シトラスと私
すみません、
予約忘れてました。
「シトラス、おて!」
「わんっ!」
本日の私、シトラスに芸を仕込んでいます。とはいっても、この世界でも一般的なお手とかおかわりとか、伏せくらいだけど。
でも、シトラスは賢いのか基本的にすぐに覚えてくれる。
………………うん、賢すぎても問題だーぁ。
「わんっ! ばうばうばう!」
シトラス、何故に兄に会うたびに唸る、吠える。………うん、何となく分かるけどね。兄が冷たい目で見るからだね。シトラスってば、飼い主想いのいい子。でも、兄の目が今まで以上に怖くなるからやめて。
事実、シトラスを見る兄の目が超絶怖い。そのせいでシトラスの吠え方も悪化してる。
「シトラス、めっ!」
「ばうっ! ………………きゅーん」
あっ! ゴメンねシトラス。ちょっときつく怒りすぎちゃったね。そんな寂しそうに泣かないで。
「あう、ごめんねしとらしゅ。でも、しとらしゅもメッなの」
その姿があまりにも可哀想すぎてつい声をかけてしまったのだが、私も動揺しているらしく、きちんと練習してシトラスと言えるようになっていたのに、また舌足らずな呼び方になってしまっていた。
「ごめんー。ごめんしとらしゅ。でもめーなの」
「きゅーん、きゅんきゅーん」
「ごめんー」
「きゅいんきゅいん」
「いいから、部屋に戻れお前たち。ここにいられると、その犬が唸ってやかましい」
「あい…………」
そうやってシトラスに謝り倒していると、ついにそれを見ていた兄から部屋へ戻れとの命が下ってしまった、まあ、今回は完全に私が悪いので、大人しく引く。
うう、シトラスってば飼い主想いのいい子なのかひどい子かわかんない。
そうやってしょんぼりしたせいか、部屋に戻るとすぐにシトラスからはペロペロ攻撃をいただいた。
「こしょぐったいよ、しとらしゅ~。わうっ」
ちょ、くすぐったい! くすぐったいから!!
「わうっ、ばううっ」
って、そう言ってるそばから舐めつづけるな!
「し、とらしゅ~」
「こらこら、シトラス。あなたの主であるライカ様が困っておられますよ。メ、です」
「わうん………きゅーん」
そうしていると、メイラやほかの侍女たちがシトラスを諌め、シトラスを抱っこして離してくれた。
「シトラス、ライカ様を困らせるようなことはしてはいけません。いいですね?」
「わんっ」
……シトラス、何で私が言うよりもほかの侍女が言うことの方を信じるの?
くう、シトラスってば、飼い主は私だよ! 私の言うことも聞いてよぅ。しくしく。
「ラ、ライカ様!? どうなさいました?」
「へ?」
「悲しいのですか? 辛いのですか?」
「え?」
「泣いていらっしゃいます。ああ、目をこすってはなりませんよ。今、タオルを持ってまいりますので、それまで我慢してくださいね」
「ふえ?」
言われて目に触れてみると、確かにその目がぬれていた。あれ、何で泣いてるの私。不思議。
「お待たせいたしました。さあ、涙を拭きましょうね」
「ん」
その後、タオルを持ってきてくれたメイラに流れていた涙を拭いてもらい、そのままお昼寝の時間となったらしく、クローゼットの前へと誘われた。その後は寝巻に着替えさせてもらい、ベッドに上がる。
さ、シトラスも自分のベッドにお戻り。シトラスもお昼寝しようね。
「さあ、おやすみなさいませライカ様」
ぽんぽんと優しく体を叩かれ、どんどんと眠りに落ちていく。
にしても、メイラの体ぽんぽんは、本当に睡魔を呼び込むな。…………すぴー。
「わんっ!」
完全に眠りに落ちる前、耳元でシトラスの鳴き声が聞こえた。それはまるで、「おやすみ」と言っているようだった。
シトラス、大好きだよ。可愛い可愛い、私のペット。
―――――おやすみ、シトラス。