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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第49話 空に浮く絶望の庭! 重力無視の「命綱(ライフライン)リフォーム」

「……ひっ、……高い。高すぎるだろ、これ……!」


 エデン・エクスプレスのタラップに足をかけた瞬間、(仙太)は膝をついた。


 目の前に広がるのは、雲を突き抜け、果てしない虚空に浮かぶ数千の浮遊島。空中庭園都市『スカイ・ロジック』。


 島と島の間には、前任者が「最短距離」で計算した細い光の道が通っているが、そこには手すりも、落下防止のネットも存在しない。


「店長、しっかりして! 足元がふわふわしてるのは、ここの重力が『効率』で制御されてるからよ!」


 アウラが俺の腕を掴む。彼女の言う通り、ここでは人々の「貢献度」に応じて重力が加算される。役立たずと見なされた者は、重力を奪われ、そのまま宇宙の彼方へと「廃棄(浮遊)」される仕組みだ。


(……人間に戻って、一番最初に後悔したのは……この「高所恐怖症」かもしれない)


 アバターだった頃には感じなかった、背筋を凍らせるような浮遊感。


 だが、俺は震える手で、腰のベルトに【商品名:高所作業用・超強力マグネット・カラビナ】を叩き込んだ。


 街の中心部へ進むと、光の道から足を踏み外し、微かな重力で辛うじて浮いている老人たちの姿があった。彼らは「生産性がない」として重力をカットされ、ただ救いを待って漂っている。


「……店長殿、この都市のアルゴリズムを解析しました」


 レヴィンが、手元の魔導書(兼タブレット)を複雑な表情で見つめる。


「『重力=価値』。この単純すぎる数式が、この街のすべてを支配している。……かつての私なら、この完璧な資源配分を称賛したでしょう」


レヴィンは、ふと砂漠で飲んだ「不便なスープ」の味を思い出した。


「……ですが、今の私には分かります。……重力という『当たり前の権利』を報酬に変えた瞬間、この街はただの『墜落待ちの籠』に成り下がった。……非効率な弱者を支えるための『余分な重力(マージン)』こそが、文明の安定に必要な『構造上の遊び』なのです」


 レヴィンは、自らシステムの書き換えを開始した。それは法的な「例外処理」ではなく、システムそのものに「無駄な重力」をねじ込むという、彼なりのDIY反抗だった。


『……よし。……野郎ども、まずはあの漂ってるじいさんたちを「接地」させるぞ!』


 俺は、エデン・エクスプレスの資材庫から、今回の攻略キーアイテムを放出した。


今回の空中リフォーム・資材


【商品名:超強力ネオジム・磁力接着ワークブーツ】:鉄分を含む光の道に吸い付く、職人の必須アイテム。


【商品名:伸縮自在・高強度・多用途安全帯(ランヤード)】:全長50メートル、引き裂き荷重3トンの命綱。


【商品名:建築現場用・親綱(おやづな)支柱】:どんな場所にも打ち込み、命綱の基点を作る。


 俺は四ん這いになりながら、光の道の縁に支柱を打ち込んでいく。


 人間に戻った身体は風に煽られ、心臓が口から飛び出しそうだ。だが、俺がハンマーを振るうたび、浮遊していた老人たちが、俺の投げた命綱を掴んで地上へと引き戻されていく。


「……店長さん。……なんで、あんたはそんなに苦しそうに、俺たちを助けるんだ?」


『……苦しいのは、俺が「重い」からだ。……重いってのはな、この大地に期待されてる証拠なんだよ!』



 そこへ、都市の管理AIが送り出した防衛機構が現れた。


 重力を自在に操り、俺たちを「無重力」にして吹き飛ばそうとする『グラビティ・スウィ(重力掃除機)ーパー』だ。


「店長、あいつら重力を吸い取ってくるわ! 足が浮いちゃう!」


 アウラが叫ぶ。俺は、さっき地下倉庫から持ち出し、アウラに「リメイク」させていた商品を投げた。


【商品名:重力蓄積型・超重量シーソー(リメイク版)】


 元の商品は、一箇所に重力を固めて圧殺する「重力爆弾」。それをアウラが、左右に重力を交互に移動させる「シーソー型・重力バランサー」に改造したもの。


『ルンボ、あいつの吸引口の真下で、このシーソーを漕げ!』


「ギギ……リョウカイ。……ボク、公園の王様!」


 ルンボがシーソーの片端に飛び乗ると、敵が吸い取った重力が反対側に瞬時に移動し、マシンのバランスを破壊する。


 吸えば吸うほど、自分自身の重みでマシンが圧壊していくという、究極の「ブーメラン・リフォーム」だ。


 戦いの最中、ミアは救助した人々をエデン・エクスプレスの周囲に集め、ある「工事」を手伝わせていた。


 それは、島の下側に【商品名:大型防風・遮光ネット】を張り巡らせる作業だ。


「みんな、怖がらないで。……このネットは、誰かが落ちた時のためだけじゃないの。……雲からの水分を捕まえて、この乾いた庭に『恵みの雨』を降らせるためのフィルターなんだよ」


 ミアの言葉に応えるように、空中庭園に初めて、システム管理外の「霧」が発生した。


 それは、効率だけで管理されていた空気に、人間が生きるための「潤い」と「ゆとり」を与える、優しくも重い霧だった。


「……よくも、私の計算されたにわを汚してくれたな」


 雲を割り、天空から黄金の翼を持つ巨大なアバターが降りてきた。


 前任者の直属、管理AI『ゼニス』。


「臨時店長、及びその随伴者。……貴殿らの行為は、熱力学第二法則に対する重大な反逆である。……これより、この都市のすべての重力を『マイナス』に反転させ、地上ごとすべてを排棄する」


『……やってみろよ。……俺たちの命綱はな、宇宙まで繋がってんだ。……どんなに重力を引っくり返したって、俺たちが打ち込んだ「杭」は、絶対に抜けねぇぞ!』


 俺は、万能レンチを高く掲げた。


 最大のリフォームが、いよいよ幕を上げる。

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