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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第19話 空の騎士団と、雲の上の農園バトル

 高度2000メートル。


 わが家『エデン』の三階サンルームでは、リリが満面の笑みで「革命」を起こしていた。


「見て、仙太さん! メルカトルの商人さんからもらった『飛竜の化石』を砕いて、アウラさんの『雷結晶』で活性化させた水に混ぜたら……こんなに大きな『雲の実』がなったよ!」


 リリが指差したのは、空中に浮かぶ土を使わないプランターだ。そこには、雲のようにふわふわとした白い果実が、鈴なりに実っていた。


『……これはすごいな。リリ、成分はどうだ?』


「うん! 高い空の冷たい空気と、強いお日様の光をたっぷり吸い込んでるから、一口食べるだけで魔力が回復する『スカイ・ベリー』の完成だよ! これで、アウラさんの魔力切れも心配ないね」


 リリの「家庭菜園」は、もはや自給自足の域を超え、超高付加価値の「魔導農業」へと進化していた。彼女は、空飛ぶ家の気圧差を利用して、植物の成長速度を通常の三倍にまで高める「高気圧・急速育成法」を独学で編み出していたのだ。


 だが、その平和な時間は、鋭い警笛によって破られた。


「店長、レーダーに反応! 四方から急速に接近する飛行物体……この魔力波形は、メルカトルと提携している『聖教国騎士団』の空騎兵ペガサス・ナイトよ!」


 アウラの叫びと同時に、家の周囲を白い翼を持った騎士たちが包囲した。


 彼らは流線型の美しい銀の鎧に身を包み、手には魔力を帯びた長槍を携えている。


「前方に見える未確認飛行建造物に告ぐ! 我らは聖教国直属『白銀の翼』騎士団である! 当海域……いや、当空域の飛行許可証を提示せよ! さもなくば、不法侵入とみなし、即座に撃墜する!」


 拡声魔法による厳格な声。 リーダーと思われる女性騎士、アルテアが、愛馬ペガサスを駆りながら俺のメイン・ウィンドウを睨みつけていた。


『……許可証なら、これか?』


 俺は、窓の外側に、ガリウスからもらった「メルカトルの黄金バッジ」をアームで掲げた。


 アルテアの目が一瞬、驚きに揺れる。


「それはメルカトルの自由交易権……! しかし、そんなボロ家(失礼、奇妙な建物)に与えられるはずが……。……くっ、偽造の疑いがある! 一時停船し、内部検分を受け入れよ!」


(……やっぱり、そう来るよな)


 俺は心の中で苦笑した。


 この世界において、空を飛ぶのは「選ばれた貴族」か「高価な飛行船を持つ大商人」の特権だ。


「二階建てのホームセンターが飛んでいる」という事実は、彼らの秩序プライドを根底から揺るがすものなのだ。


『……いいだろう。だが、うちの土足厳禁のルールは守ってもらうぞ』


 俺はタラップを下ろし、アルテアを含む三名の騎士をエントランスに招き入れた。


 彼らは警戒心剥き出しで、剣の柄に手をかけたまま、内装をチェックし始める。


「……信じられん。外見はただの石造りと木造の合体だというのに、内部の魔力循環が宮廷魔導師の工房よりも精密だなんて……」 「隊長、あそこを見てください! あの棚にある『ネジ』という部品……見たこともない精度で削り出されています!」


 驚愕する部下たちを横目に、アルテアはリリのサンルームに足を踏み入れた。


「……何だ、この香りは。……それに、この果実は……」


 そこにあったのは、リリが用意した「最高のおもてなし」だった。


 採れたての『スカイ・ベリー』を添えた、焼きたてのハーブパンと、自家製ハチミツの紅茶。


「騎士様、お疲れ様です。空の上は冷えるから、まずはこれを食べて温まってください!」


 リリの屈託のない笑顔に、アルテアの硬い表情がわずかに緩む。


 彼女は毒見のつもりで、スカイ・ベリーを一口かじった。


「――っ!? こ、これは……!? 疲労が……蓄積していた魔力が、一瞬で身体の隅々まで行き渡る……! 聖都の高級薬院で出される『エリクサー』の出来損ないより、よほど純度が高いわ!」


『……それが、わが家の「プライベート・ブランド」だ。アルテア隊長、俺たちは戦争をしに空へ来たんじゃない。……最高に快適な暮らしを、空の上で作る。そのために必要な素材を、正当な取引で手に入れたいだけだ』


 俺がミアの声を借りて告げると、アルテアは静かに紅茶を飲み干し、背筋を正した。


「……非礼を詫びよう。この果実と、この建物の『整備精度』を見れば、あなた方が単なる賊ではないことは明白だ。……だが、忠告しておく。この先にある『北の浮遊島』は、帝国の残党や、空の怪物たちがうごめく無法地帯だ」


 アルテアは、腰のポーチから一通の書簡を取り出した。


「これは、我が騎士団の『推奨取引先』としての認可証だ。これがあれば、少なくとも聖教国の空域で撃たれることはない。……その代わり、今度また、その……この果実を、我が団の補給品として卸してくれないか?」


『……取引成立だ。毎月、一番いいやつを飛行魔導便(ドローン)で届けよう』


 こうして、俺たちは「武力」ではなく「DIYの技術」と「農業の成果」で、気難しい空の騎士たちを味方に付けたのだった。


 だが、アルテアが去り際、ポツリと漏らした言葉が気にかかる。


「……気をつけろ。帝国の『空中要塞』が、バベルの反応を追って、この北の空へ向かっているという噂がある」


『……空中要塞、か。……受けて立とう。ちょうど、外壁に「迎撃用バリスタ」を増設したいと思ってたところだ』


 俺のシステムが、次なる「要塞化リフォーム」のプランを高速で描き始めた。

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