みんなと私
ライカが四歳になりました。
子供の日に子供が成長した話を投稿します。
私が生まれて、早四年の月が流れた。
うん、母による父が私が結婚したい相手を抹殺するぞ☆ 発言からも一年近く時が流れているのだ。
一年近くたてば、さすがに父の発言にも何も感じなくなるよ。
「ライキアーナ・シエラ・ゴルティアです。きょう、四歳になりました」
そして四歳の誕生日の今日、祖父の名でパーティを開催している。主役は私ですよ、はい。四歳の幼女を主役にするってどうよ、祖父。
とか思いつつも、口には出さずに大人しくこの広間の一番高い席に設えられた椅子に座っている。……まあ正確には椅子に座った母の膝の上にいる。
まあ、挨拶だけはさすがに母の膝から立たされたけどね。ちょこんと小っちゃいのが立って、挨拶したけどね。
「ライキアーナ殿下も、もう四歳になられたのか。ミルシア様によく似ておられる」
「いやいや、王子殿下にも似ておられる」
挨拶をした後に再び母の膝の上に戻ると、下からいろんな声が聞こえてくる。が、気にしない。
ちなみに、横では祖父と祖母が揃ってにこにことほほ笑みながら拍手してたよ。
「ライカ、よくできたね。偉いな」
「かあさま、ライカ、上手にあいさつできた?」
「ええ、立派だったわ。ねえ、あなた?」
「もちろんさ。いい子だライカ」
ちなみに、母に上手にできたか尋ねると、母のみならず父からもお褒めの言葉をいただき、頭なでなでもいただいたので喜んで頂戴した。
うん、あんな感じでよかったらしいよ。ただ、名前と年齢言っただけだったんだけどね。四歳児だからあれでもよかったらしい。
「さあ、今日はみな楽しんでいってくれ。…………ただし、ライカを泣かせるような真似をした場合は………分かっているだろう?」
「ふふふ。もし、そんなのがいたら爵位を奪うわよ」
そうしていると、立ち上がった祖父母がみんなに聞こえるようにしゃべるのだが―――脅し入った!? 怖い。何で私を泣かせただけで爵位没収!?
その恐怖で体が勝手に反応した。つい、母に抱きついてしまう。
「大丈夫よ、ライカ。大丈夫」
そんな私に母は優しく声をかけてくれ、父は静かに立ち上がり、祖父母の耳元で小さく呟く。
「二人がライカを泣かそうとしてるぞ」
と。
父がこっそりとそう告げた瞬間に、祖父も祖母も二人そろって見事に止まった。さすが息子。両親の扱いは慣れてるなぁ。
「さあ、パーティに来ている者みな、王と王妃は気にせず楽しめ! ただし、礼節はきちんとせよ!」
『おおおぉぉおおおぉぉ!』
うおぅ!? 今度は下から一気に低い声と高い声の混じった恐ろしい声が!? またも体が勝手に反応してびくっとなり、母にしがみついた。
「大丈夫。そういえばライカは、まだパーティには出たことはないものね。パーティっていうのはこういうものよ。怖くないの」
「こあくない?」
「そう、怖くないわ。むしろ、楽しいわよ」
「たのち?」
「そーよ。ふふっ、ライカったら相当びっくりしたのね。しゃべり方が昔みたいよ」
……………あ! しまった、普段はきちんと普通にしゃべれるように気を付けてたのに、今は焦ってるからか、舌足らずになってしまっていた。
「ごめんなしゃい……」
「謝らなくていいの。ライカはまだ四歳なのよ? 四歳ならまだ普通なんだから」
「うん」
「さ、何か食べ物を取りに行きましょうか。ライカは何が食べたい?」
「リュナー!」
つい、謝罪したのだが母からは頭なでなでが来て、ついでに何か食べ物を取りに行こうということになったので、自分の好きなものをまず、リクエストする。
私は、リュナーが食べたいです。ちなみにリュナーとは、私の大好きな果物です。主食ではない、果物だ。
「それは、ご飯を食べた後にしましょうね」
「リュナーだめ?」
「ご飯を食べた後にならいいわよ」
「リュナーは、何食べたら食べれる?」
「パンを食べたり、お肉を食べたり、野菜を食べたりした後ならいいわよ」
「あい」
「さ、父様たちの分もお皿に盛って行きましょうね。母様がお皿を持つから、ライカがパンをとってね」
「あい」
と言うわけで、近くの貴族からパンをとるトングを受け取り、せっせとパンをとり、母の持つ皿へと載せていく。一個、二個、三個……………いくつ載せればいいんだっけ?
「ライカ、そろそろいいわよ」
五個ほど載せたところで、母からストップがかかる。そして、母はパンの載った皿を一緒に来ていた護衛の兵士にその皿を手渡した。
そして、次はお肉を取りに向かう。……お肉、あんまり好きじゃないんだけどねぇ。お肉はべたべたする感じが嫌い。ついでに言うと、前世から肉は苦手なのだ。
「ライカもお肉を食べなきゃダメよ」
「や。ライカ、おにくいや」
「お肉も食べないと、大きくなれないわよ? ライカはお肉が嫌いだから、こんなに小さいのよー?」
「大きくなるもん! おにく食べなくても、おおきくなれるもん!」
ねえ、母。そんなにお肉とらなくていいと思うんだけれども。そんなにお肉はいらないよぅ! お肉食べなくても大きくなるんだ!
「ふふ、ライカは本当にお肉が嫌なのね。じゃあ、次は野菜をとりましょうか」
「おやしゃい!」
うん、野菜は好きなんだ! 野菜はいっぱい食べる!!
「ライカは野菜は本当に好きなのね」
「おやしゃいしゅき!」
「王子妃殿下、ライキアーナ殿下、お飲み物はいかがですか?」
「そうね、席に運んでいてもらえる?」
「畏まりました、王子妃殿下」
そうやって野菜をとって、次の場所へ移動しようとしていると、そばにいたボーイが声をかけてきたので、母が席の方へ飲み物を運んでくれるよう告げる。これで、戻ったころには席に飲み物が準備されているだろう。
「さ、野菜もとったし、席に戻って食べましょうか。お父様と三人で、おいしく食べましょう」
「あい!」
よし、今からおいしくご飯をちょうだいするぞ!!!
ちなみに今回、兄は参加していない。兄自身が参加を遠慮したのだ。曰く、これは私の誕生日だから関係ない自分は参加しない、と。………関係あるのに。兄なのに。くすん。
「どうしたの? ライカ」
そうしていると、母が私の目元を優しく拭いながら告げる。……あれ? いつの間に泣いたんだろ。
「どうしたの? 何か、寂しい?」
「………にいしゃま、いないの。さみちーの」
「フォルトね。……あの子も、何で参加をあんなに嫌がったのかしら」
しょぼん。やっぱり兄は嫌がったんだね。関係あるのに。
と、そう思いつつ席に戻って父や母、祖父母と共に持ってきた食事をはむはむと食べ進めていく。うん、野菜おいしいの。
………母、お肉を載せないで! お肉いらない!!
「ダメ。好き嫌いせず、少しは食べなさい」
「や! おにくべたべた!」
「大丈夫。これは油もそんなにないからライカの嫌なべたべたはないわ」
「ホント?」
「本当。お母様を信じて、一つ食べてごらん」
「むー………………あむ」
母に言われて、恐る恐る、口に含む。……あ、べたってしてない。………むしろ、おいしい。噛んだら噛んだだけ味が出てくるし、べたべたした感触もない。
「おいしい?」
「おいち!」
「そう。それはよかった。シェフに気を付けさせたかいがあったわ。………もっと食べる?」
「たべる!」
こんなにおいしいお肉、初めて食べた! おいしい!
お肉って、油がきついから基本的に嫌いなんだけど、これは油が落とされていて、さっぱりして食べやすい。……ただ、上のソースがちょっと辛い。
というわけで、お水お水。………あ、ちなみに水はこぼさずに飲めるようになりました。食べるのはまだちょっと下手だけど。
あ、お肉は母が自分の分をくれました。普段私が肉を食べないから、こういう時に食べさせたい、だそうだ。これはおいしいのでありがたく頂戴する。
「ライカ、父様の分も食べるかい?」
「いいの?」
「ああ。ライカは普段肉を食べないからね。食べる気になった時にしっかり食べなさい」
「ありがとー、とうさま!」
「どういたしまして。さて、じゃあ俺は貴族たちに挨拶に回ってくる。ライカはここで、母様とご飯を食べてなさい」
「あい!」
うん、私はまだ挨拶回りは怖いから嫌です。食べてていいなら遠慮なく食べてます。うん、おいしい。
「ライカ、お野菜も食べなさい。お肉ばっかり食べてると、それだけでお腹いっぱいになっちゃうわ」
「ん………おやしゃいたべる」
確かに、肉ばかりでは栄養バランスが悪い。……まあ、普段は肉を食べないからこっちの方がいいのかもしれないけど。
でも、今肉をたくさん食べてリュナーを食べられなくなっても困る。ので、今は肉を止める。そしてお野菜食べる。うん、しゃきしゃきおいちい。
「おいしかった!」
うん、お肉食べた、野菜食べた、パンも食べた。後はデザートを食べれば完璧。でも、もうお腹いっぱい。
「もうお腹いっぱい? でも、リュナーを食べるんでしょ? 少しお腹を空かせるために歩く?」
「あい」
そうしていると、簡単に母にバレたので、母の案に賛成する。少し歩く。お腹空かせて、リュナーは絶対に食べる。
「ライカ、手を繋いでいましょうね。迷子になるから」
「あい」
そうして母としっかりと手を繋ぎ、下へと降りる。………あ、貴族たちがタカってきた。
「王子妃殿下、ライキアーナ殿下」
「あら、エスイーム侯爵、楽しんでいらっしゃる?」
「ええ、おかげさまで。まずはライキアーナ殿下、お誕生日おめでとうございます」
「あ………ありがと、ござます………」
「……おっと。ほかにもライカ殿下にお祝いを言いたいようですので、ここで失礼いたします」
………うん? ……うわっ! 貴族がたくさんいる!!
「あらあら、ふふふ。さ、ライカ。貴族のみなさんに挨拶しましょうか」
「……いっぱいいる! こわい!」
「怖くないわよ。不埒なことを考えてる貴族がいたら、それこそお父様が激高して、抹殺しちゃうからね☆」
「…………………………」
母、怖い。何で一年近くたってまた父の抹殺宣言を聞かねばならないのか。怖いって。
「あ、こら。離れちゃダメ。危ないでしょ」
「や! かあしゃまこあいっ!」
「あら、どうして? 怖くないわよ」
「とおしゃまこあいっ! かあしゃまこあいっ!」
「王子妃殿下、ライキアーナ殿下は賢くていらっしゃるのでしょう? いくらなんでも……その、抹殺と言うお言葉は恐ろしいと思うのですが………」
エスイーム侯爵、正解! 怖いんだよこの人たち。
もうやー! 怖い!!!
必死に足掻くのだが、もちろん母は離してくれない。まあ、確かに四歳児をここで離すわけにもいかないだろうが。
ちなみに、私は下の騒動に気が付いて様子を見に来た祖母に回収された。今は祖母にべったりと引っ付いている。うん、おかげでだいぶ落ち着いた。
「大丈夫よ、ライカ。あの怖いの二人は、お婆様が止めてあげるからね」
「うん、ばあさますき」
「あら? もう落ち着いちゃったの? しゃべり方が普通に戻ったのね」
「へ?」
「さっきのさっきまで、一年くらい前みたいに舌足らずで、懐かしかったのに」
「え?」
「まあいいわ。普通にしゃべろうが舌足らずだろうが、ライカは可愛い私の孫ですもの」
「え? へ?」
ねえ、ちょっと何祖母!? ついていけないんですけど!! え、ひょっとしてまたさっきまで舌足らず状態だった!? くう、気を付けてたのに!!
「ふふふ。さ、ライカはしばらくここにいなさい。ほら、リュナーよ。あーん」
「リュナー!? あむっ!」
が、そんな考えも祖母が私の目の前にフォークに刺したリュナーを差し出した瞬間に吹っ飛んだ。リュナー食べる!!
「おいしい?」
「おいち!」
「ほら、あーん」
「あむっ!」
うん、おいしい。リュナーは口に入れた瞬間に溶けるような感じがして、甘い味が広がるから大好き。
でも、やっぱりこの小さい体では、すぐに満腹になってしまう。
…………うん、お腹いっぱいで眠たくなってきた。
「あら? もうおねむ?」
「ばあしゃま……ライカ、ねむたい……」
「ですってよ、あなた? ライカはもう休ませても大丈夫かしら?」
「ああ。ライカ、眠たいならお部屋に戻ってお風呂に入って休みなさい。おやすみ」
「あい。おやしゅみなしゃい、じいしゃま、ばあしゃま」
そうしていると、寝ていいとの許可が下りたため、ありがたく寝ることにした。
祖母が迎えに来てくれた侍女に私を渡し、その侍女が私の背中をポンポンと叩いてくれる。くう、そうやってポンポンされると、眠たいのがさらに眠くなるじゃないか。お風呂、入る前に寝ちゃうよぅ………。
ちなみに、結局私が起きていられたのはあれからわずか数秒のみだったらしく、あっという間にぐっすりと眠っていた。
メイラ曰く、私は部屋に戻ってきてお風呂に入れられている間もぐっすりと寝ていて起きる気配などみじんも見せなかったらしく、その後着替えさせられ、ベッドに寝かされた後もまったく何も反応しなかったそうだ。
うん、疲れてたんだね。初めてパーティなんてものに参加したからだよね。
今日も、起きたばっかりなのに疲れちゃった。………よし、まだ朝だけどお昼寝しよう。
おやすみなさーい。