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兄が私を認めるまで  作者: 神埼未来
三歳児編
17/28

母と私Ⅱ


 今日、私は母の部屋にシトラスを連れてきていた。曰く、最近仕事で忙しかった母が、休憩中にシトラスを連れてきてほしいとのことだったので、今、向かっているのである。


「かあしゃま~」

「ライカ! よく来たわね。ああ、シトラスもいらっしゃい」


 うん、ついた瞬間に笑顔で出迎えられた。ので、笑顔で母の胸に飛び込む。


「久しぶりね、ライカ。元気にしていた?」

「あい!」


 ちなみに、久しぶりといいつつも、最後にあったのは四日ほど前だったりする。

 でも、会えて嬉しいのは私も一緒なので、笑顔である。


「シトラスも久しぶりね。……………覚えてるわよね」

「わうっ」

「シトラスも、おぼえてるよねー」

「わうっ」


 ……いやいや、母よ。いくら何日か会ってないからって、シトラスが母を忘れるはずないでしょう。シトラスってば賢いいい子だし。

 確認を兼ねてシトラスに尋ねると、いい返事が返ってきた。うん、覚えてる。


「シトラスにはお肉を準備したわ。食べててちょうだいね。さ、ライカはこっち。膝の上、いらっしゃい」

「あい!」


 そうしていると、突如母付きの侍女の手がシトラスに伸び、抱いていたシトラスが奪われる。

 あ、いいなシトラス。おいしいお肉、たくさんもらって食べておいで。あ、でも食べすぎたらダメだよー。


「わうっ」


 ……視線だけで、言いたいことが伝わったようです。

 そう思いつつ、私は母と手を繋いでテーブルに移動する。先に母が座り、その後母に背を向けた私の脇に母の手が伸び、そのまま抱き上げて、膝に乗せてもらった。

 ちなみに、抱き上げてもらう際に母は私の体をくるっと百八十度回転させ、目が合うようにして膝に乗せる。ちなみに足は開いた状態です。


「ライカ、最近はお父様も忙しくてライカとお話する時間が取れないけど、寂しくない? 大丈夫?」

「あい! にいしゃまもいるからへーき」

「フォルトとは、仲良くなれてきた? お話しできてる?」

「………………にいしゃま、おこる」

「ライカが、フォルトを怒らせてるんじゃない?」

「にいしゃま、ライカがいるとこあい」

「あー、それはフォルトが悪いわ」


 ……………母よ、顔を合わせて兄の話ってどうだろう。兄、私が生まれて三年たっても冷たいのですよ。怖いのですよ。えぐえぐ。涙が浮かんできたぜ。


「大丈夫よ、ライカ。ライカはいい子だから、フォルトも優しく接してくれるようになるわ」

「ほんとぉ?」

「もちろん! フォルトもいい子ですからね」


 そうしていると、母がタオルを手に、流れてしまった涙を拭ってくれつつ、優しく告げる。

 うん、優しくなってくれるといいな、兄。


「さ、フォルトのことは考えないで、今は母様とライカでお話しましょうね」

「あいっ!」


 ちなみに、現在シトラスは侍女たちに肉を貰っておいしくいただいている。ええい、嬉しそうじゃないかシトラス。


「ラーイカ。今、ライカが一番に考えるべきはシトラスじゃなくて、お母様よ」

「あい、ごめなしゃいかあしゃま。ライカ、かあしゃまだいしゅき」

「母様も、ライカ大好きよ」


 うん、私は母が好きだし、母も私が好き。万事解決!


「んーっ、ライカってばいい笑顔! 可愛い!」

「かあしゃまだいしゅきっ!」


 ところで、今日は何の話をしましょうか、母よ。楽しい話を期待して来たんだよ?


「楽しい話? そうねぇ………お母様の生まれた国の話をしてあげましょうか」

「かあしゃまのうまれた国?」

「そう。ここの隣の国。イリディアっていうの」

「いりりあ?」


 ……………うまく言えませんでした。はい。イリディアですよね。


「お母様は、そのイリディアの第二王女なの。分かる? 二番目の女の子ってことね」

「にばんめ? かあしゃまには、ねえしゃまがいるの?」

「そうよー。ライカは賢いわねぇ。ついでに言うと、お兄様もいるわよ。弟もいるわよ。妹もいるわよ」

「いっぱいだぁ!」

「そうね、いっぱいよ。でも、それも王族の義務だから―――義務っていうのは、しなくちゃいけないことね」

「ぎむなのー?」

「そう。もしもの時のために、王家の血を絶やさないためにも、子供をたくさん作らなくちゃいけないの」


 ………でもさ母。これは楽しい話というよりは、微妙に重いんだけど。

 ていうか、兄の境遇を知った時の疑問の答えは、これか。

 兄は仮にも、母の夫、父がほかの女に産ませた子なのに、母は何も思わないのか。

 その答えは、これだ。母の中には、王族は子をたくさん残す義務があると考えている。そのためには、自分の夫がほかの女のところに行っても別に気にならないのか。

 ………そう言えば、祖父も祖母以外にも妻はいるんだっけ。後宮に三人くらいいるんだっけ。


「事実、お父様―――あ、ライカのお父様よ。お父様も次のこの国の国王だから、たくさん子を作る義務があるわ。だから、ライカの兄弟もいっぱいになるわよ」

「きょーだい、いっぱい?」

「そうね、今にたくさんになるわ。お父様も兄弟はたくさんですからね」

「でも、ライカあったことないよ?」

「そうねぇ。お父様のご兄弟はみなさん他国にお嫁に行ったり、国内の貴族と結婚したりでほとんど城におられないから」

「けっこんー?」

「そうよ。王族は、他国や貴族との関係を深めるために結婚するのよ。ライカも、もし結婚したい人がいたら、まず母様に相談するのよ。父様に相談しちゃダメよ。いーい?」

「どーちて?」

「父様に話したら、ライカの相手が抹殺されちゃうわよ」


 ………………………………………………………。

 あの、どうして父に相談したら父がその相手を抹殺しちゃうのかな。父、怖い。


「……って、あら? 意味、分かっちゃったの? あら、あらららら」

「とーしゃま、こあいのぅ………」

「ああ! 冗談よ、冗談。もっちろん冗談だからね」

「とおしゃまこあい~。うあーん」

「嘘よ、嘘。お父様はそんなことしないからね。ね!」


 いや、すごいナチュラルに言ってたよね。それ、やる気だよね。父怖い。


「な、ななな、泣かないでライカ! ね? いい子だから!」


 って、いつの間に泣いちゃったんだろうね。でも、仕方ないよね。まだ三歳だから、感情に引きずられて泣いちゃうんだよすぐに。


「わあぁぁああああぁぁん!」


 そして、自覚した瞬間に一気に来た。涙が浮かぶだけだったのに、本泣きになっちゃったよ。


「ライカ!」


 そうしているとなぜか父が来たのだが、今の私には逆効果だ。


「とうしゃまやだこあいー!!」

「ラ、ライカ!?」

「とおしゃまこあいのー! こっち来ちゃやーなのー!」

「ライカ!? ミルシア、何を話したんだ?」

「将来について、ちょっとね………」

「ミールーシーア?」

「ライカが大きくなって、もし付き合いたい子がいたら、母様に相談しなさいって、話したら……」

「それだけじゃ、ないよなぁ? 絶対に、他にも何か言ってるよな?」

「何かあったら、父様が相手を抹殺しちゃうわよ☆ って、つい……。理解できると思ってなかったの」

「理解してしまったのか。―――――まあ、多分抹殺するけどな」

「でしょう? だからつい、理解できないと思って言ったら、こうなってしまって………」


 ぎゃー! 父、こっち来るな! 抹殺宣言の主が近寄るな怖い!!


「ぎゃわわわわわあああああん!!」

「ラ、ライカ………」


 父がしょぼんとしているが、でも近寄るな! 怖い!!



 ちなみに、この大号泣は泣き疲れた私がうとうととし始めるまで続いた。


「さ、ライカはもう寝ましょうね。お昼寝の時間よ」

「ん………ひくっ」


 うん、目いっぱい泣いたからか、父の恐怖発言がどうでもよくなってきたよ。母、お部屋連れてってください。お昼寝します。あ、シトラスお願いします。

 そう思っていると、母が私を抱っこしててくてくと動いてくれる。

 シトラスは、お肉を食べ終わったらお部屋連れてきてください。

 うん、いっぱい泣いたから眠たいの。………おやすみなさーい。


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