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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第8話 ホールガーメントの衝撃と、迫りくる魔導建築師

 地下室でパンツ一丁のまま絶望していたゼイル将校に、俺は約束通り「服」を与えることにした。


 ただし、それは単なる布切れではない。ホームセンターの作業着売り場、そして最新のスポーツウェア技術を異世界の素材で再現した、俺の【超絶DIY】の結晶だ。


(まずは素材の精製だ。リサイクルした帝国の軍服から抽出した牛革の繊維、そしてミアの魔力から分離した高分子のエネルギーを、分子レベルで再構成する……)


 俺は地下室の壁面の一部を「3D編み機(ホールガーメント)」へと変換した。


 通常の服は布を裁断し、糸で縫い合わせる。だが俺が作るのは、一本の糸から立体的に編み上げる縫い目のないウェアだ。


 シュルシュル……と、目に見えない魔力の編み針が、空中に光る繊維を紡いでいく。


 素材は、通気性と速乾性に優れた「擬似ポリエステル」と、強度を担保する「魔導アラミド繊維」のハイブリッド。さらに、肌に触れる内側には、ゼイルの肌荒れ(と、さっきまでのパンツの擦れ)を考慮し、滑らかなシルクプロテイン加工を施した。


「な……なんだ、あの光の繭は……。服が、虚空から編まれていくというのか……?」


 ゼイルが呆然と見守る中、一分足らずで漆黒の「タクティカル・アンダーウェア」が完成した。


 筋肉の動きをサポートするコンプレッション機能。激しい動きでも蒸れず、刃物を通さない強靭な防刃性。これこそ、現代の現場作業と戦場を融合させた究極の一着だ。


『ゼイル将校、それを着ろ。それが「本物の現場」の装備だ。お前の国の、重くて硬いだけの甲冑がいかに時代遅れか、その身で理解しろ』


 ゼイルが震える手でそのウェアを身に纏う。


 瞬間、彼の目が見開かれた。


「……軽い。まるで、自分の皮膚が新しくなったようだ。関節の動きに全くの抵抗がない。それでいて、この守られているような安心感はなんだ……。この服一着に、我が国の魔導工廠の一年分の予算がつぎ込まれているのか……!?」


(いや、在庫の余り物と魔力で作ったから原価はゼロなんだけどな……。まあ、その感動が「対価」だ)


 俺は彼に、続いて「タクティカル・ジャケット」と「ストレッチ・パンツ」を投げ与えた。


 これらはすべて、俺が管理するこの家の「住人(または捕虜)」として登録された者が着用することで、心拍数や位置情報を俺に送信するスマートウェア機能も備えている。


 いわば、彼は今、俺という「システム」の末端になったわけだ。


「……降伏だ。この一着だけで、我らの敗北を悟るに十分すぎる。貴殿の技術は、国を一つ滅ぼすよりも恐ろしい……」


 ゼイルが膝を突く。


 その瞬間、俺の「外部索敵センサー」が、地平線の彼方に奇妙な反応を捉えた。


 ゼイルたちのような「武骨な軍隊」の振動ではない。


 もっと静かで、それでいて規則正しい……まるで、空間を定規で測りながら進んでくるような、不気味に整った魔力の波形。


(……南東方向、約5キロ。……数が少ないな。たった二人か? だが、この魔力の密度はさっきの連中とは比較にならない)


 俺はリビングで眠るミアを起こさないよう、地下の掲示板に警告を表示した。


『ゼイル、客だ。お前の仲間か?』


 ゼイルがモニターに映し出された遠景を見て、顔を蒼白にさせた。


「……あ、アウラ様だ。宮廷魔導建築師のアウラ・マナ……! 彼女が来たのか……!」


『魔導建築師?』


「そうだ。彼女は一人で城壁を築き、一夜にして迷宮を構成する、帝国最高の『空間構築』のスペシャリストだ。……仙太殿、逃げろ。彼女は私のようにはいかない。彼女にとって、建物とは『支配すべき対象』に過ぎない……!」


(ほう、建築のスペシャリスト、ねぇ)


 俺は、その言葉に不安どころか、奇妙な高揚感を覚えていた。


 ホームセンターの店員として、数多の「プロの職人」と対峙してきた俺だ。


 我流の魔法で家を作る者と、現代の建築学とDIYの工夫を極めた「俺」……どちらの設計思想が優れているか、決着をつけるのは悪くない。


『面白い。ミア、起きろ。特等席を用意してやる』


 俺はリビングのソファを少しだけ窓際に寄せ、外壁の「カモフラージュ・テクスチャ」を一部透明化した。


 外では、夕闇の中に二つの人影が立っていた。


 一人は、巨大な「コンパス」のような杖を持った、眼鏡のインテリジェンスな女性。もう一人は、その横で大きな荷物を抱えた従者らしき男。


 彼女――アウラは、俺の外観(ボロ屋)をひと目見るなり、冷酷に切り捨てた。


「……ひどい歪みね。黄金比のかけらもない。こんなゴミ溜めの中に、我が国の重要資産が隠れているというの? ……いいわ、一瞬で『更地』にして、地下から掘り出してあげましょう」


 彼女が杖を地面に突き立てる。


 瞬間、俺の「土台」を支える大地の魔力が、無理やり書き換えられるのを感じた。


《警告:外部より「構造分解魔法」を検知。地盤の液状化を誘発し、建物を倒壊させようとしています》


(なるほど、基礎を狙うか。建築の基本は分かっているらしい。……だが、俺の「ベタ基礎」は魔法の液状化ごときで揺らぐほどヤワじゃないんだよ!)


 俺は、地下のコンクリートに「高極性高分子」を注入し、地盤そのものを瞬間的に「凝固」させた。さらに、魔法の干渉を遮断する「絶縁層」をDIYで施工する。


「……あら? 倒れない。……おかしいわね。私の計算では、今の振動で屋根瓦の一枚くらいは落ちるはずなのに」


 アウラが眉をひそめ、眼鏡をかけ直す。


 彼女と俺。


 異世界の「魔導建築」と、現代の「DIY工学」の、意地をかけたリフォーム(破壊)とメンテナンス(守護)の戦いが幕を開けようとしていた。

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