ライカの日記
きょう、じいさまによびだされていったら、サーリーとレイアがいた。
あそぼうとおもったのに、じいさまにとめられた。
あそびたいのに。あそびたいのに。あそびたいのに。
ちょっとないたけど、ないしょ。
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「ミルシア、何を読んでいるんだ?」
「あら、あなた。ライカの日記よ。サーリーが日記を書いてるって聞いて、ライカも書き始めたらしいわ」
「へえ。何を書いているんだ?」
「一緒に見ましょ。楽しいわ」
王城のある一室。そこでは、ミルシアとシュバルツの二人が、ライカにねだられて買い与えたノートを見ていた。
既に何かが記されたノート。表紙には、大きく『ライカのにっきちょう』と書かれている。
ライカのこの日記帳は、乳兄弟であるサーリーがこの王都に来るまでの間に日記を書いていると聞いて書き始めたものであるため、まだほとんどページは埋まっていない。
ミルシアとシュバルツは、そんなノートのページを一枚一枚、ゆっくりとめくりながら見て行った。
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きょうは、サーリーとおはなでティアラをつくった。
まえはまけたけど、きょうはかった。やった。
サーリーはくやしそうにしてた。でも、つぎもまけない。
ティアラをつくったあとは、サーリーとおひるねした。
あたたかくてきもちよくて、いっぱいねた。
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「ちなみに、そのティアラは私がもらいました」
「何だとッ!? ずるいぞミルシア!」
「あの時のライカ、可愛かったわよ。上目づかいで、『かあしゃまにあげゆ』って」
「ずるい! ずるいぞミルシア!!」
「あなたもライカにちょうだいって言ってみたら? いい子だから作ってくれるんじゃないかしら」
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きょうはあめだった。
だから、へやでほんをよんでもらった。
ときどきよめるところをよんでたら、サーリーがふしぎそうにしてた。
サーリーはまだよめないみたい。
でも、がんばるっていってた。
こんどあったらいっしょにほんよむ。
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「うむ、やはりライカは本を読むのが好きなんだな。今度プレゼントしよう」
「いいですわね。じゃあ、一緒に買いに行ってきますね」
「なっ!? ずるいぞミルシア!!」
「あなたはお仕事でしょう? 安心してくださいな。私が、きちんとライカを楽しませてきますから」
「ずるい! ずるいぞミルシア!!」
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きょう、サーリーかえった。
さみしい。
いっぱいないた。
いまもないてる。
かなしい。
あいたい。
いっしょにあそびたい。
なみだおちてぬれた。
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めくられていくノートの中、何かが記されたページのうち、一番真新しいページを見る。
そのページはところどころ、濡れたのか紙が歪み、文字が滲んでいた。無理やりそれを拭いたのか、紙が一部、破けているところもある。
「たくさん、泣いたんだな」
「ええ。お別れのあいさつで泣いて、部屋に戻ってからもたくさん泣いてましたわ。一緒にいたけれど、本当に悲しそうでした」
「………ナミス騎士団の団長をこちらの要職につけることが可能か、調べておくか」
サーリー一家が王都に引っ越してくる日は、そう遠くない―――――かもしれない。