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兄が私を認めるまで  作者: 神埼未来
四歳児編
26/28

兄と私Ⅱ


短いです。


 あはははは。兄の態度が元通りになりました。

 うん、でもこっちのほうがいい。だって、優しい兄は怖かった。咄嗟に、連れて行ってくれた侍女の背に隠れたくらいに、怖かった。

 だってさ、あの兄が、笑顔で話しかけてくれるんだよ? 「どうした? ライカ」って。怖いよ!!

 まあ、怪我してる間はずっと母がそばにいてくれたから、母に隠れてたけどさ。母はにこやかに見てたけどさ。


「ふふふ。大丈夫よライカ。ほら、フォルトが優しいじゃないの」

「やーなの。にーさまがやさしいのこわい」

「あらららら」


 このころ、まだ薬が切れたばかりの頃とか本気で痛くて、そのたびに母に泣き付いていた。その最中に、あの無駄に優しすぎる兄だ。泣くわ、これ。

 そもそも、薬が切れた時の痛みで大泣きしてる時に、優しい兄っていうのが普段と違いすぎて怖いんだよ。


「いちゃい~! いちゃいのかあしゃまぁ~!!」

「大丈夫か? もうすぐ医者が来る。それまでの我慢だ。な?」


 痛みに耐えかねて号泣。そこで優しい兄、登場。


「にいしゃまこあい~!!」


 結論。私、さらに号泣。


「どうしたのですか? 殿下。ひどく痛みますか?」


 それはそれは、痛み止めの処方に来た医者を困らせるほどに。


「殿下、お薬ですよ。飲んだら痛くなくなりますから」

「あい………」

「はい、口を開けてください」

「あむっ」


 その後、医者の処方してくれた薬を飲み、またベッドに横にされる。ちなみにその時も兄が優しすぎて怖かった。

 だって、兄が手を貸してくれたんだよ? 兄の手を借りて横になったんだよ? 怖い。つい、横になった瞬間に反対側にいた母に、母の腕にしがみついたよ。


「大丈夫よ、ライカ。ほら、フォルトもライカを心配してるんだからね」

「でも、やさしーにいさまこあいのぅ」

「怖くないじゃない。優しいんだから」

「こあいー!!」


 ぴぎゃーん! 再び、涙腺決壊。


「落ち着いて、ライカ」


 完全に涙腺が決壊するとすぐに、母が私を抱き上げてくれた。ええい、母の胸に顔をうずめて泣いてやる!


「どうしてそんなに泣くんだ、お前は。泣くな」

「かあしゃま~」


 兄が怖い!!


「大丈夫よ、ね?」


 大丈夫じゃない! 超怖い!!

 その結果が、大号泣なわけだが。


「ふええ~ん、こあいのぉぅ!」

「ほら、泣かないの。大丈夫よ、お母様もいるからね」

「かあしゃま~!」

「だから、泣きやみなさい。泣いてたら、痛いでしょ」

「いちゃいー。でも、こあい~」


 そうやってぎゃんぎゃん泣き叫び、泣き叫びに泣き叫び続けて、ようやく私は泣き止んだ。というか、泣き疲れて軽く噎せた。おかげでかなり母に心配されたよ。


「大丈夫? 医者を呼んで、診てもらいましょうか」


 と、母が本気で言いだすほどに。


「だいじょぶ。ライカ、へーき」

「無理しなくていいのよ? 診てもらいましょ」

「へーき」

「誰か、医者を呼んでちょうだい」


 …………母。大丈夫だって言ってるのに、平気だって言ってるのになぜに呼ぶ。でも、心配をかけたのは私だから渋々ではあるが、受け入れることにした。ゴメン、医者。

 事実、呼ばれた医者は何かあったのかと、かなり大急ぎで来てくれたらしく、息切れしていた。


「王子妃殿下、ライキアーナ殿下に何か……?」

「さっき、たくさん泣いて噎せちゃって。大丈夫か心配になったから、診てもらえないかと思って……」

「そう言うことですか。大丈夫だと思いますが、一応診ておきましょう。失礼いたします、ライキアーナ殿下」


 その後、目を見られたり首元に触れられたりなどして、結局問題なしで診察が終わった。ちなみに、その間兄はそばでちょこちょこと優しい言葉をかけてくれていた。…………怖い。

 その恐怖のせいで、ようやく引っ込んだ涙がまた出てきそうになる。………そして、それを見かねた母が兄を部屋へと戻した。

 いなくなると寂しい。でも、いると怖い。ううむ、どちらがいいか。


「しっかり休んで、早く怪我を治せ」


 いなくなる寸前、兄はそう言っていた。それがさらに怖い。今まで兄に優しい言葉をかけてもらったことなんてなかったから、今の兄に違和感が濃くて、怖いんだよ。


 そんな兄は、私の怪我が治り、怖いから今までどおり接してほしいとお願いするまで続いた。

 まあ、その結果と言うか何というか。


「部屋へ戻れ」


 やっぱりそうなりますよねー。

 でも、これぞ兄。あはは、お互い笑っちゃってたよ。


 これで、いつも通りだ。


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