第21話 重力迷宮の浮遊島、古代遺跡の秘密基地化計画
一方その頃、後方に置き去りにされた帝国要塞『ガルガンチュア』のブリッジは、地獄絵図と化していた。
「……取れん! この窓にへばりついたベタベタが、魔法を使っても、ヘラで削っても一向に取れんのだ!」
帝国軍極北方面司令官、ヴァレリウス将軍は、接着剤とセメントが混ざり合った「謎の汚物」で真っ白になった艦橋の窓を叩き、顔を真っ赤にして叫んでいた。
高貴なマントにはリリのハーブパンの欠片がこびりつき、自慢の金髪は接着剤の飛沫でガチガチに固まっている。
「報告します! 砲塔の関節部に『速乾セメント』が詰まり、旋回不能! エンジン吸気口には『家庭用不織布フィルター』が吸い込まれ、出力が激減しています!」 「ええい、おのれ『空飛ぶ家』め……! 騎士の誇りも、空の作法も知らぬ下衆な技術……必ずや捕らえて、その『店長』とやらを公開処刑にしてくれるわ!」
ヴァレリウスの怒号が響く中、わが家『エデン』は、そんな追っ手のことなど露知らず、北の魔境へと足を踏み入れていた。
目の前に広がるのは、大小様々な岩塊が意思を持つかのように回遊する「北の浮遊島群」。
ここでは重力が一定ではなく、ある場所では体が浮き上がり、またある場所では鉛のように重くなる。
「店長、ダメよ! 磁場が狂いすぎて、自動姿勢制御が機能しないわ! このままじゃ岩に激突して、わが家が粉々になっちゃう!」
アウラが叫び、ミアが必死に舵を握るが、エデンは巨大な洗濯機の中に放り込まれたように揺れ動く。
『……慌てるな。重力が不安定なら、こちらで「支点」を作ればいい。アウラ、倉庫から「超強力マグネットフック」と「工事用ワイヤーロープ」を出せ!』
俺が指示したのは、戦闘ではなく、本格的な「架橋工事」だった。
DIYミッション:重力アンカーの設置
ワイヤー射出: 家の四方から、魔力で強化したワイヤーを周囲の「重力が安定している大きな岩」に打ち込む。
テンション調整: ワイヤーの張力を自動調整し、家を空間に「固定」する。
簡易モノレール: ワイヤーを伝って、重力の影響を受けずに移動できる「荷揚げ用ケーブル」を構築する。
「なるほど! 岩を支柱にして、家を吊り下げちゃうってことね!」
アウラが手際よく装置を組み上げ、エデンは荒れ狂う重力の海の中で、ピタリと静止した。
その先にあるのは、巨大な樹木に飲み込まれた「古代の石造遺跡」だ。
「わぁ……。ねえ、仙太さん。あそこなら、帝国も見つけられないし、リリの新しい畑も作れそうだよ!」
ミアの提案に、俺は即座に決断した。
『よし、あそこを「エデン・北島支店」兼「秘密基地」に改造するぞ。まずは、入り口に「センサー付き自動ドア」と「防犯用赤外線ライト」を設置だ!』
俺たちは遺跡の内部に潜入し、埃を払い、魔法のLEDランタンで明かりを灯した。
古代の知恵が眠る石壁に、ホームセンターの最新(?)資材が次々とネジ止めされていく。
「ふふん、この重力変換装置、少し弄れば『全自動・高速種まき機』に改造できるわね。リリ、手伝って!」 「わあ、すごいよアウラさん! 重力で種が自動的に土に潜っていくよ!」
二人の共同作業により、遺跡のホールは瞬く間に「空中の水耕栽培プラント」へと変貌していく。
しかし、俺たちが遺跡の最深部をスキャンしたとき、モニターにある「警告」が赤く点滅した。
『……待て。この遺跡、ただの建物じゃない。……地下に、巨大な「動力源」が眠っている。それも、帝国の要塞を片手で握りつぶせるほどの……』
その時、遺跡全体が脈打つような鼓動を始めた。
どうやら俺たちの「リフォーム」が、眠っていた古代の巨兵を刺激してしまったらしい。
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