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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第7話 湯上がりの決意と、機密という名の「高級資材」

「ふあぁ……。仙太さん、見て。私、こんなに肌がピカピカになったの初めて……」


 脱衣所のドアが開き、ミアがゆっくりと姿を現した。


 俺がDIYで編み上げたオーガニックコットンのルームウェアは、淡いクリーム色で彼女の銀髪によく映える。吸水速乾性に優れたその生地は、彼女の華奢な体を優しく包み込み、湯上がり特有の熱を適度に逃がしながらも、冷えからは完璧に守っている。


(……ほう。毛穴の詰まりも、魔力の澱みも一掃されたな。やはり、あの『高濃度炭酸泉』の配合は正解だった。pHバランスも完璧だ)


 掲示板に文字を浮かび上がらせる。


『良かったな。だが、あまりに長湯すると湯冷めする。そこのソファに座れ。飲み物を用意してある』


「ソファ……? わぁ、なにこれ、沈んじゃう!」


 ミアが腰掛けたのは、前世で「人をダメにする」と謳われたビーズクッションの構造を応用し、魔力で生成した極細の合成繊維を充填した特製ソファだ。体圧分散理論に基づき、座る者の体型に合わせて自在に形を変える。


「冷たい、木の実のジュース……。それに、この『ソファ』。……仙太さん、あなたはどうして、こんなに私に尽くしてくれるの?」


 ミアがグラスを握りしめ、少し潤んだ瞳で掲示板を見つめる。


『言っただろ。俺はこの家の管理者だ。住人が最高のコンディションでいることは、建物の資産価値を高めることと同じなんだよ』


 照れ隠しではないが、ついホームセンター店員らしい「管理」という言葉を使ってしまう。だが、ミアはふっと微笑んで、クッションに深く背中を預けた。


「……うそ。管理じゃなくて、あなたは『家族』みたいに温かいわ。私ね、もうここから一歩も出たくない。ずっと、あなたの『中』にいたい。もし帝国が攻めてきても、私、あなたの掃除を手伝うから……だから、捨てないでね?」


 彼女の小さな手が、リビングの壁を愛おしそうに撫でる。


 その瞬間、俺の「構造体」に、彼女の指先の温度がダイレクトに伝わってきた。センサーが感知する数値以上の、切実な「信頼」の重み。


(……捨てないさ。俺の家としてのプライドにかけてな。……さて、そのためにも、外の『害虫』の処理を終わらせておくか)


 ミアが幸せそうにうとうとし始めたのを確認し、俺は意識の比重を地下室へと移した。


 地下特別室。 そこではゼイル将校が、コンクリートの壁の「(コーナー)」を凝視したまま、ぶつぶつと呟いていた。


「……ありえん。この直角。誤差は0.1ミリもないのではないか。石を削って作ったのではない、この壁は……成長しているのか……?」


『ゼイル将校。壁の精度を褒めるのはそれぐらいにしておけ。……質問だ。帝国がお前たちを差し向けた真の目的は何だ。単なる「魔力感知の奴隷」を取り戻すためだけにしては、軍の正規装備が豪華すぎる』


 地下の壁面に、赤く光る文字を投影する。


「……ふん。喋ると思うか? 貴様がどれほど優れた石工、あるいは魔導師かは知らんが、帝国の威信にかけて――」


『威信、か。お前の着ていた甲冑……あれ、リサイクルして分かったが、配合に「古代の魔導金属」が微量に含まれていたな。お前たちの国には、あれを安定して精製する技術はない。どこかの「遺跡」から掘り出したものを使い回しているだろ?』


 ゼイルの表情が、目に見えて強張った。


「貴様……なぜそれを……」


『俺の目は、素材の分子構造まで見通す。……そして、ミアの「魔力感知」。お前たちが彼女を追っていたのは、埋蔵されている「古代の資材(レガシー・マテリアル)」を特定させるためだな?』


 沈黙。


 それが肯定であることを、俺の「心理分析アルゴリズム(心拍・体温監視)」が告げていた。


『これ以上の抵抗は無意味だ。お前が素直に「遺跡」の場所と、そこにある「資材」の情報を吐くなら、お前に「服」を返してやってもいい。……俺がDIYで作った、帝国の最新装備よりもはるかに頑丈で、着心地の良い軍服をな』


 俺は、彼の目の前にホログラム……いや、魔力投影で「次世代型タクティカル・ウェア」の設計図を提示した。


 防刃性、防水性、そして体温調整機能を備えた、この世界には存在しない機能性衣料だ。


「……ふ、服だと? 我ら軍人に、そんな甘い誘惑が――」


『お前。そのパンツ、さっきから股のところが擦れて痛いだろ? 縫製が悪すぎる。俺なら、縫い目のない「ホールガーメント」で、お前の体型に完璧にフィットする最高の一着を、一分で作れるぞ』


 ゼイルの視線が、自分の無様なパンツに、そして提示された設計図の「機能美」へと吸い寄せられる。


 職人としてのプライドを持つ者、そして最前線で装備の不備に泣かされてきた軍人にとって、それは何よりも抗いがたい誘惑だった。


「……古代の、遺跡……。そこには、魔導文明の(コア)があると言われている。『賢者の石』の原型とも呼ばれる、無限の魔力を秘めた結晶体だ」


 ようやく、重要な「資材名」が飛び出した。


『無限の魔力結晶……。なるほど、それは「DIYの動力源」として、これ以上ない最高級のパーツだな』


 俺の中で、次なる建築計画が組み上がっていく。


 今はまだ一軒のボロ家。だが、その「結晶」を手に入れれば、この家を浮遊させ、あるいは巨大な都市へと拡張することも可能になる。


(ミアを守り、俺が究極の城へと進化するために……必要なのは「素材」だ。帝国という名の仕入れ先から、さらに多くのものを徴収させてもらおうか)


 地上では、ミアがソファの上で幸せそうに寝息を立てている。


 地下では、一人の軍人が俺の技術に屈し、軍事機密を差し出している。


 俺は、一階のキッチンの棚を少しだけ広げ、彼女が明日使うための「新しい食器」のデザインを始めながら、遠くにあるという遺跡への攻略シミュレーションを開始した。


「……よし。まずは、外壁の『塗装』を強化して、物理防御力を300%アップさせるところから始めるか。現場の基本は、養生と下地処理からだ」


俺のDIYどえらい・いけいけ・やりなおしは、まだ始まったばかりだった。

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