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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第22話 目覚める巨兵、遺跡の守護者を「お掃除ロボット」に改造せよ!

「……揺れてる、なんてレベルじゃないよ、これ!」


 ミアが操舵桿にしがみつきながら悲鳴を上げた。


 浮遊島の深部、俺たちが「北島支店」として勝手にリフォームを始めた古代遺跡が、まるで巨大な生き物のように脈動を始めている。石造りの床が激しく上下し、(仙太)のメイン・プロセッサには、地下数千メートルから突き上げてくるような、強大な魔力波形が叩きつけられていた。


『落ち着け、ミア。アウラ、リリ、すぐにエデンの中央ホールへ避難しろ! この振動、ただの地震じゃない。遺跡の「システム」そのものが覚醒しようとしている』


 俺は家中のシャッターを閉め、防護障壁を最大出力に引き上げた。


 だが、その時だった。


 遺跡の中央広場の床が、幾何学的な紋様を描きながら左右に割れた。そこから姿を現したのは、鈍い銀色に輝く、全長五十メートルはあろうかという巨躯。


 それは、古の時代に空の秩序を守っていたとされる伝説の自律魔導兵器「ガーディアン・センチネル」だった。


 しかし、その姿はあまりにも無残だった。


 全身を太い(つた)に覆われ、関節部には千年の泥が詰まっている。右腕の魔導砲はひしゃげ、頭部のメイン・センサーはヒビが入り、チカチカと頼りなく赤い光を点滅させている。


「……あ、あの……。仙太さん、あの大きい人……なんだか、とっても苦しそうに見えるよ」


 避難してきたリリが、モニターに映る巨兵を見て、怯えるよりも先にそう呟いた。


 確かに、巨兵の動作はぎこちない。何かを攻撃しようとして腕を振り上げるたびに、内部の魔導回路がショートし、火花が散っている。それは「侵入者を排除する」という命令を実行しようとしながら、壊れた体がそれについていけない、悲鳴のような動きだった。


「隊長! あ、あんなものが動き出したら、浮遊島ごと私たちは消し飛んじゃうわよ! 逃げましょう、今すぐ!」


 アウラが叫ぶが、俺は巨兵の頭部から発せられている「音」を聞き逃さなかった。


 それは、通常の耳には聞こえない超短波の魔導信号――エラーコードの連打だ。


『……いや、逃げない。アウラ、よく見ろ。あの巨兵が発している信号、これは攻撃命令じゃない。……「清掃・維持管理システムの異常終了」だ』


「え……? せいそう……?」


 アウラがキョトンとした顔をする。俺は店長としての直感をフル回転させ、巨兵の構造をスキャンし続けた。


『そうだ。この遺跡はかつての「空の庭園」だった。そしてあの巨兵は、侵入者を殺すための兵器じゃない。庭を掃除し、石畳を磨き、環境を整えるための……言わば「超大型お掃除ロボット」だったんだよ。だが、長い年月で制御装置がバグを起こし、目の前の「動くもの」をすべて「ゴミ」だと認識して排除しようとしているんだ』


「ゴミ……? 私たちがゴミってこと!? 失礼しちゃうわね!」


 怒るアウラをなだめつつ、俺は次なるDIYプランを頭の中に展開した。


 もし、あの巨兵を本来の「お掃除ロボット」にリセットし、さらにわが家『エデン』の管理下に置くことができれば。この広大な遺跡は、完璧な防衛機能を備えた「難攻不落の秘密基地」へと生まれ変わる。


『作戦を変更する。あの巨兵を破壊するのではなく、「修理(メンテナンス)」する。アウラ、倉庫の奥にある「工業用接点復活剤」と「業務用高粘度グリス」、それから「万能レンチ・サイズ特大」を用意しろ! ミアはエデンのマニピュレーターを操作して、俺が指示する箇所に「洗浄液」を噴射してくれ!』


「了解! 店長の無茶振りには慣れたわよ!」


「わかった、やってみる!」


 こうして、前代未聞の「古代巨兵の大掃除」が始まった。


 まず、ミアがエデンの噴射装置を操り、巨兵の関節部に「強力界面活性剤」を混ぜた高圧洗浄水を叩き込んだ。


「キュイィィィィン!」という耳を突き刺すような金属音が響く。積年の汚れが黒い濁流となって流れ出し、巨兵の動きがわずかにスムーズになった。


「今よ、アウラさん!」


「任せなさい! 『接点復活魔法』注入!」


 アウラが家の外壁から身を乗り出し、長いノズルを使って巨兵の首元にある「メイン・アクセスポート」に、特製の接点復活剤をダイレクトに流し込む。


 一瞬、巨兵の動きがピタリと止まった。 赤いセンサーが激しく明滅し、青い光へと変わっていく。


『よし、OSの書き換えを開始する。……お前の主人はもういないが、新しい店長(マスター)ならここにいるぞ』


 俺はエデンの基幹システムを巨兵の回路にリンクさせた。


 膨大なデータが俺の中に流れ込んでくる。古代人の設計思想、空の庭園の維持ログ、そして、孤独に千年間「掃除」を続けようとしていた巨兵の記憶。


 俺はそれらすべてを「店員マニュアル」として再定義し、上書きしていった。


 数分後。


 激しい振動が収まり、静寂が遺跡を支配した。


 巨大な銀色の兵士は、ゆっくりとその場に(ひざまず)き、エデンに向かって頭を下げた。その手には、いつの間にか巨大な「(ほうき)」のような形状に変形した魔導兵器が握られている。


『……完了だ。彼は今日から、エデン北島支店の「主任清掃員」兼「警備責任者」だ。名前は……そうだな、「ルンボ」と呼ぶことにしよう』


「ルンボ……? なんだか強そうなような、可愛らしいような……」 ミアが不思議そうに首を傾げる。


 その時、ルンボがすっ、と動いた。


 彼は右手の「箒」を軽く振ると、遺跡に溜まっていた土砂を一瞬にして吸い込み、リリが作ったばかりの農園の隅に、肥料として綺麗に積み上げたのだ。


「わあ……! ルンボさん、とってもお掃除が上手だね!」


 リリが嬉しそうに駆け寄り、巨兵の足元を撫でる。ルンボは静かに、嬉しそうに(そう見えた)メイン・センサーをチカチカと明滅させた。


 だが、平穏は長くは続かなかった。


 エデンの広域レーダーに、複数の飛行反応が映し出される。


「店長……これ、さっきの『ガルガンチュア』じゃないわ。……もっと、ずっと禍々しい魔力。帝国の『特務殲滅部隊』よ!」


 アウラの声が強張る。


 モニターに映し出されたのは、カラスのような黒い翼を持った、不気味な小型飛行艇の群れだった。彼らは「掃除」されたばかりの美しい遺跡の上空に、どす黒い影を落としていく。


『……せっかく綺麗にしたばかりの庭を汚しに来たか』


 俺は、ルンボの制御権をアウラに一部譲渡した。


『ルンボ、初仕事だ。あの「空飛ぶゴミ」たちを……残さず処分してこい』


 巨兵ルンボが、静かに立ち上がる。


 その背中のバーニアから青白い炎が噴き出し、五十メートルの巨体が重力を無視して空へと舞い上がった。


 一方、接近する帝国軍の指揮官は、眼下に広がる光景に目を疑っていた。


「な……なんだ、あの巨大な守護兵は!? 古代の遺物が、なぜあんなボロ家と共闘しているのだ!?」


「全機、散開せよ! 砲撃開始――」


 帝国軍が命令を終える前に、ルンボの「箒」が空を薙いだ。


 それは物理的な攻撃ではない。超強力な「吸引魔法」による、強制的な空間排除。 帝国軍の飛行艇は、まるで掃除機に吸い込まれる塵のように、成すすべなくルンボの魔導回路の中へと吸い込まれ、一瞬で「圧縮梱包(リサイクル)」されて、遺跡の遥か彼方へと排出されていった。


「……すごすぎる。これ、もう私たちが戦う必要ないんじゃない?」 呆然とするアウラの横で、俺は冷静に計算を続けていた。


『いや、まだだ。ルンボの稼働には膨大な魔力が必要になる。……アウラ、リリ、次のDIYは「超巨大魔導バッテリー」の作成だ。素材は、さっきルンボがリサイクルしてくれた「帝国軍の装甲板」を使うぞ』


「ゴミも無駄にしない……。まさにホームセンターの(かがみ)ね!」


 ミアが笑い、俺たちは新たな拠点での、さらなるリフォームへと着手した。


 しかし、俺のセンサーは、浮遊島のさらに奥底……ルンボが眠っていた場所のさらに下に、もう一つの「巨大な扉」があることを検知していた。


 そこには、この世界の成り立ちを揺るがす、ある「設計図」が隠されている予感がした。

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