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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第52話 最終決戦! アポカリプス・デリバリーを解体せよ!

「……来るぞ! 全員、ワークブーツのスパイクを最大出力で固定しろ!」


 (仙太)の叫びと同時に、漆黒の巨大貨物機『アポカリプス・デリバリー』が加速した。


 それは、かつて俺たちが旅を共にしたエデン・エクスプレスの「負の側面」そのものだ。洗練され、無駄を削ぎ落としたその機体からは、触れるものすべてをデータへと還元する「終焉の波動」が放たれている。


「無駄な抵抗だ、臨時店長。この機体は、君たちが救ってきた人々の『感謝の記憶』を燃料に変換している。……皮肉なものだな。君が築いた絆が、君を葬る刃となるのだ」


 ギリアムの冷徹な声が響く。貨物機のハッチが開き、中から無数の「思い出の断片」がミサイルとなって降り注いだ。アイアン・ポートでの祝杯、フェルティルでの収穫祭……温かい記憶が、鋭利な攻撃となって俺たちの心と肉体を削っていく。


「……くっ、身体が……想い出に引っ張られて、動けない……!」


 アウラが膝をつく。過去の幸福すぎるデータは、今の過酷な現実に「絶望」という名のブレーキをかける。


『……ギリアム。お前は分かってねぇ。……思い出は「燃料」じゃねぇ。……今の俺たちを支える「土台(バラスト)」なんだよ!』


 俺は、黄金の絆ワイヤーを自分たちの身体にきつく巻き直した。


 ワイヤーが俺たちの皮膚に食い込み、鋭い痛みが走る。だが、その痛みが「今、ここに生きている」という強烈な実感を俺に与えた。


『アウラ、レヴィン! 過去を見るな! ……今、俺たちの手が握っているツールの「重み」だけを信じろ!』


 俺は、本店から取り寄せた【商品名:絆・ドリル】の起動レバーを引いた。


 このドリルは、過去のデータでは動かない。


「今、この瞬間の心拍数」と「筋肉の摩擦熱」、つまり「不器用な努力」をエネルギーに変換する、究極のアナログ兵器だ。


※過去への後悔(Regret)を引き算し、今この瞬間の熱量を積分することで、理論上無限の「修復力」を生み出す。


「……なるほど。店長殿、理解しました。……過去という『完成品』ではなく、未来という『仕掛品』に賭けるのですね!」


 レヴィンが、手書きの修正プログラム(規約)をドリルに流し込む。


 アウラが、魔力を「今、この瞬間の怒り」に変えてブーストをかける。


『ルンボ! 道を作れ! ……デカい方を「開墾(かいこん)」してやるぜ!』


「ギギ……リョウカイ! ……ボク、今……一番、力持ち!」


 ルンボが、アポカリプス・デリバリーの強固な装甲に素手で食らいつき、無理やり隙間を抉じ開けた。その「非効率な力業」こそが、ギリアムの予測計算を最も狂わせるノイズとなる。


 俺はバケットから飛び移り、漆黒の機体へと取り付いた。


 狙うのは、機体の中枢にある「全自動・運命管理エンジン」。


 俺は、手にした万能レンチをドリルの先端にドッキングさせた。


『……リフォームの基本はな、腐った土台を「剥がす」ことから始まるんだ!』


 ガガガガガガッ!!


 絆・ドリルが、黒い装甲を火花散らしながら穿っていく。


 ギリアムの完璧なシステムが、俺たちの泥臭い振動によって共振し、ボルトが一本、また一本と弾け飛んでいく。 それは破壊ではない。


「自分たちで選び、自分たちで直す権利」を取り戻すための、聖なる解体作業(デモリション)だ。


 ついに俺は、機体の最深部、ギリアムが座る玉座へと辿り着いた。


 彼は、無数のコードに繋がれ、自分自身を「システムの一部」としてパッキングしていた。


「……なぜだ。なぜ、これほどの不確定要素(ノイズ)で、私の完璧な論理が負ける……。……私はただ、誰もが傷つかない、効率的な世界を……」


『……お前、一人で寂しかったんだな』


 俺はドリルを止め、レンチを腰に差した。 ギリアムの瞳が、僅かに揺れる。


『……完璧ってのはな、誰も中に入れない「究極の断熱材」と同じだ。……外からの風も通らなきゃ、中の熱も伝わらねぇ。……お前は世界を守ってたんじゃない。世界から自分を「隠してた」だけだ』


 俺は、ツールバッグから一本の、どこにでもある【商品名:潤滑浸透スプレー(錆び取り用)】を取り出した。


 そして、ギリアムをシステムに縛り付けている「固着したボルト」に、シュッ、と吹き付けた。


『……ほら、少しは力を抜けよ。……お前の人生、まだ「在庫処分」するには早すぎるぜ』


 スプレーの薬剤が染み込み、ギリアムを縛っていた「効率の呪縛」が、音を立てて解けていく。


 アポカリプス・デリバリーが光の粒子となって崩壊し、白い虚無の空間に、かつての夕焼けのような、温かいオレンジ色の光が戻ってきた。


「……あ。……温かい……」


 ギリアムの手が、システムから離れ、震えながら自分の膝に触れた。


 彼はもう全能の神ではない。


 ただの、少し疲れた顔をした一人の男だ。


「仙太さん……終わったんだね」


 ミアが、駆け寄って俺の腕を支える。


 俺の右腕は、ドリルの反動で感覚がなくなっていたが、ミアの掌の温かさだけは、はっきりと感じることができた。


 崩壊した漆黒の機体の跡には、小さな、古びたホームセンターの店舗だけが残されていた。


 看板には、手書きで『エデン・ホームセンター』と書かれている。


『……さて、野郎ども。……最後の「棚卸し」と「掃除」を始めるぞ。……ここを、誰でも入れる「ただの店」に直すまでが、俺たちの仕事だ』


 アウラが「掃除なら任せて!」とホウキを魔法で作り出し、レヴィンが「在庫目録の再編」を始め、ルンボが壊れた棚を直し始めた。


 そして、俺は。 茫然と座り込むギリアムに、一枚の【商品名:軍手】を投げ渡した。


『……座って見てるだけじゃ、リフォーム代は払えねぇぞ。……手ぇ貸せ、ギリアム。……お前の「無駄な時間」を、ここから始めるんだ』


 ギリアムは、不器用な手つきで軍手をはめた。


 その目には、初めて「未来」という名の、不確実で美しい光が宿っていた。

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