんな身近にいると思ってなかったんだよ。
父付きの宰相である叔父は、私が生まれる前に臣籍に下り、新たに公爵家を興したらしい。ちなみに、臣籍に下る前から父の宰相ではあったそうだ。
そんな叔父ですが、私には甘々です。曰く、叔父には私よりも少し年上の娘がいるそうですが、あまり懐いてくれていないそうです。まあ、仕事が忙しくてあまり会えないから仕方ないか、などと呟いていますが、それでは懐くはずもありません。
私は、いくら父が忙しくても最低でも三日に一度くらいは会えていたからよかったけれど、叔父は、忙しいときはそれ以上に会えない日が続いているそうで。
結果、娘からすると、父と言うよりも知らない人と言う感じになってしまうのだそうだ。
「よし、終わった! リオン、これでいいだろう」
「はい。お疲れ様でした、兄上。では、可愛い姪とごゆっくり」
「ああ。お前もたまには家に帰って、娘と遊んでやりなさい」
「兄上が、しっかりと毎日仕事を終わらせてくだされば、家に帰ってあの子と遊べるのですが? ………ライキアーナ殿下。今度、家に遊びにいらしてください。娘は、殿下の一つ上ですから、話も合うと思いますよ」
「とうさま、いい?」
「今度、スケジュールを調整しよう。リオンが家にいて、且つ、父様か母様が一緒に行けるときを確認しておくよ」
「あい!」
父! 叔父からの提案は私嬉しい! いとこ、会ってみたい! しかもひとつ上? それはお姉ちゃんではないですか。姉欲しい!
ていうか、父よ。なぜに叔父がいること確定で、父か母の都合が合う日限定? 早く会ってみたいな?
「とうさま~、おねがい。いとこに会ってみたい~」
「うう~ん。さすがに城から出るのは、父様だけじゃ決められないからなぁ。母様と話をしてからだな」
「なんで?」
「城から出ると、危ないだろう。だからだ。きちんと話し合って決めて、護衛も準備してからじゃないと城からは出せないよ」
「じゃあ、呼ぶのはめーなの?」
「呼ぶのも、いきなりは失礼だからね。どっちみち、今日は会えないよ」
と言うわけで、結局この日はいとこには会えず、父と執務室でお話して、本を読んでもらってとして過ごした。
ああ、うん。楽しかったよ? 確かに父と一緒に本を読んだりとかしてると楽しいさ。でもさー、いとこの存在を知ると、会いたくなるでしょう!!
まあ、お話しつつ、途中で何度もお願いしてたけどさ。会いたいな~? って言ってたけどさ。聞き入れてもらえなかった。
でもその代り、いとことか、父の弟妹のことはいろいろと話してもらえた。
まず、父には弟が三人、妹が四人いるらしい。うち、一人がさっきの宰相である。
そして、弟と妹が一人ずつ、他国に婿入り、嫁入りしているらしい。残りの妹たちは全員、国内の貴族に降嫁しているそうだ。残りの一人の弟のことに関しては、うまくはぐらかされて教えてもらえなかった。何で。
ちなみにこの件は、後から母にも尋ねてみたのだが、母からもうまくはぐらかされて教えてもらえなかった。
―――――叔父の一人は、実は危険な人、とか? ない…………よね?
フラグが立った! ………かもしれない。