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【全自動DIY】ホームセンター店員、意思を持つ「家」に転生する。〜釘一本から始める異世界建築、気づけば究極の魔導城になっていた〜  作者: ねこあし


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第10話 黄金の杖の「仕分け」と、深夜の小さな訪問者

 アウラが捨て台詞とともに撤退してから数時間。荒野には再び静寂が戻っていた。


 だが、俺の「中」では、戦利品の検品という、DIY愛好家にとって最も心躍る作業が始まっていた。


(さて、アウラ殿が置いていった『黄金の比率(杖)』……。じっくり見させてもらうぜ。現場に落ちている忘れ物は、届け出がなければ施工主の所有物だからな)


 俺は、玄関先に転がっていたその杖を魔力の触手で「家の中」へ引き込んだ。


 通常、魔法使いの杖は持ち主以外が触れると拒絶反応を起こすが、俺の【超絶DIY】はそれを「単なる素材」として認識する。


《解析開始:古代魔導金属「オリハルコン・メッキ」、芯材に「世界樹の枝」、焦点具に「空間転移の魔石」を確認》


(……おいおい、とんでもない掘り出し物だ。特にこの『空間転移の魔石』。これがあれば、わが家の「収納」や「廊下」の概念を物理法則から切り離せるぞ)


 俺は、キッチンの作業台を一時的に「精密解体ブース」に作り替えた。


 見えない魔力の精密ドライバーとニッパーが、杖をパーツごとに分解していく。オリハルコンの被膜を剥がし、純粋な魔導金属のインゴットへと精製し直す。


「仙太さん……それ、あのアウラって人の武器でしょ? そんなにバラバラにしちゃって大丈夫?」


 風呂上がり、俺が用意した「吸湿冷感ルームウェア」に身を包んだミアが、心配そうに解体作業を覗き込んできた。


『心配するな、ミア。道具は使われてこそ価値がある。これを素材にして、この家の「増築計画」を一段階上に引き上げるんだ。具体的には……「四次元ポケット」付きのパントリー(食品庫)を作る』


「よじげん……? よくわからないけど、仙太さんが楽しそうだからいいわ」


 ミアはクスクスと笑い、ソファでジュースを飲みながら、俺が壁に投影した「リフォーム予定図面」を眺め始めた。


 住人が管理人の作業を隣で眺めている。この「現場の空気感」が、俺にはたまらなく心地よかった。


だがその時、俺の「広域振動センサー」が、微かな、本当に微かな足音を捉えた。


(……ん? また来たか。だが、今度は一人。それに、殺気がない)


 足音の主は、先ほどアウラと一緒にいた従者の少女、リリだった。


 彼女は、俺から少し離れた岩陰で、立ち止まったり歩いたりを繰り返している。その長い獣耳が、不安げにピクピクと動いていた。


(アウラから逃げ出してきたのか? それとも……)


 俺はあえて玄関のライトを落とし、彼女が近づきやすいように配慮した。


 十分後。意を決したように、リリが俺の「外壁」のすぐそばまでやってきた。


 彼女は、アウラが「排気」で汚した壁の一部を、手持ちのボロ布で必死に拭き始めたのだ。


「……ごめんなさい。アウラ様があんなに汚しちゃって。このお家、あんなに綺麗で……温かい匂いがするのに……」


 消え入るような声。


 ミアが「魔力感知」でその声に気づき、ハッとして立ち上がった。


「仙太さん、あの子……さっきの子だよ! 壁を掃除してくれてる……!」


『ああ、分かっている。ミア、玄関を開けてやれ。……ただし、驚かせないようにな』


 ミアがゆっくりと玄関ドアを開ける。


「カチッ」という、俺が極限まで精度を高めたラッチの音に、リリが飛び上がって驚いた。


「ひゃあぁっ! ご、ごめんなさい! すぐ帰ります、壊すつもりじゃなくて……!」


「待って、リリちゃん! 怖くないよ。……これ、仙太さんからの『お礼』だって」


 ミアは、俺が瞬時に作り出した「特製はちみつクッキー」を差し出した。


 リサイクルした資材で作った銀のトレイに乗った、焼き立てのクッキー。小麦の香ばしさと、魔力精製した濃厚な甘みが、リリの鼻腔をくすぐる。


「……え? お礼……? 私は、ただ、申し訳なくて……」


 リリは戸惑いながらも、クッキーを一口かじった。


 その瞬間、彼女の大きな瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。


「……おいしい。こんなに甘いもの、生まれて初めて……。アウラ様はいつも『効率が悪い』って、味のしない保存食しかくれなかったから……」


 彼女は泣きながら、夢中でクッキーを食べた。


 リリは獣人族の中でも、植物の成長を促す「豊穣の加護」を持つ一族だった。だが帝国では、その能力を搾取され、ただの「歩く肥料」として扱われていたのだ。


 リリはクッキーを食べ終えると、俺の壁に深く頭を下げた。


「あの……お家さま。アウラ様は、プライドをズタズタにされて、今ごろ本気で怒っています。次は帝国の『移動要塞』を持ち出して、この場所ごと踏み潰すつもりです……。私、それが怖くて……」


『移動要塞だと? ほう、そいつはまた……デカい「建材」が向こうから歩いてくるようなもんだな』


 俺は掲示板に、あえて不敵な文字を踊らせた。


「仙太さん、不謹慎だよ! ……リリちゃん、もうアウラのところには戻らなくていいよ。ここにいなよ」


「……いいんですか? 私、畑仕事しかできないけど……。このお家の周りに、美味しい野菜、たくさん植えますから……!」


 こうして、わが家に二人目の住人――「農業主任」のリリが加わった。


(よし、人員は揃ってきた。次は、リリの能力を最大化するための『自動散水機能付きビニールハウス』のDIYだな。それと……アウラが連れてくるという『移動要塞』。そいつの設計図をハッキングして、逆にわが家の「増築パーツ」に取り込んでやる)


 俺は、リリのために新しい寝室の設計を開始した。


 彼女の獣耳が当たらないよう、少し高めの枕を低反発素材で作ってやるのが、今の俺の最優先任務(DIY)だった。


 一方、遠く帝国の拠点では。


 裸足で逃げ帰ったアウラ・マナが、泥に汚れた眼鏡を叩き割り、狂気を含んだ笑みを浮かべていた。


「……許さない。あのイレギュラーな『建築物』、私の黄金比で完全に解体してあげる。……移動要塞『バベル』の封印を解きなさい。更地にする必要はないわ。あの家を、私の『コレクション(標本)』にしてあげるのよ!」


 帝国の巨大な影が、ゆっくりと動き出そうとしていた。

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