校長先生のお話(遠足後)
―…はい、それでは皆さん、静かに座ってください。
エー、皆さん、今日の遠足は楽しかったですか?天気予報では今日は大雨が降ると言っていたので、校長先生はとっても期待していました。しかし天気予報ははずれ、今日は雲ひとつない青空、つまり快晴です。校長先生は朝からガックリしましたよ。
…何ですか須藤君、なんでそんなこと言うんだって?君たちは楽しいかもしれませんが、先生たちにとっては苦行なんですよ遠足なんてものは。君たちも年をとれば分かります。
今日の遠足はバスでの移動でしたが、校長先生にとっては車での長距離移動だって腰に負担がかかるってもんです。しかし、バスガイドの赤石さんはとても優しい人でしたね。皆さんに一つずつ、飴をプレゼントしてくれて。皆さんは何味の飴をもらいましたか?イチゴ?オレンジ?メロン?…校長先生は何故か、ハッカ味をもらってしまってガックリしました。
動物園では、校長先生はベンチに座って皆さんの様子を見ていました。本当に皆さん楽しそうでしたね。両手を上げて走って。一番はしゃいでいた3組の奥野先生は、はしゃぎすぎて転んでしまいましたね。両手をあげて走っているからです。皆さんも奥野先生みたいにならないよう、今後気を付けてください。…奥野先生、泣かないで。転んだときにパンツが見えましたが、それが何色だったのかは校長先生と奥野先生だけの秘密です。
…ほらみんな、そんなにブーイングしない。何色か教えろだなんて言わない。奥野先生が泣いちゃうでしょ?校長先生は口が裂けても、奥野先生のは水色だったなんて言いませんからね。…ほらみんながブーイングするから奥野先生が泣いちゃったじゃないですか。奥野先生、泣かないで。水色と白の縦縞だったとまでは絶対に言いませんから。
泣くと言えば。お弁当の時間に泣いたのは宮下君でしたか?お弁当を忘れてしまったんですよね。よくある話です。かわいそうなので校長先生は宮下君に、バスガイドさんから頂いた大・切・な!ハッカ飴をプレゼントしました。宮下君、気にしないでください。校長先生は豪華3段弁当を持ってきていたので、宮下君に飴をあげても何の問題もありませんでしたよ。
おやつの時間、校長先生はびっくりしました。おやつは300円まで。先生たちが口を酸っぱくして言ったと思いますが、まさか高木さんが300円分のアイスクリームを持ってくるなんて考えもしませんでした。しかも安売りのスーパーで買ってきたからって、5つも持ってきてましたね。5つも!
…しかし、全て溶けていましたね。当たり前です。常識的に考えて分かりませんか?アイスは溶けるんですよ。もう夏ですからね。
校長先生みたいに、保冷剤をたくさん用意してくるべきです。校長先生のガリガリくんは、溶けてませんでしたよ?さすが、校長先生です。
高木さん、リュックがベタベタですね。溶けたアイスが、リュックの中にプールを作ってましたからね。かわいそうに。次回からはきちんと保冷剤を持ってくるべきですよ。
帰りのバスでは、点呼係の渡辺さんがきちんと点呼を取って、全員いることを確認していましたね。えらいです。さすが点呼係です。しかし、バスガイドの赤石さんのことをすっかり忘れていましたね。赤石さんは今頃、あの動物園で一人泣いているでしょう。かわいそうにね。バスにおいてけぼりにされてね。バスガイドなのにね。さすが点呼係の渡辺さんです。
さて、そろそろ校長先生のお話は終わりにしようと思います。…皆さん嬉しそうですね。校長先生も嬉しいです早く家に帰りたいですもう疲れましたよ君たちと一緒に行動するのは。
最後に、これはいつも言うことですが、『自分の家に帰るまでが遠足』です。校長先生の家は君たちの後ろにある…そうそう、そのマンションですから、校長先生の遠足はここで終わりです。しかし、君たちの家はここからまだ5キロほど離れています。皆さん、気を引き締めて歩いて帰ってください。帰るまでが遠足ですよ!校長先生は家に帰ったらビールでも飲んでゆっくりします。今日は暑かったですし。
それでは皆さん、また月曜日にその元気な顔を見せてください。校長先生は楽しみにしてますよ。それでは、解散。