表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/53

第13話 二階建て増築と、設計主任アウラのこだわり

「……信じられない。この膨大な資材の山を、たった一晩で『整理整頓』してしまったというの?」


 翌朝。わが家のリビング(旧・ボロ屋部分)に足を踏み入れたアウラ・マナは、昨日までの敵意をどこかへ置き忘れたような顔で、窓の外を凝視していた。


 昨夜、俺が解体・仕分けを完了した移動要塞バベルの残骸は、いまや「規格化された資材」として、家の周囲に整然と積み上げられている。


 厚さ50ミリのミスリル合金装甲は、防錆・防汚コーティングを施した「外壁パネル」へ。


 巨大な魔導水晶の破片は、エネルギー伝導効率を高めた「魔導バスバー(母線)」へ。


 そして、あの美しい大理石の尖塔は、一枚一枚丁寧にスライスされ、鏡面研磨された「フロアタイル」へと生まれ変わっていた。


『アウラ殿、おはよう。現場の朝は早いんだ。……さて、昨日言った通り、今日からわが家の「増築工事」に入る。お前には設計主任として、この図面のブラッシュアップを頼みたい』


 俺は、リビングの壁面に巨大な「3D設計ホログラム」を投影した。


 それは、現在のボロ屋部分をコアとして、その上にバベルの資材を贅沢に投入した「二階建てプラン」だ。


「……何よ、この無機質な箱は! 機能性は認めるけれど、黄金比が全く考慮されていないわ。窓の位置もバラバラ、屋根の勾配も急すぎてエレガントじゃない! 私が設計するなら、ここには螺旋階段を配置して、二階のテラスからは荒野を一望できる回廊を作るべきよ!」


 アウラが眼鏡を光らせ、俺のホログラムを指先で操作し始める。


 彼女の魔力が設計図に触れるたび、角張った「ホームセンター的実用建築」が、流麗なアーチを描く「王宮建築」へと上書きされていく。


(……なるほど。確かにそのアーチは荷重分散の面でも合理的だ。だが、階段を螺旋にするなら、資材の搬入動線が死ぬ。そこは『可動式のリフト』を仕込むべきだろう)


『アウラ、美学もいいが、メンテナンス性を忘れるな。外壁のアーチ部分に、清掃用のアームが届かない設計は二流だ。それと、二階にはリリのための「屋内植物園サンルーム」を併設する。バベルの魔導水晶を熱源にした、全自動温湿度管理システムだ』


「メンテナンス性? 清掃アーム? ……ふん、そんなの魔法で掃除すればいいじゃない。でも、そのサンルームの案は……悪くないわね。リリの能力を建物の魔力供給源エコシステムに組み込むという発想は、私にはなかったわ」


 俺とアウラ。


「現代DIY工学」と「宮廷建築魔法」。


 二つの異なる設計思想が、激しい火花を散らしながら、一つの建物の形へと収束していく。


 ミアとリリは、その「天才(?)たちの衝突」を、朝食のトーストを齧りながら楽しそうに眺めていた。


「仙太さんとアウラさん、なんだかんだで息がぴったりだね」


「そうね、リリちゃん。二人とも、お家を良くすることしか考えてないみたい」


 ミアが笑いながら言う。


 俺は彼女たちの期待に応えるべく、ついに「着工」を宣言した。


『設計完了。……施工開始!』


 その瞬間、わが家を支える土台から、凄まじい魔力の奔流が溢れ出した。


 バベルの心臓部から回収した「無限の魔導水晶」を、俺のコアに直結した効果だ。魔力不足による制約は、もうこの家には存在しない。


 ギギギギ……ッ!


 家そのものが「脱皮」するように、古い外壁が剥がれ落ち、中からバベルの資材で再構成された強靭なフレームがせり上がっていく。


 一階の天井が持ち上がり、その上に新しいフロアが形成される。


「すごい……! バベルの装甲が、まるで生き物みたいに形を変えて、二階の壁になっていく……!」


 リリが声を上げる。


 アウラが提案した流麗なアーチ状の窓枠には、俺がリサイクルした強化ガラスが吸い付くように嵌まり込む。


 そして仕上げに、俺はバベルの水晶エネルギーを家庭内全体に配電する「スマート魔導グリッド」を構築した。


(これで家中どこでも、呪文なしで魔導家電が使い放題だ。……よし、二階の増築、完了だ!)


 完成したのは、かつてのボロ屋の面影を「カモフラージュ」として一階の外装に一部残しつつ、その上部に白銀の装甲と大理石が輝く、異形の、しかし美しい「要塞住宅」だった。


 二階の「サンルーム」に足を踏み入れたリリは、その完璧な日当たりと、床暖房が完備された栽培スペースに感涙していた。


「……あったかい。ここなら、どんな珍しいお野菜でも育てられるわ!」


 一方、二階の「アウラ専用設計室」では、彼女が俺のDIYした「高さ調節機能付き製図デスク」の座り心地に、またしても屈服していた。


「……負けたわ。この椅子の『ランバーサポート』という概念……宮廷の玉座よりも快適だなんて……。これなら、三階の増築図面も一日で書き上げられそうだわ」


 そして、一階のリビングでは。


 地下のゼイル将校が、モニター越しに映る「要塞の残骸が豪華な内装に変わった姿」を見て、ついに考えるのをやめていた。


「……もう、どうでもいい。あのバベルの魔導水晶を『給湯器の予備電源』に使っている時点で、帝国の常識は死んだ。……仙太殿、次は、三階に私の『トレーニングルーム』を作ってくれないか? このウェア、動きやすいから鍛え甲斐があるんだ」


(……いいぜ、ゼイル。お前もだんだん「住人」らしくなってきたな)


 俺は、住人たちの満足度ステータスが向上したことを確認し、新たな家の中心部に据えた『バベル・コア』の出力を安定させた。


 だが、俺たちの平穏は、長くは続かない。


 帝国の象徴であった移動要塞バベルが「消滅(解体)」したというニュースは、瞬く間に大陸中を駆け巡る。


 次にやってくるのは、アウラのような一技術者ではない。


「国家」という名の巨大な暴力が、この「世界で最も快適な要塞」を奪い取りにくるはずだ。


『……受けて立つさ。次は、空でも飛べるように改造してやるからな』


 俺は、アウラが書き始めた「三階建て(および飛行ユニット)」の設計図に目を通しながら、次の「資材調達(防衛戦)」のための在庫確認を始めた。


 ボロ家から始まった俺のDIY建国記。


 その二階建ての窓からは、いま、未来という名の広大な地平線が見えていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ