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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第45話 氷の城を解体せよ! 灼熱のドリルと「心の壁」の剥離剤

「……デカいな。これ全部が『冷気の発信源』かよ」


 見上げる(仙太)の視界を遮るのは、高さ百メートルを超える巨大な氷の尖塔。王城『ゼロゴス』。


 表面は鏡のように滑らかだが、その内側からは「熱を拒絶する」という強い意思を感じさせる、刺すような冷気が吹き出している。


「店長、作戦通りに行くわよ! ルンボ、クレーンアームの接続を確認して!」


「ギギ……準備、完了。……テンチョウ、乗れ。……ボクが、上げる!」


 ルンボの背中に増設された【商品名:高所作業用・油圧式伸縮バケット(魔導強化版)】に、俺は乗り込んだ。手には、本店から取り寄せた最高重量の工具――【商品名:超硬チップ搭載・高出力魔導振動コア・ドリル】を握りしめている。


 人間に戻った俺の腕には、このドリルの自重すら重い。寒さで指先の感覚が失われそうになるが、ミアが持たせてくれた魔法のカイロが、辛うじて俺の「職人の感覚」を繋ぎ止めていた。


「……熱の侵入を許さぬ。……静寂こそが、永遠の秩序なり!」


 城の頂上から、『絶対零度の王』が氷の槍を降らせてくる。


 だが、それを防ぐのはレヴィンの冷静な指揮と、アウラの爆発力だ。


「レヴィン、防壁の角度計算、お願い!」


「承知した。……左30度、迎撃角15度。……アウラ、そこだ!」


 アウラが放つ炎の魔法が、氷の槍を空中で蒸発させる。その隙を突いて、ルンボのアームが俺を城の「外壁」へと押し付けた。


『……よし、まずはこの「面の皮」を剥いでやる! ……アウラ、【商品名:超強力・魔導式剥離剤『メルティ・ガム』】を散布しろ!』


「了解! ……食らいなさい!」


 アウラが噴霧器から放ったのは、氷の分子結合を一時的に弱める特殊薬剤だ。氷がシュワシュワと音を立てて泡立ち、脆くなったその一点に、俺は振動ドリルを突き立てた。


 ガガガガガガッ!!


 激しい振動が、俺の肩と背骨を突き抜ける。全能だった頃なら眉一つ動かさなかった衝撃が、今は「生きた実感」として俺の肉体を叩く。


『……っ、固ぇ! ……だが、どんなに分厚い壁だってな……繋ぎ目(目地)はあるんだよ!』


 ドリルが氷の深層部へと食い込み、巨大な亀裂が走る。


 そこへ俺は、次の商品を流し込んだ。【商品名:瞬間膨張・解体用ジャッキ】。


 パキィィィィン! という鼓膜を劈くような音と共に、城の外壁が巨大な氷の塊となって剥がれ落ちていった。


 露出した城の内部に、俺はバケットから飛び移った。


 そこには、氷の玉座に座る『絶対零度の王』が一人、震えていた。


 彼は怒っているのではない。……あまりの冷たさに、耐え続けていただけだった。


「……なぜ……。なぜ、温もりを求める……。……温まれば、いつかは冷める。……誰かと触れ合えば、その熱を失う恐怖に怯えることになる……。……それなら最初から、凍りついている方が……マシではないか……!」


 王の言葉に、俺はドリルのスイッチを切った。


 前任者のカタログが彼に与えたのは、暖房ではなく「冷たさに慣れるための孤独」だったのだ。


 彼は自分自身を「断熱」しすぎて、自分の熱さえも信じられなくなっていた。


『……バカ言え。……「冷める」のが怖いから温まらないなんて……そんなの、ホームセンターに来る客に言ってみろ。……「冬の風呂上がり」を舐めてんのか?』


 俺は、防寒具のポケットから一袋の商品を取り出し、王の足元に投げた。


『いいか、王様。……断熱ってのはな、「外を拒絶すること」じゃない。……「中の熱を、大事に循環させること」なんだよ』


 俺が投げたのは、【商品名:高純度・蓄熱セラミックレンガ】。


 そして、俺は腰の万能レンチで、城の制御核に直結した「冷却パイプ」のバルブを無理やり回した。


『……アウラ、このパイプに弱火でいい、「種火」を流し込め! ……レヴィン、この城の循環経路を「セントラルヒーティング」に書き換えろ!』


「……フフ、無茶苦茶なリフォームですね。……だが、嫌いではありません」


 レヴィンが魔導端末を操作し、冷却システムを逆転させる。


 アウラの優しい炎がパイプを通り、蓄熱レンガを熱していく。


 氷の城が、内側から淡いオレンジ色の光を放ち始めた。


「……あ……熱い……。……いや、これは……心地よい……?」


 王の氷の鎧が、ポロポロと剥がれ落ちていく。


 そこから現れたのは、凍えきった一人の、か弱き男の姿だった。


 城全体がゆっくりと「解け始めた」。


 しかし、それは崩壊ではない。氷が溶けて水となり、それがアウラの熱で蒸気となって、国中に「温かい霧」として降り注いだのだ。


「……仙太さん、見て。街の人たちが、カプセルから出てきてる」


ミアが、俺の隣でそっと手を握る。


 その手の温かさが、先ほどまでの極寒を嘘のように消し去っていく。


『……さて、王様。……リフォーム代金は高くつくぜ。……これからは、この国で「一番不便な薪ストーブ」を、国民全員分、お前が自分の手で作るんだ。……それが、お前の「心の断熱」を解くための作業だ』


 王は、まだ自分の手の温かさに戸惑っていたが、やがて小さく頷いた。


「……作ろう。……この温もりを、忘れないための……道具を」


 翌朝、フロストヘイムの空には、数万年ぶりの「朝日」が差し込んでいた。


 俺たちは、薪ストーブの設置に走り回る住民たちに、大量の【商品名:薪割り用・斧(初心者向け)】と【商品名:耐火レンガ】を売り払った。


『……ふぅ。……腰が痛ぇ。……人間に戻ると、これだから困る』


 エデン・エクスプレスのソファに沈み込む俺。


 そこへ、ルンボがまたあの「マッサージアーム」を差し出してきた。


「テンチョウ。……ツギ……ドコ……イク?」


 オリジン・ナビが、次の座標を示す。


 それは、砂漠の真ん中に浮かぶ「水が金より高い」と言われる乾いた国。


「……臨時店長。次の課題は『乾き』です。……前任者が、世界のすべての水分を『一箇所に独占』した結果、命の循環が止まったエリア。……そこには、あなたのカタログから削除されたはずの『禁じられた商品』が眠っています」


『……禁じられた商品、か。……面白そうじゃねぇか。……水がないなら、井戸を掘るまでだ。……俺たちの在庫には、最強の「穿孔機(ボーリングマシン)」があるんだからな!』


 俺は、ミアが淹れてくれた「適温」のコーヒーを飲み干した。


 不便。不自由。だからこそ、DIYは楽しい。


 俺たちのホームセンターは、今日もまた、世界のどこかをピカピカに直すために走り続ける。

お読みいただき、ありがとうございます!

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