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第23話:二人の弟

第23話:二人の弟

曹昂との交流が始まってしばらく経ったある日、彼は「もう一人、弟を紹介したい」と言って、劉星をある部屋へ連れていった。

そこにいたのは、まだ十歳にも満たない、しかし年の割に利発そうな顔立ちの少年だった。彼は、兄である曹昂には丁寧な礼をとりながらも、劉星に対しては、値踏みをするような、鋭い視線を向けてきた。

曹操の次男、曹丕そうひ、字は子桓しかんだった。

「こちらが、弟の劉星、字は飛翼だ。武勇に優れた男だ。仲良くしてやってくれ」

曹昂がにこやかに紹介する。

曹丕は、表情を変えないまま、劉星に一礼した。

「…曹丕です。お噂はかねがね」

その声は幼かったが、どこか冷たく、感情がこもっていなかった。その瞳の奥には、隠しきれない嫉妒と警戒心が渦巻いているのを、劉星は見逃さなかった。

(こいつ…俺を嫌っているな)

無理もないことかもしれなかった。父の寵愛を、兄の曹昂だけでなく、突如現れたこの異母兄にも奪われるのではないか。そんな子供らしい独占欲と不安が、彼をそうさせているのだろう。

「父上のご落胤が、随分と幅を利かせているようですね」

曹昂が席を外した隙に、曹丕は、子供らしからぬ、棘のある言葉を投げかけた。

劉星は、そんな彼を、子供相手にむきになることもできず、ただ苦笑するしかなかった。

そこへ、曹昂が戻ってきた。険悪な空気を察したのか、彼は慌てて二人の間に入った。

「こら、子桓。飛翼は、我らの大切な弟だぞ。無礼なことを言うものではない」

「申し訳ありません、兄上」

曹丕は、素直に頭を下げるが、その目には少しも反省の色はなかった。

この一件で、劉星は曹家の複雑な内部事情を垣間見た。心優しい長兄・曹昂と、野心と嫉妬心を隠さない次兄・曹丕。そして、得体の知れない自分。

(やれやれ、面倒なことになったな…)

劉星は、これから始まるであろう兄弟間の軋轢を予感し、深くため息をついた。

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