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兄が私を認めるまで  作者: 神埼未来
三歳児番外編
18/28

サーリーの日記


番外編。

サーリーとライカが遊んだ際のサーリーの日記



 きょう、おうちをでた。

 おうまさんおおきい。

 たいようぽかぽか。



 きょう、そらからおみずがおちてきた。

 おうまさんぬれた。さむそう。



 きょう、あたたかい。

 おうまさんきもちよさそう。



 きょう、いいてんき。

 おはながたくさんさいてるところでごはん。おいしい。



 きょう、おしろについた。

 いっぱいねた。

 ライカにあった。あそべなかった。

 ちょこっとないた。


 *****


「何を見ているんだ?」


 国境沿いの砦の近くにある、小さすぎず大きくもない屋敷の中で、一人の女性がくすくすと笑いながら何かを見ていた。それを見た、夫である青年が静かに近寄り、尋ねる。


「あら、あなた」

「何を見ているんだ? 随分楽しそうじゃないか」

「先日、王都へ行ったでしょう? その間、時間があるからあの子に日記を書かせてみたの。最近、少しずつ文字も覚えて来ていたから、練習にね」

「へえ。俺にも見せてくれ」

「いいわ、一緒に見ましょ」


 彼女―――レイアが見ていたのは、先日一緒に王都に行った可愛い娘、サーリーに書かせた日記だった。

 三歳児らしく、ミミズののたくったような字ではあるが、それでも読めなくはない。それどころか、彼女たちからすれば十分な成長を感じられるモノ。

 そして、ここからはその日記の閲覧者が増える。ジルヴァル・ロイ・スタローン。スタローン伯爵家の二男にして、この国境沿いにあるナミス砦を守るナミス騎士団の団長である。

 普段は国境沿いの砦を守る騎士団の団長らしく、部下に厳しく自分により厳しい素晴らしい団長ではあるが、娘のことに関しては、それは適用されなかった。


「何々………?」


 *****


 きょう、ライカとあそんだ。

 おはなでかんむりをつくった。まけた。くやしい。

 ライカのはきれいだった。

 つぎはかつ。


 *****


「花の冠か。俺もサーリーの作ったものが見たかった」

「さすがに無理よ。王都からここまで帰って来るまでに枯れちゃうじゃない」

「うむ。……では、そのうちこの辺の花で………」

「今のサーリーのブームは、読書よ」

「……………」

「さ、次を読みましょうか」


 *****


 きょう、ライカとほんをよんだ。

 メイラによんでもらった。

 ライカもときどきよんでた。

 サーリーはまだよめない。

 サーリーもほんいっぱいよむ。


 *****


「ほう。さすがはライキアーナ殿下。賢くていらっしゃる」

「ライカ様ですもの。でも、そのおかげでサーリーもやる気を出してくれたわ」

「………ところで、サーリーはどうして読めないのにこの日記は書けたんだ?」

「書きながら、何度もどう書くか聞かれて、お手本は書いてあげたから。多分、あまり理解できてないでしょうね」

「なるほど。で、次は……と」


 *****


 きょう、ライカとおわかれした。

 さみしい。いっぱいないた。

 おうまさんあんまりみえない。

 いっぱいなく。

 またあいたい。

 ライカすき。

 ライカおともだち。

 ライカもないてた。

 ばしゃにのった。ライカがみえない。

 ライカがないてるこえがきこえた。

 サーリーもなく。いっぱいなく。

 ねてた。


 *****


「……………なあ、この珍しくいっぱい書かれた悲しい文章の最後は一体なんだ?」

「だって、馬車で泣き疲れて寝ちゃったもの」

「……ああ、そういうことか」

「ちなみに、この日記も泣きながら書いてたわ。……ほら、ここ、濡れて紙が歪んでるでしょ?」

「………そのうち、またサーリーを王都に連れて行かなきゃなぁ」

「でも、ここ(ナミス砦)の守りも大事でしょう? 無理しないでちょうだい」

「ああ。せめて、お前たち二人が王都へ行けるようには頑張るぞ」


 ぐっすりと眠るサーリーの横で、レイアとジルヴァルは起こさないよう気を付けながら、この後も続くサーリーの日記を読んでいく。

 時折、ミミズののたくりレベルが尋常ではなく読めず、書かれた文字を推理しつつ、それでも楽しそうに、二人笑って読み進めていた。


 *****


 おうちかえってきた。

 とうさまにとびついた。

 とうさまわらってた。

 とうさまだいすき。


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