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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第36話 魔改造・移動店舗! 大陸横断DIYツアー、出発進行!

「……あいたた、ミア、きつい。ちょっと包帯きついって!」


「もう、仙太さんがじっとしてないからでしょ! はい、腕を上げて。……ん、よいしょ」


 伝説の本店(オリジン)の一角。(せんた)は、ミアに甲斐甲斐しく包帯を巻き直してもらっていた。


 至近距離で見つめ合う形になり、彼女の吐息が首筋にかかる。TEN-CHO(アバター)だった頃には単なる「熱源感知」でしかなかったものが、今は心臓をバクつかせる「甘い刺激」として脳を揺さぶる。


(……人間に戻るって、こういう『毒』もセットなのかよ)


「……仙太さん、顔赤いよ? また熱があるのかな」


 ミアが心配そうに、俺の額に自分の額をそっと寄せてきた。


「ひゃ、ひゃあ!? 大丈夫、大丈夫だから! ただの、その……リハビリの熱気だ!」


 俺が慌てて飛び退くと、ミアは少しだけ寂しそうに微笑んだ。


「……ふふ。人間に戻った仙太さんは、前よりもずっと『弱くて』、ずっと『可愛い』ね」


「……可愛いって言うな」


 俺は照れ隠しに、未だ未完成の「巨大な影」へと視線を向けた。


 俺たちの前にあるのは、本店の地下ドックから掘り出した古代の遺物――「超重力・全地形対応搬(メガ・キャリア)送車」の残骸だ。数万年前、惑星開拓のために使われていたというその車両を、俺たちは「エデン流」にリフォームしていた。


「店長、見て! 古代の『魔導太陽光パネル』と、私が調整した『高出力魔導タービン』の同期、完了したわよ!」


 アウラが真っ黒に煤けた顔で、親指を立てる。


 彼女と俺が三日三晩不眠不休で考案した、移動店舗の仕様はまさに「動くホームセンター」そのものだった。


動力源:古代魔導ソーラー・ルーフ & 大容量蓄電バッテリー 屋根一面に敷き詰められたパネルが、無尽蔵の太陽光を魔力に変換。夜間や地下でも長時間の走行を可能にする。


店舗エリア:多次元格納式・自動陳列棚 本店の技術を応用し、本体の十倍以上の在庫を四次元的に格納。客が欲しいものをボタン一つでピッキングできる。


工房エリア:万能作業台 & 3D魔導プリンター 現場での「オーダーメイド修理」に対応。足りない部品はその場で出力し、即座にDIYを開始できる。


居住エリア:人間生活最適化ユニット 仙太の「人間としての生活」を最優先に設計。簡易システムキッチン、魔法温水付きのユニットバスを完備。


防衛・心臓部:ルンボ専用・操縦ユニット(コア・プラグ) ルンボ自身が車両の「脳」となり、自動走行。有事の際は車両そのものが巨大な盾となる。


「……ふふ、どうだ? このスペック。もはやこれは車じゃない、俺たちの城だ」


「抜かりはないぞ」


 レヴィンが、羊皮紙の束を掲げる。


「この車両を『移動式宗教施設兼・公共安全啓発車両』として帝国・聖教国の両国に登録した。……これであらゆる検問を『特例』でパスできる。……店長、貴殿の言う通り『法は使いよう』だな」


 俺たちは、古代のオーパーツに「エデン」のロゴをデカデカと貼り付けた。


 それはもはや、ただの車ではない。希望を運ぶ、黄色い弾丸だ。


「店長、お昼よ。はい、あーん」


 ミアが、スプーンに乗せた特製スープを差し出す。


 左腕を骨折している俺にとって、食事は今も「共同作業」だ。


『……ミア、自分で食べられるって。スプーンくらい右手で持てるし』


「だーめ。店長は今は『お客様』なんだから。……いいから、食べて?」


 抗えない。俺は大人しく、彼女が運んでくれるスープを口にした。


 味がする。温かい。そして、誰かが隣にいてくれる安心感。


 全能だった頃の俺は、何でも一人でできた。だが、今の俺は誰かの助けがないと満足に飯も食えない。


(……でも、悪くない。不自由だからこそ、誰かの優しさが心に染みるんだな)


 俺はミアの手を、空いている右手でそっと握った。


「……ありがとう、ミア。旅に出ても、ずっと隣にいてくれるか?」


 ミアは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに最高に幸せそうな笑顔で頷いた。


「……当たり前でしょ。私がいないと、仙太さん、またトイレで困るんだから」


「……それはもう忘れてくれ!」


 出発の前夜、オリジン・ナビが最後のブリーフィングを行った。


「……臨時店長。最初の目的地を指定します。北方の港町『アイアン・ポート』。そこはかつて、世界最大の造船所がありましたが、現在は『鉄のギルド』が遺した負の遺産……『自動分解ドローン』によって、街全体が錆に呑み込まれようとしています」


『錆び、か。ホームセンターの出番としては、これ以上ない舞台だな』


「……そして、そこにはあなたの『前任者』が最初に遺した、偽りのカタログの断片があります。それを回収し、正しい『エデン・スタンダード』に上書きしてください」


 俺は、新しく作った「店長専用・多機能ワークウェア(防刃・耐火・撥水加工)」に袖を通した。左腕のギプスが少し窮屈だが、それもまた「店長の勲章」だ。


 翌朝。本店の巨大なハッチが、重厚な音を立てて開いた。


 眩い朝日が、エデン・イエローに塗られた巨大な移動店舗を照らす。


 運転席には、車両の制御系と直結したルンボが鎮座している。


「テン……チョウ。……ボク……ハシル。……ミチ……ツクル!」


『よし、ルンボ! 出発だ! ……目標、アイアン・ポート!』


 エデン・エクスプレスが、魔導タービンの重低音を響かせて動き出した。


 断崖絶壁を、超重力タイヤが力強く噛み締め、荒野へと躍り出る。


「さあ、世界をリフォームしに行きましょう!」


 アウラが窓から身を乗り出して叫ぶ。


「法と秩序の正しさを、身をもって証明しよう」


 レヴィンが冷静に、しかし口角を上げて応える。


 俺は、助手席に座るミアの肩を抱き寄せた。


 俺の手には、かつて全能だったカタログの代わりに、仲間たちと一緒に書き込んだ「手書きの在庫管理表」が握られていた。


『……見てろよ、世界。最高の店長(人間)が、今からお前をピカピカに直してやるからな!』


 エデン・エクスプレスは、立ち上がる砂塵と共に、地平線の彼方へと加速していった。

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