表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄が私を認めるまで  作者: 神埼未来
三歳児編
16/28

シトラスと私

すみません、

予約忘れてました。

「シトラス、おて!」

「わんっ!」


 本日の私、シトラスに芸を仕込んでいます。とはいっても、この世界でも一般的なお手とかおかわりとか、伏せくらいだけど。

 でも、シトラスは賢いのか基本的にすぐに覚えてくれる。

 ………………うん、賢すぎても問題だーぁ。


「わんっ! ばうばうばう!」


 シトラス、何故に兄に会うたびに唸る、吠える。………うん、何となく分かるけどね。兄が冷たい目で見るからだね。シトラスってば、飼い主想いのいい子。でも、兄の目が今まで以上に怖くなるからやめて。

 事実、シトラスを見る兄の目が超絶怖い。そのせいでシトラスの吠え方も悪化してる。


「シトラス、めっ!」

「ばうっ! ………………きゅーん」


 あっ! ゴメンねシトラス。ちょっときつく怒りすぎちゃったね。そんな寂しそうに泣かないで。


「あう、ごめんねしとらしゅ。でも、しとらしゅもメッなの」


 その姿があまりにも可哀想すぎてつい声をかけてしまったのだが、私も動揺しているらしく、きちんと練習してシトラスと言えるようになっていたのに、また舌足らずな呼び方になってしまっていた。


「ごめんー。ごめんしとらしゅ。でもめーなの」

「きゅーん、きゅんきゅーん」

「ごめんー」

「きゅいんきゅいん」

「いいから、部屋に戻れお前たち。ここにいられると、その犬が唸ってやかましい」

「あい…………」


 そうやってシトラスに謝り倒していると、ついにそれを見ていた兄から部屋へ戻れとの命が下ってしまった、まあ、今回は完全に私が悪いので、大人しく引く。

 うう、シトラスってば飼い主想いのいい子なのかひどい子かわかんない。

 そうやってしょんぼりしたせいか、部屋に戻るとすぐにシトラスからはペロペロ攻撃をいただいた。


「こしょぐったいよ、しとらしゅ~。わうっ」


 ちょ、くすぐったい! くすぐったいから!!


「わうっ、ばううっ」


 って、そう言ってるそばから舐めつづけるな!


「し、とらしゅ~」

「こらこら、シトラス。あなたの主であるライカ様が困っておられますよ。メ、です」

「わうん………きゅーん」


 そうしていると、メイラやほかの侍女たちがシトラスを諌め、シトラスを抱っこして離してくれた。


「シトラス、ライカ様を困らせるようなことはしてはいけません。いいですね?」

「わんっ」


 ……シトラス、何で私が言うよりもほかの侍女が言うことの方を信じるの?

 くう、シトラスってば、飼い主は私だよ! 私の言うことも聞いてよぅ。しくしく。


「ラ、ライカ様!? どうなさいました?」

「へ?」

「悲しいのですか? 辛いのですか?」

「え?」

「泣いていらっしゃいます。ああ、目をこすってはなりませんよ。今、タオルを持ってまいりますので、それまで我慢してくださいね」

「ふえ?」


 言われて目に触れてみると、確かにその目がぬれていた。あれ、何で泣いてるの私。不思議。


「お待たせいたしました。さあ、涙を拭きましょうね」

「ん」


 その後、タオルを持ってきてくれたメイラに流れていた涙を拭いてもらい、そのままお昼寝の時間となったらしく、クローゼットの前へと誘われた。その後は寝巻に着替えさせてもらい、ベッドに上がる。

 さ、シトラスも自分のベッドにお戻り。シトラスもお昼寝しようね。


「さあ、おやすみなさいませライカ様」


 ぽんぽんと優しく体を叩かれ、どんどんと眠りに落ちていく。

 にしても、メイラの体ぽんぽんは、本当に睡魔を呼び込むな。…………すぴー。


「わんっ!」


 完全に眠りに落ちる前、耳元でシトラスの鳴き声が聞こえた。それはまるで、「おやすみ」と言っているようだった。

 シトラス、大好きだよ。可愛い可愛い、私のペット。


 ―――――おやすみ、シトラス。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ