メイラと兄
ライカお昼寝中につき、
兄とメイラ。
フォルトが本を読んでやり、ライカがぐっすりと眠ったことを確認すると、フォルトは静かに席を立ち、近くにいた侍女にさっきまで読んでいた本を手渡す。
そして、部屋を出ようとしたところで、その扉の所にある人影に気が付いた。
「フォルト様、よろしいでしょうか」
「あいつの専属侍女か。何だ」
「なぜ、フォルト様はライカ様に冷たく当たられるのですか? ライカ様は、純粋にフォルト様を好きでいらっしゃいます。それなのに、どうしてあなた様はライカ様をあんなにも悲しませるのですか?」
「お前には、関係のないことだ」
「ええ、関係のないことです。ですが、ライカ様が泣いて戻って来られるのを、これ以上見たくないのです」
「なら、あれを僕の部屋に来させなければいいだろう」
「そうすれば、また、泣かれるのです」
メイラはフォルトを捕まえて、ライカが起きないよう少し小さな声でフォルトに話しかけた。
内容は、フォルトのライカに対する態度。どうしてあんなにも冷たい態度をとるのか、と。
ライカはフォルトに会いに行くと、泣いて帰って来ることが多かった。冷たい態度をとられ、無視されて。そのたびにメイラは心を痛めていたのだ。
そのことで、フォルトと話したいとは思っていた。だが、ライカの専属侍女である彼女は、めったにフォルトと会うことはない。ゆえに、話す機会のできた今、逃すつもりはなかった。
「フォルト様、ライカ様は妹君でしょう。それなのに、どうして……」
「僕は、あれを妹と考えていない」
「どうしてっ!? 妹君でしょう」
「違う。あれは正統なる王家の人間。僕の半分は、農民だ。僕とあれは、なれ合っちゃいけないんだ」
「どうしてですか。フォルト様、あなたとて第一王子殿下のお子。立派な王族であらせられます」
「違うんだ。違うんだよ――――僕は」
「違いません。フォルト様も、立派な―――――」
「それ以上言うな」
「―――――申し訳ございません。一介の侍女如きが差し出たことを申しました」
「分かればいい。このことは、あれには言うなよ」
「もちろんでございます」
そして最後はメイラが負け、二人で天使のような寝顔をしたライカを一度見て、そしてフォルトは部屋へと戻って行った。